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ソフトウェア開発
現在のソフトウェア開発は、開発チーム内やプロジェクト内、組織内の状況が異なるため、1つの方式(方法論)ではうまくいかない。
そこで、ゴールドラット博士の「制約条件の理論」にある、プル型システム(後工程引き取り方式)から、カンバン方式による対応を検討した。
ソフトウェアの開発プロセスのトレンドは、以下の通りである。 |
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ウォーターフォール(WF)
欧米ではほとんど使われていない
日本国内では、WFでカンバンを使用している事例もある |
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スパイラル |
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イテレーティブ
1990年代より使用された、UMLによる繰り返し方式
オブジェクト指向を基にし、WFを小さくして3ヶ月程度で繰り返される |
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アジャイル
現在は、欧米の8割程度の開発プロセスで利用されている
2週間程度で、繰り返される |
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リーン |
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カンバン
新しいソフトウェア開発手法として世界で注目されつつある
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カンバン手法について
皇居東御苑訪問を行った際、トヨタの「かんばん」が工業生産のためだけのものではないことに気付かされた。
入園票で制御することによって、苑内にいる入場者の数を制限して、観光(処理)をできるようにしている。この仕組みによって、庭園を良い状態に保ち、多くの人が踏み込んだり、混雑しすぎたりすることで起きるダメージを防ぐことができるのである。
ソフトウェア開発のカンバンでは、カードウォールを使用した。
ホワイトボードの上に工程名を記述し、その下に付箋を貼り、作業が終了すると付箋を横にずらしていくことにより、以下の効果を得ることができる。 |
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ワークフローの見える化 |
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仕掛り(WIP)の制限 |
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フローの測定と管理 |
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プロセスポリシーの明示化 |
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改善機会を認識するためのモデルの使用
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カンバンの手順は、以下の通りである。 |
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品質に集中する |
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仕掛りを減らす |
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フデリバリーをひんぱんに行う |
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要望とスループットのバランスを取る |
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優先順位を付ける |
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予測可能性を向上させるために、ばらつきの原因を解消する
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仕掛りの量が減ると、平均リードタイムが短くなり、ひんぱんなデリバリーが可能になる。
M社の例では、初期のワークフローのリードタイムは155日間であった。概算値見積り作業とPTC(割り込み作業)が邪魔をしていたためである。
そこで、カンバンによる仕掛り制限とキュー(入力を受け付けてから処理を行うまでの待ち行列)のあるワークフローに変更した。そして、更なる改善としてテストチームを3人から2人に減らし、開発者を1人追加した。
カンバンによる仕掛りの制限値とリソースをコントロールすることにより、リソースを平準化することができ、リードタイムは25日間に短縮された。
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注 ) |
実際のカンバン手法とマネジメントレポートにつきましては、講演資料にて写真や図を使用して詳しく説明されています。講師のご了解を頂き、PMAJライブラリに資料をアップ致しましたので、詳細はこちらをご参照願います。
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カンバンによる改善
カンバンには、3種類の改善機会がある。 |
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ボトルネック |
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ムダ削減 |
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ばらつき軽減
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そして、改善のためのステップは以下の通りである。 |
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ステップ 1 : 制約を識別する |
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ステップ 2 : 制約の活用方法を決定する |
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ステップ 3 : その他のことはすべて、ステップ2での決定に従属させる |
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ステップ 4 : 制約を補強する |
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ステップ 5 : 惰性を避け、次の制約を識別して、ステップ2に戻る
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