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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~人を魅了する力~

井上 多恵子 [プロフィール] :5月号

 リーダーとはどんな存在か、どういう資質が必要か、それにはさまざまな定義がある。その中で今回は、「人を魅了する力」について考えてみたい。人々の力を結集し、あるビジョンやゴールを達成するために求められるこの「人間的な魅力」が何で、どうすればそれを身につけることができるようになるのか、これを科学的見地も含めて解説しているのが、”The Charisma Myth”という本だ。
 日本に「成果主義」が導入される前、私の周りには、「この人のためなら、頑張って仕事をしよう」と思わせてくれた人が何名かいた。そういった方々の大半は既に定年退職をされている。しかし、今でも、その方々を囲んだ飲み会が定期的に行われている。仕事上のつながりは無くなっているけれど、なぜか会いたい、会うと元気になる、そんな人達だ。なぜ、彼らに対して、「人間的な魅力」を感じるのか、”The Charisma Myth” (「カリスマ神話」)は、ヒントを与えてくれた。
 「自分と接した結果、相手がいい気分になる」ことが、「人を魅了する力」になるそうだ。例としてあげられている一人が、元米国大統領のビル・クリントン氏だ。彼の最大の強みは、彼の周囲にいる人を心地よくできること。あの笑顔と人への接し方で、人々を魅了し、さまざまな活動への賛同者を増やしている。暖かさと優しさで人を魅了しているビル・クリントン氏に対し、ビジョンを語って人を魅了したのがスティーブ・ジョブスだ。彼が語った大胆なビジョンを我々は信じインスピレーションを得た。一方、集中力で人を魅了しているのがビル・ゲイツ氏。彼と話している人は、彼が全身全霊で自分と向き合ってくれている、話を聞いてもらえていると感じるそうだ。4番目のタイプが、ヒラリー・クリントン氏のように、権力や強さで人を引っ張るタイプだ。
 ”The Charisma Myth”は、これら4つのタイプを自分の中にしっかり持ち、相手と状況に応じて、各要素を押し出すことを勧めている。「この人のためなら、頑張って仕事をしよう」と思わせてくれた人達は、確かにこれらの要素を持っていた。私が大好きな一人は、私に自信を与えてくれた。彼は私と向き合い、強みを褒め「私はもっとできる!」と思わせてくれた。わかりやすい「自分の言葉」でビジョンを語って、我々に腹落ちさせた。私自身は強いビジョンを語れるわけでもないし、権力があるわけでもない。だから、優しさと集中力に磨きをかけていきたいと思っている。”The Charisma Myth”は、カリスマ性は生まれつきのものではなく、物の見方やボディラングエッジを変えることで持つことができるとして、この「自分磨き」を後押ししてくれている。
 優しさと集中力に磨きをかけるために、本から学んだ「自己中心から他人中心の視点への転換」を実践していきたい。目指すのは、自分のすごさー学歴だったり知識だったり、経験だったりーを宣伝するよりも、相手のすごさを見つけ、相手がそれに気付き輝けるようにすること。誰もが、自分の存在意義を認めてもらいたいと思っている。だからこそ、誰かと接する時には、その瞬間、その時間を相手にフルに捧げることが大事。「傾聴」を学んだこともあるが、実践できてはいない。その瞬間、その時間、最も大事なことは、「相手という存在」だということを、全身全霊で伝えてはこなかった。ましてや、書類を片付けながら、誰かと話をすることさえある。特に相手がゆっくり話をするタイプだったりすると、脳内で次やるべきことを考えるなど、マルチタスクをしている、ことがよくある。脳内のことは相手にはわからないだろう、という奢りだが、”The Charisma Myth”によると、一瞬の表情の変化等にそれは必ず現れ、相手にはわかってしまうらしい。
 相手に対し優しさを持てるようにするためには、自分自身に対しまず優しさを持つという点は、大きな気付きだった。不平や不満、劣等感は外に現れてしまう。だから、自分を受け入れること。自分自身の環境に対する感謝―既に持っていることに目を向けてみる、あるいは第三者から見たらどのように見えるのかを考えてみる。そして自分自身に対して思いやりを持ち、自己批判を避ける。私は幼少時代からずっと他人と比較する癖があり、劣等感を感じていた。10年位前から強みを見つけ、「自分は自分でいい」と思えるようになってもまだ、何かの拍子に、他人と比較する癖が顔を出す。若手偏重の傾向が日本にある中で、自分の年齢を公言するのを避けている自分がいる。先日も職場でたくさんの人がいる中で、「井上さん、同期ですよね。xx年入社の」と言われ、思いっきり「なんで年齢をばらすようなこと言うの!ひどい!」と嫌ですオーラを出し周りにマイナスの影響を与えてしまった自分がいた。反省。。。。どんな思考を自分がしているのか、そこに注意を払いながらまず、自分を受け入れる。その上で、誰かと接する際には、嫌だと思っている人でも、その人のいい点を服でもなんでもいいから3つ見つけてみる。
 自分に優しく、相手にも優しく。今日からゴールデンウイーク。まずは、両親と夫との接し方で気をつけてみたい。

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