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パーソナルプロジェクトの勧め (4)
~「アラ還プロジェクト」実行中~

プラネット株式会社 シニアコンサルタント 中 憲治 [プロフィール] :7月号

世界五大陸マラソン完走プロジェクト
Ⅱ.ユーラシア大陸編「万里の長城マラソン」
1.どの大会を選ぶのか
 世界中でマラソン大会と名のつくものは限りなくある。日本の中でも、フルマラソンだけで、47都道府県に必ず1つ以上ある。その中でどの大会を選ぶのかは難しい選択である。プロジェクトを立ち上げる時には、なぜそのプロジェクトを行うことが必要なのかを明確にすることが重要であるが、私のアラ還プロジェクトにおいても、どのマラソン大会を走るのかを選択することは、楽しいことではあるが大変悩む事でもあった。
 2004年4月にボストンマラソンを走った後、10月に右足踵部を骨折した。その後再度フルマラソンを走れるようになるまで長い年月を必要とし、また一度走れば、後遺症による痛みの回復のために少なからずの時間を要したこともあり、この制約条件の下でどのマラソン大会を走るのかを決めることは重要な意思決定であった。そのために、意思決定における重要な目標項目を設定しそれに沿った大会を選び出すこととした。
設定した重要な目標とは次の3つである。
①そこは世界遺産に登録された場所で開催されるものであること。②世界7大陸は無理としても、五大陸で必ず1つのマラソン大会を走ること。③できれば参加者の多い有名なビッグな大会ではなく、そんなところでもマラソンがあるんだという小規模なマニアックな大会であること。こうして選んだ大会が「万里の長城(Great Wall)マラソン」である。
2.万里の長城マラソンを走る
 万里の長城を走るマラソン大会は幾つかある。私の選んだのは、北京の北約130㎞の地点にある金山嶺長城から司馬台長城の10kmを約2往復するものである。このコースは、トレッキングコースとしてはよく知られているが2010年の大会はフル、ハーフ、10km、5kmで総勢60名弱。本当に小さな大会で、参加者は全員外国人。中国の人々にとっては、「あんなところ走るところではない!」ということなのだろうと推測される。
 万里の長城は、約100メートル毎に望楼がありその間を城壁で結んでいる。大会申し込みの段階で、望楼と望楼を結ぶ道はほとんど石段で、石段を上り下りするコースであることはおぼろげながら理解していた。しかし、地図と現地の違いの喩ではないが、大会パンフレットなどから得た情報で描いていたコースと実際のそれは想像を絶する違いであった。
3.情報不足のもたらすもの
 プロジェクトにおいて、段階的詳細化が求められているように最初から詳細な情報が得られたうえでスタートすることはまずありえない。マラソン大会においても、webや大会パンフレットから得られる情報は限られている。しかし、コース図やコースの高低差図などを参考にしてトレーニングを積む。「万里の長城マラソン」も石段が多いとの情報を参考にして、坂道トレーニングや石段の上り下りを練習コースに取り入れてトレーニングを積んだ。北京入りして大会の前日、コースの下見のため金山嶺の行きスタート地点から見たコースはため息の出るような眺めであった。しかし、スタート地点は観光地でもあるためか、石段は整備され、それほど急峻なコースとは思えなかった。




 大会当日、スタートして1kmも進まないうちにこの思いは覆される。
城壁は崩れて無くなってところも多く、石段も崩れているばかりか、あまりに急な石段の坂のため、城壁を伝って上るしかいない。城壁のないところは這いつくばって上る。まるで登山の様である。10kmでの折り返し地点までに平地の2倍の時間を要した。


スタート地点まで戻り、ハーフを走り切ったところで、体力も使い果たしギブアップ。
フルマラソンのところをハーフで終了とするスコープ変更を余儀なくされた。
もっとも、大会要領はこのことは既に想定済みで、途中での変更を容認することとなっており、ハーフ完走の認定を受けることは出来た。しかしながら、情報不足での何とかなるさ気分で参加したリスクマネジメントの欠如を痛感させられた大会となった。
プロジェクトマネジメントの終結プロセスにおいて大事なことは、プロセスを振り返り、教訓を得ることである。教訓には、うまくいったことから学ぶものと、うまくいかなかったことから学ぶことの2つがあるが、「万里の長城マラソン」から学んだものは。失敗からの教訓のみであり、少々残念な経験であった。

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