PMRクラブ
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私とP2M

(株)竹中土木 執行役員 (海外営業担当) 坂井 剛太郎 [プロフィール] :12月号

1. P2Mとの出会い
 入社5年目に海外赴任し、タイ・アメリカでの計7年の駐在を終えて帰国。ホテルをキーテナントとした大型複合施設新築工事に従事する中、グローバル化のリバウンドとでも言うべき状況に直面して、「このままこの会社でやっていけるのか」と悩むこと数年、自己研鑽で状況打開を図ることにした。
 まず取り組んだのが「財務」。民間資格取得に向けての勉強は、MBAそのもので、財務を軸とした経営的な視点を手に入れた。更に「リスクマネジメント」分野を一気に深掘りしていく中でP2Mに出会い、2004年PMS取得。関西を中心に例会・研究会活動に参画し、2014年にPMRを取得した。

2. P2Mの実践
 直接のきっかけは、国内外を通して請負(工事)形態でのプロジェクトしか経験のなかった私が、2002年に海外プロジェクトでの現地建設会社への技術指導(フィービジネス)の担当となったことである。前例の無いマネジメントの実践と、その期中での現地法人代表兼任という、複雑性と多様性の中で出会ったのがP2Mであった。帰国後独学でPMSを取得し、その後は国内での業務改革プロジェクト、中国現地法人基盤構築プロジェクト、アメリカ現地法人基盤強化プロジェクト等を経て、グループ内傍系会社の経営基盤再構築プロジェクト等に携わるようになり、その夫々の局面でP2Mを実践してきた。

3. 私の考えるP2Mの課題
 私があらゆる業務上でP2Mを活用してきたのは確かであるが、私自身、他の人にその有効性を説明することは大変難しいと感じている。その原因を考えるに、同じものが二つと存在しないといわれる「プロジェクト」と、担当者の個性・能力・経験等による千差万別の「マネジメント」の組合せの中で、P2Mの位置付けが分かりにくいのではないかと考える。PMI®がPMBOK®という要素チェックリスト的なコンテンツを軸にビジネスライクに展開するのではなく、PMAJは業種・分野毎、レベル毎に広範囲をカバーしようとしすぎるあまり、「P2M」の姿が不明瞭になり、つかみどころのない状態になっているのではないだろうか。何にでも活用できるものであるが、そこに「P2M」の存在する必要性が認識されにくい状態に陥ってしまっていることが根本的な問題点であり、例えば統計・解析手法やQC手法など、世間一般に先行して認知されている関連手法・体系との関係性や、業種・分野を渡っての共通部分と固有部分を明確に分類して体系付けるなどして、P2Mの位置付けとその重要性、活用・応用方法を説明できるようにすることが課題であると考える。

4. P2Mの将来像とPMAJへの期待
 私がPMAJの活動を通して得ることができたものを考えてみると、人との出会いであり、多くの事例を見聞できたことであると思う。言い換えれば、壁にぶつかったり迷いが生じたりしたときに、相談できる人が増え、思い起こして応用していくことのできる知識を増やせたことである。一方、P2Mとのつき合いを思い起こすと、プロジェクトマネジメント面での修得・能力向上を経て、プログラムマネジメント分野に比較的自然に踏み込んでいった。業務を分割しながらプロジェクトとして実践してきたことが、役割が変わることによりプログラミングを認識することにつながったのかもしれない。一旦、プログラムマネジメントを操ることができるようになれば、未経験・未知の分野であってもマネジメントできる可能性は高く、応用範囲は広がりを見せることになるであろう。
 P2Mの修得を通して個人の能力を高めることも大切ではあるが、PMAJという団体の付加価値を高めることも必要であると思う。例えば、マネジメントにおける「知の伝承」を支援するというのはいかがであろうか。今後第一線から勇退される方々が増えていくことは間違いなく、その知識・経験・知恵を活用しない手はない。名誉フェロー認定制度などで、後進会員の指導・相談に携わっていただくことで、会員メリットを創出することができるのではないだろうか。ぜひ検討していただきたい。

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