協会理事コーナー
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プロジェクトマネジメントについて

独立行政法人 日本貿易保険 稲垣 史則 [プロフィール] :7月号

(1) 組織概要
 私が所属している日本貿易保険(NEXI)は、日本政府が100%保有する独立行政法人です。貿易保険法を設立根拠法として2001年に設立されました。(それまでは経済産業省の一部門でした。)世界各国とも自国の企業の海外事業活動を支援するために同様の組織を有しております。
  NEXIの保険は保険と言っても損害保険会社のような物損を対象としているものではありません。取引信用保険―すなわち海外に輸出をしたが代金が回収できない場合や、海外のプロジェクトや企業に融資をしたが返済が受けられない場合に保険金の支払いを行うタイプのものです。支払われない場合は2種類の理由に大別されます。信用リスクと非常リスクです。(非常リスクとは、カントリーリスクを代表として、自然災害、戦争内乱、相手国による収用等取引の事業の相手方の責めに寄らないで発生するリスクです。)実際の保険金の支払いは非常リスクによるものの方が多いのですが、最近は信用リスクによるものの割合が高まってきています。

(2) プロジェクトマネジメントとの関わり
 私どもの業務を行っていく上で、プロジェクトマネジメント(以下PMと記載します。)が関わる視点が二つあると感じております。
 一つ目は、私どもが保険をつける案件自体のPMです。輸出保険であれば、エンジニアリング会社の海外へのプラント輸出に保険をつける場合、融資保険であれば、日本企業が出資をする海外の資源開発プロジェクトへの融資に保険をつける場合などです。いずれのケースも海外でのプロジェクトがPMの考え方を踏まえてきちんと期限と予算通りに完成をしてもらわないと困るわけで、輸出者なり事業主体がPMをきちんとできる者であるのかが重要な要素となります。
 二つ目が、私どもが保険をつけるときの私どもとしてのPMです。これは融資保険をいわゆるプロジェクトファイナンス案件につけるときに重要となります。近年多くの巨大案件(数千億円や数兆円規模のもの)、特に資源エネルギー案件を、日本企業が関与する形でプロジェクトファイナンスで組成することが増えております。スポンサー、レンダー、保険機関で案件のストラクチャーを議論するのに1年から数年かかることが一般的ですが、その際に重要なのがPM的な視点です。プロジェクトが円滑に建設されて運営されるのにチェックすべきリスク関連の各項目(完工保証、燃料供給、製品の引き取り、操業、コンティンジェンシー等)について交渉しながら合意していく訳ですが、その際に物事をPM的な視点で捉えて議論していくことが必要になります。
 以上、とりとめのない文章になりましたが、PM的な発想ということの重要性を最近よく感じます。今後ともよろしく御願いいたします。

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