東京P2M研究部会
先号   次号

送り手と受け手の関係性の重要性

東京P2M研究会 デリア食品株式会社 藤澤 正則: 11月号

1.はじめに
 2014年度のPMシンポジウムでは、1日目の「変化を恐れず、変化を楽しむ、人生の1/6を楽しむ、課題はプロジェクト化で解決する」、2日目の「総論賛成各論反対を制するP2M。グローバルな事業改革PJの成功要因」の2つの講座に関わった。特に、異業種メンバー(PMRクラブ)での取り組みとなった1日目の講座は、約5か月間に10回のMTGを行い、場の構築を進め、「何を伝えるのか」から、「内容や構成、テスト」「実行」のプロセスに展開した。 限られた時間の中で、何を伝えるかが非常に難しいことであると感じるとともに、今後も役に立つ事項として、送り手と受け手の関係性を考えてみた。

2.送り手と受け手の関係性
 送り手と受け手の関係性は、送り手が、なにか価値となる有形または無形のものを受け手に提供することが基本となり、受け手の評価結果によって、継続する関係性になる。通常の機能型組織の定常業務では、組織として場の構築ができているので、個々人のポジション(役割や範囲)、つまり関わる人は、その関係性を理解しており、継続した業務や組織内では「受け入れる」と「受け入れられる」の関係性で成り立っている場合が多い。しかし、受講者と講師、異業種のメンバー間では、その関係性が成り立っていないので、場の構築を行うには、送り手と受け手の関係性を意識し、それをシナリオに展開することが重要となる。今回の事例の場合、大きく分けて、2つの関係性があった。一つは、講師と受講者の関係性であり、送り手である講師は、限られて時間の中で、受け手である受講者に役に立つ情報を伝えることであり、もう一つは講師間の関係性であり、異業種のメンバーの間での送り手と受け手としての相互理解の向上があり、これが機能した結果、前述の関係性にもつながっていくと考えられた。
 そこで、弊社グループでの教育訓練時に活用している送り手と受け手の考える時のフレーム(①お客様の重要ポイント、②商品やサービスを提供する側の重要なポイント、③関連性にある事項をつないでみる)をベースに今回の事例を適用してみた。

図1 送り手と受け手の関係性を考える時のフレーム事例 (出典:2013年度東京P2M研究会報告書)
 図1 送り手と受け手の関係性を考える時のフレーム事例
 (出典:2013年度東京P2M研究会報告書)

このフレームを進め方のポイントは、下記の通りであり、今回での実施事項を記載した。

最初に考えることは、受け手の立場から考えること
送り手の立場から考えると、自分達の当たり前が正しいとみてしまい、実際に進めてから、違いが見えてきて、結果として、うまくいかない。
→今回の場合は、まず、受講者から考える。P2Mがわかっているから入るのでなく、
 全体概要の説明も必要であり、また、各自が持ち帰って、役に立つものを提供する。

話し合いを進める時には、言葉の定義をおこなうこと
立場や役割が異なっていると、同じ言葉でも、内容が異なっている場合が多いので、進める前に、言葉の定義を行う。
→メンバー間でP2Mに関する内容を理解していても、実際に使用している内容は異なるため、
 すり合わせを行い、わかりやすくする。

最初から話し合いを行う形でなく、各自が考えることから入ること
各自が考え、その内容を話すことを行い、個別の内容を相互理解し、共通事項を中心に話し合いを進める。その後、絞り込みを行い、まとめていく(合意形成)。
→テーマを提供する担当者が、自ら考え行動した内容をメンバーに話し、質問することにより、
 理解度を向上させ、行った内容をまとめ、フィードバックする。
 講座では、参加者も巻き込む形で展開する。

3.まとめ
 今回の事例では、限られた時間に中で、受講者に対して、どう伝え、役に立つ情報にすることが重要な課題であり、それを実現していくには、講師間での相互理解の向上と、講師と受講者との関係性を理解が必要であった。
 この課題を解決するために、送り手と受け手の関係性を意識し、入り口では、受け手の立場で考え、何を伝えれば、役に立つのかを話し合い、メンバー間では「みんな違ってみんな良い」から入り、「受け入れる、受け入れてもらう」でなく、「向き合い、認め合い、感謝する」を繰り返して、場の構築を行い、シナリオに展開し、実行した。
 実際のプロジェクトでは、送り手と受け手の関係が相互で成り立つようにする工夫や1対1でなく、1対多や多対多のような複雑系となるが、入り口では、送り手と受け手の関係性を簡素化してみて考えると、価値創出の原点がわかるので、次の具体的な動きにつなげることが可能になると考えられる。

以上

ページトップに戻る