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成果物はフリーで公開され、利用は自由である。ただし、著作権は全てGAPPSが保持している。さらに、PM標準のLinuxモデルであると述べている。
この表現は筆者にとって実に感慨深いものがある。
余談となるが、筆者はLinuxが普及する随分前に、カーネルのソースコードを読み、勉強したことがあった。その時に、Linuxのソースコードの中に日本人が寄贈したものがあることを文字どおり目の当りにし、日本が世界に寄与していることが強く印象に残っている。筆者には、この時の記憶がGAPPSに重なった。Linuxがその後またたく間に世界的に普及したことはご存知のとおりである。GAPPSは、現時点では残念ながら日本ではさほど名前が知られていないが、今後、その意義とともに普及展開していくことも大いに期待される。 |
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プロジェクト、プログラムの複雑度を定義し、それぞれに求められるレベルを定義している。
プロジェクトの複雑度と役割は“CIFTER Table”と呼ばれる表に定義されている。“CIFTER”とは、 “Crawford-Ishikura Factor Table for Evaluating Roles”の略であり、その定義に大きく貢献されたCrawford女史と石倉氏の頭文字をとって命名されている。石倉氏はPMAJの前身であるJPMF時代からの活動を通じ、GAPPSをはじめとする国際PM界にも大きく貢献されてきた。なお同氏はGAPPS PgM標準でも貢献者の一人として名を連ねている。このことは、もちろん石倉氏のご尽力によるものであることには間違いないが、日本発の世界貢献の大きな足跡でもある。誰もが石倉氏の偉業に肩を並べることは簡単には出来ないが、日本に求められるものはまさにこういった国際貢献ではないだろうか。
(なお、PgM標準における複雑さのモデリングは、同様に貢献者の頭文字をとって、ACDC: Aitken-Carnegie-Duncan Complexity Table for Program Manager Role Definitionと呼ばれている。) |
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WS形式で議論・レビューされ、ボードメンバによって承認後、公開される。
今回は第31回のWSであるが、第1回は2003年2月のフランスのリールでの開催であり、これまで連綿と世界各国でWSの活動が続けられてきた。各国で問題意識のある参加メンバから議題が提起され、Workstreamと呼ばれる分科会にて集中討議される。この営みが繰り返される。 |
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「マッピング」と称されるベンチマーキング結果が公開されている。
GAPPS標準を軸として、主要なPM標準、PgM標準との間での適合度を、各要素ごとに3段階で評価している。これにより、GAPPSを核として、世界的なプロジェクトの遂行にふさわしいプロジェクトマネジャー選定の基礎的な基準となる。 |
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パフォーマンスベースのコンピテンシーに基づいたモデルを採用している。
例えばPMIのPMBOK Guideはその名のとおり知識体系である。プロジェクトマネジャーが知っておくべき知識を体系化したものである。このことは(PMI自身も主張しているが)、プロジェクトの成功を約束・保証するものではない。イギリス商務省(OGC)が策定したPRINCE2は、プロセス(ステージ)コントロールを軸としたPM手法の一つである。(最近、PRINCE2などの一連の成果はAXELOSに移管された。) また、IPMAが定めているICB(IPMA Competence Baseline)第3版は、GAPPSと同じくコンピテンシーに基づいたモデルであり、3つのコンピテンシー(技術、行動、状況)から成り立っている。これらはGAPPSから見るとinput competenceとされ、一方、GAPPSはoutput competence、すなわちパフォーマンスで評価する。プロジェクトにおいて何をなし得たのか、そのエビデンスは何か、ということが問われる。
これも余談だが、筆者の私見として、日本の経営層にもこの考え方は親和性が高いと考えている。経営層の視点から考えた場合、プロジェクトの成功、すなわち結果を残し、会社事業にどれだけ貢献したのかによって評価されるべきものであるし、プロジェクトにおいては、どのような役割で何をなし得たのか、ということが強い関心事であると思う。その観点でもGAPPSの意義は大きい。 |