東京P2M研究部会
先号   次号

三本の矢
- Three arrows -

イーストタスク株式会社 渡部 寿春 [プロフィール] :9月号

 2012年のPMシンポジウムから始めたP2Mの応用をテーマとした参加型セミナー「総論賛成各論反対」を制すP2Mの技は、今年で3回目となる。P2Mのプログラムマネジメントが簡単に理解出来ることを狙いとして来た。このセミナーの検討を始めた頃は、プログラムと言う言葉や概念がまだ普及していないことを前提にしていた。しかし、筆者の関わる業務では日常的にプログラムと言う単語や概念が使われている。日常使うプログラムとP2Mで語るプログラムでは何が違うかを考えなら取り組んだ。この点を以下にまとめる。

総論賛成各論反対の発想
プロジェクトでは、合意形成が節目々で必要となる。前例のある既にパターンが確立した活動であればそれほどの面倒はない。問題は、前例のないことに挑む場合である。複雑で多数の関係者の協力が必要となる場合は、方向付けや認識の共有が重要だ。総論賛成各論反対は、総論には賛成していることを前提にしている。利害対立があれば、総論にも賛成できない。合意形成にはトップダウンもあれば、ボトムアップもある。ここで注目したのはソフトシステムアプローチだった。意見を構造化し折合いにより総意を形成する方法である。妥協と違う点は、誠意により各参加者がしっかりと自分の考えを発言した上で合意を図る点だ。理解せず面倒だからOKしたとか、嫌いだから反対すると言った良くあるコミュニケーションギャップが解消される。又、意見を求めてもアイディアが出ないため特定の人が孤軍奮闘し声の大きい人と反感を買うこともある。この点に注目し合意形成からアイディアを創出することを主題とした。

2012年 情報をつないで価値を生むビジネスモデルの創出
  ミッションプロファイリングとは何か。起業する場合は、会社の経営理念を作る作業が該当する。新製品を作る時は製品コンセプトとなる。イベントでは案内文などだ。これらは思いつきで作ることもあるが、プロセスとして行う方法を示したのがプロファイリングだ。思いと現状認識から目指す姿を定める。これをホテルの業務改革事例で具体的に表した。そしてIT戦略の「モノとコト」のつながりについて触れた。

2013年 成長を続けるためのシナリオ作り
  短期では解決出来ないが長期では解決可能となる課題がある。短期(2年以内)、中期(3年~5年)、長期(6年以上)とした場合、水道事業などの公共インフラ事業は長期的な対応が必要な課題である。地方自治体で運営される事業は、住民の生活を考慮した長期的なシナリオが必要となる。多くの自治体は水道事業の老朽化に直面している。安全・安心などの総論に対しては同意が得られるが、具体的な実現方法を選択する際には価値基準の選択が必要となる。価値基準の違いは折合いで合意出来ないことを説明し、4つの価値基準を表し、選択した上でシナリオを描く方法を示した。

2014年 グローバルな事業改革プロジェクトの成功要因
  今日、海外の事情と全く無関係で営むことの出来る事業は少ない。日常生活でも職場、買い物、集合住宅で外国籍の方と接する。しかし、多くの日本企業が言語の問題を含め他国とは違った課題を持つ。既に不可避となったグローバル化の中で新たな対応が迫られる。今回は、中期計画をテーマに戦略マネジメントとポートフォリオを具体的な事例で表す。定量と定性の評価方法を成功要因として説明する。

 上記、3本の矢を通じてプログラムマネジメントの解り難い点は全て網羅出来たと思う。ミッションプロファイリング、シナリオ、システムズマネジメント、戦略マネジメント、場のマネジメント、3つのプロジェクトモデル(スキーム、システム、サービス)、ゼロベース発想、Value Engineering、等だ。ガイドブックを読んで分ったような気になっていたことも具体的な事例を描こうとすると意図していなかったことが見えて来る。開発活動と同じく、企画・設計段階から開発し運用に至る段階では当初予想しなかったことが起る。仲間と協働することで自分の不足部分が補われた。プログラムに関心のある方は参考にして頂きたい。PMシンポジウム2014では3本目の矢が放たれる。

以上

ページトップに戻る