例会部会
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『第192回例会』 報告

PMAJ 例会部会 岡崎 博之 [プロフィール] :1月号

【データ】
開催日: 2014年11月28日(金) 19:00~20:30
テーマ: プロジェクトマネジメントの新潮流
 -PMI®2014北米大会にみるPM最新動向 -
講師:  
佐藤 義男 氏/株式会社ピーエム・アラインメント 代表取締役社長、
小原 由紀夫 氏/(株)富士通アドバンストエンジニアリング、
中谷 英雄 氏/(株)ピーエム・アラインメント 取締役

はじめに
今回の例会はPMI®2014北米大会に参加された中谷様、佐藤様、小原様 3名の講師によりPM最新動向について発表いただきました。

PMI®2014北米大会概要
大会は10月25日(土)から10月28日(火)の4日間にわたり、アリゾナ州フェニックスのコンベンションセンターで開催されました。メインとなるホテルで火災(ぼや)があったため、800名近くの参加者が会場と離れたリゾートホテルに宿泊するという出来事がありました。

本大会での5つの特徴
(1) ビジネス分析と要求マネジメントの強化:PMI®は要求マネジメントがプロジェクト成功に欠かせない、と強調。新資格(PMI-PBA:Professional in Business Analysis)SMの新設
(2) 変更マネジメントの強化:企業が変化に取り組み、舵取りをするスキルが求められている。組織的プロジェクトマネジメント(OPM)アプローチが必要。
(3) エンタープライズアジャイルに対応するマネジャーの役割:大規模アジャイル開発では、プロジェクト/プログラム/ポートフォリオ・マネジャーの役割が求められている。
(4) 次世代プロジェクトマネジメント対応:プロジェクト・マネジャーが要求される領域が、左脳から右脳へのシフト。
(5) 参加者交流(ネットワーキング)の積極的働きかけ:参加者が積極的にネットワーキングできるよう、多様な場の提供。

基調講演
基調講演は、プロバスケットのチャンピオンでありビジネスでも成功しているマジック・ジョンソン氏がビジネスで成功するための英知(チーム)について組織に焦点をあてて話をされた。またタマラ・クラインバーグ氏が自分の生活と仕事に、新しい創造力をもたらす方法について個人に焦点をあてて話をされました。

分野別発表論文解説
論文数は164で、3つのスキルセット(PM技術、リーダーシップ、戦略/ビジネスマネジメント)、18分野で構成されています。
初日は組織、2日目は個人、3日目はブレークスルー(実践適用)にフォーカスしています。

分野:ベネフィット実現 (BRL)
ベネフィット実現のプロセス、原則、方法論に関する発表。

講演タイトル:Delivering Business Value:The Most Important Aspect of Project Management
講演概要:顧客プロジェクトの最終的ビジネス価値の必要性を解説しています。ここでビジネス価値とは、顧客企業が持つ値打ち、顧客プロジェクトによって実現される純便益(金銭以外を含む)を指す。
PMの目的は「顧客の価値提供」であり、ビジネス価値は (1) ビジョンの理解 (2) ビジネス価値の明確化 (3) ビジョン・ビジネス価値をチームに浸透する (4) チーム環境の育成 (5) ビジネス環境の実現を図ることの5つのステップで提供される。

分野:ビジネス分析と要求マネジメント (BAR)
分析、文書化のツールと技術、プロジェクト優先度付けとマネジメントに関する発表。

講演タイトル:Value Management for Business Analysis and Requirement Fulfillment
講演概要:ビジネス分析方法と競争優位性の最大原因としての価値マネジメントを解説しています。PMI®サーベイは、プロジェクト失敗の主要原因は貧弱な要求マネジメントであることを示している。
ビジネス分析(BA)がBABOKの世界で戦略実行を支援するのに対し、価値マネジメント(VM)では期待するニーズ・価値・利益の合意という戦略策定から開始される。

分野:プロジェクト/プログラム/ポートフォリオマネジメント事例 (CAS)
成功事例に関する発表。

講演タイトル:Learn and Fast:Using A3 to Save your Program
講演概要:リーン方式の考え方(トヨタ生産方式に源流をもつ、ムダを省く顧客価値の流れ作り)のうち、A3サイズ紙で簡潔に表現するものを、プロジェクトマネジメントに活用する。A3はパフォーマンス改善、問題解決、戦略展開、プロジェクト憲章などに有効。A3はストーリーをしっかりつくることが重要で、3つの要素が必要とされる。(1) 問題解決と計画を促進するA3フォーマットのストーリー、(2) ゴール・戦略を合意するためのA3ストーリーのキャッチボール、(3) A3を段階的に練り上げる Plan, Do, Check, Adjust(PDCA)サイクルの適用。

講演タイトル:Applying Domain Authority - How to Uncover Hidden Risks in Large Programs
講演概要:PMI®の年間調査レポートによれば、プロジェクト・プログラムの半分はゴール(目標)に到達できなかった。これは伝統的なPMOが時間と予算を重視し、プロジェクト・プログラムがもたらす便益を重視していないことに関係しているものと考える。現在の先進企業は、より高い価値・便益の視点からプロジェクト・プログラムを見るようになっている。
より高い価値・便益を実現するためにRMO(Results Management Office)という手法がある。戦略的な実施の結果に注目して目的を成功に導くためのフレームワークを作ろうとするものである。このコンセプトは、大規模プログラムに潜む隠れたリスク発見に有効である。

分野:リーダーシップ・スキル (LDR)
プロジェクト/プログラム/ポートフォリオ・マネジャーの役割を支援するリーダーシップ・スキルの発表。
講演タイトル:Super Project Teams: How Using Respect Can Lead Explosive Performance
講演概要:優秀なプロジェクト・チームを構築するかについての助言。スーパー・プロジェクト・チームには、尊敬と生き残りの関係、尊敬と強力なリーダーの関係がある。スーパー・プロジェクト・チームを診断する項目は、認識、励まし、フィードバック支持、協力者、期待、配慮、信頼という尊敬の7項目がある。

講演タイトル:The Human Factor in Project Management
講演概要:マネジャーは人の感情や欲求を理解する必要があるのではないか。3つのポイントを考察。(1) あなたとプロジェクト・チームとの持続可能な関係性を築く方法。(2) 多様な状況下で人と働く中で、信頼と明快さを獲得すること。(3) チームを成功に導く戦略とは
プロジェクトが失敗する要因として、人の心理的欲求に注目した。人が必要とする欲求に適切に応えることがチームを成功に導く。

分野:プロジェクト/プログラムの複雑性 (CPX)
プロジェクト&プログラムにおける複雑性のマネジメント、複雑性マネジメント支援の方法論などの発表。
講演タイトル:Complexity and Change: Two Bird of a Feather(類は友を呼ぶ)
講演概要:組織は変革が求められている。変革の中に複雑性と騒乱がある。ここでの複雑性は・人の振る舞い・システムの振る舞い・曖昧さで定義される。曖昧さと不確実性が組織的PM(OPM)の重要なポイントである。決まった仕組みの構築ではなく変革マネジメントのフレームワークを作ること、プロセスベースでなくゴールベースでのアプローチが有効である。

分野:組織的アジリティの向上 (AGL)
組織的アジリティを高めるツール、技術、事例についての発表。
講演タイトル:Allegro Group Agility and Agile Data Center Project
概要:Allegroはeコマースのプラットフォームを提供している国際企業である。2011年6月にアジャイルビジネス導入を決定した。失敗を糧にして、変革推進チーム(PMO)がアジャイル導入戦略を打ち出し、会社のあらゆるレベルの人にアジャイル教育を行い、変革の重要性を認識させた。最初はいわゆるJカーブ効果により成果が出なかったが、次第に成果が上がり成功へと至った。成功要因は熟練と、文化と人々の変革にある。

分野:戦略実行 (SIM)
選択された戦略をゴールと目的達成のために組織に実装するためのアプローチに関する発表。
講演タイトル:Innovation, Portfolio Management, and Agility as a Happy Family
講演概要:プログラム/プロジェクト適用の解決法を、幸福な家庭に例えて、解説した。
現在のダイナミックな市場環境下において、『厳密な管理』と『過去事例』をプログラムとプロジェクトに適用することは、組織による価値の最大化の妨げとなっている。解決にはポートフォリオ・イノベーション・機敏性さが有効である。家族の役割に置き換えることで、これが意味することが分かり易くなる。
娘は、機敏性。明るい家庭で絶えず定着性、安定性、シンプル、進捗をモニターして、健全な環境を作る。母親は、イノベーション。物事を効果的に完了させる。最大限の利益を達成するために、すべてを結びつけるための最も良い解決策を選択し実行する。父親は、ポートフォリオ。ガバナンス本体の役割を担い、家族を通して戦略の目的を達成する。

分野:今後の動向 (TLD)
プロジェクト&ポートフォリオマネジメントの新潮流、および今後の動向についての発表。
講演タイトル:The Expectations Manager: The Future of Project Management
講演概要:付加価値作業に動かされる、左脳から右脳への新しい変化の取り組みを紹介。プロジェクトと人々を主導し、マネジメントする新方法として右脳領域が関与するコミュニケーション重視、チーム規範、ステークホルダー・ニーズ理解などがある。

感想
PMI®の姿勢が「つくるべきものが明確に決定された後の活動をマネジメントするという伝統的なPM」から「実現したい価値の議論から参画する」姿勢に踏み出したと感じました。
このことは、関与すべき対象範囲が拡大し、その中にある複雑さ・曖昧さ・絶え間ない変化への対応が求められることになります。そのため、人の感情や欲求を理解することが求められるのだと思います。左脳から右脳への変化という発表は「創造する人、他人と共感できる人が主役となる」という、これまでとは何かが違う変化があることを感じさせてくれました。
中谷様、佐藤様、小原様、PM最新動向について興味深いご講演いただき大変ありがとうございました。

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