PMプロの知恵コーナー
先号   次号

「エンタテイメント論」(73)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] 
  Email : こちら :4月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

6 創造
●夢工学式発想法の「基本的考え方」と「具体的方法論」
 夢工学式発想法は、その基本的考え方として「夢工学の本質」と「創造の本質」の2つに準拠した考え方をする。また具体的方法論として「発想促進法」と「発想阻害排除法」の2つを提示する。

 言い換えれば、①「夢(大好きなこと)」を持って、②「真似して、真似せず」、③発想し易くする「コツ」を掴み、④発想を邪魔する事を避ける「コツ」も掴んで発想すると「優れた発想」を生み出せると説く。簡潔明解な発想法である。

 筆者は、本発想法を活用して様々な発明をしてきた。また新しい事業プロジェクトのコンセプトを考案し、実現もしてきた。現在も、様々な実務に活用している。もし本発想法が複雑難解であれば、誰も使わないだろう。たとえ筆者が構築したとしても絶対使わない。


 本発想法は、発想ルール、発想マニュアル、発想手順などを習得することを一切求めない。老若男女、誰でも、如何なる事にも、如何なる段階からでも、直ぐに始められる。なお本稿の「エンタテイメント論」は、本発想法と極めて深いつながりがある事を予め指摘しておきたい。

●夢工学の本質
(1) 君こそすべて、夢こそすべて

 楽しい事をする時、大好きな事をする時、そして夢の実現と成功に挑戦する時、発想することが全く苦にならない。発想した事を具体化するために「汗と涙と血」を流すことを厭わない。それどころか、喜んで流す。その当然の帰結として、夢は実現し、成功するのである。「好きこそ、ものの上手なれ」と云う思考と行動の特性こそが夢工学が説く「本質」である。

 この「本質」を感覚的に体感する方法がある。それは、寝ても覚めても「あの人」を想う気持ちを歌ったエルビス・プレスリーの歌、「I want you, I need you, I love you.」を聞くことだ。若い読者には「古過ぎる歌」で申し分けない。しかしYou Tubeで聞くことが出来る。

 彼は、この歌を唄って世界的大ヒットを飛ばした。余談であるが、「You」に対する3つの英語表現の裏にある心情とその違いを、英語が得意な読者には理解されるだろう。得意でない読者は、友人や知人に尋ねて欲しい。

出典:Elvis Aaron Presley (1935-1977) Miguitarrablusera.blogspot


出典:Elvis Aaron Presley (1935-1977)
Miguitarrablusera.blogspot
  出典:Elvis Aaron Presley (1935-1977) Miguitarrablusera.blogspot

 愛する人への強烈な想いは、愛した経験がある読者には、「それが何たるか?」を説明する必要はない。この「You」を「夢」に置き換えて欲しい。その様な強い想いのレベルで「夢」を抱く人物は、「本物の夢」を持っている人物である。その「夢」は必ず実現し、成功する。何故なら「命がけ」で恋人を愛する様に「夢」を愛し、挑戦するからだ。この様な挑戦者は、勿論、「優れた発想」をする。「君こそ、すべて」、「夢こそ、すべて」である。本発想法が「夢工学式」と命名されている根拠は此処にある。

(2) 受動的起爆動機と能動的起爆動機
 この様な「想い」が無い人物は、如何に頭が良くても、如何に優れた発想法を駆使しても、「優れた発想」を産み出すことは困難である。

 発想し、実現し、成功させる「課題」を他者から与えられた場合は、本人は、どうしても義務感、使命感、悲壮感などの「受動的起爆動機」を持つことになる。そのため自らを何とか奮い立たせて頑張ろうと云う精神的負荷が掛かり、長続きし難く、従って「優れた発想」が難しくなる。

 一方実現し、成功させたいという「夢」を持った人物は、自らの意志と情熱で、何としても「優れた発想」を出そうと頑張る。この所謂「能動的起爆動機」を持つ人物は、長続きし、優れた発想が可能になる。

 さて世の中に数多くある発想に関する著書は、発想する「動機」の事を指摘している。しかし「受動的起爆動機」か? 「能動的起爆動機」か?など発想のための「動機」の原因とレベルに関する考察が十分ではない。

 更に「動機」こそ、発想の是非を決定する最重要ファクターであると強く主張する著書は、筆者の知る限り、殆どいない。殆どの場合、発想のための技術、発想ルールや発想マニュアルによる発想法、発想と脳科学の関係論などで終始している。

(3) 発想法による活用実績
 以上の著書の中で、著名な学者や経営コンサルタントが書いた著書では、彼らが構築した「発想法」、「発想論」などを自ら現場で活用して、新しいモノや技術を「発明」した事又は新しい事業コンセプトを「考案」して実現させた事などの「活用実績」の記述が極めて少ない。

 「私は優れた発想法を構築しましたので、皆さん、是非活用して下さい。必ず巧くいきますから」では、読者がどこまでそれを信用してよいか分からない。

●創造の本質
 本発想法の「基本的考え方」のもう一つの「創造の本質」を説明したい。
(1) 創造とは
 「創造」とは、発想する事と発想した事を具現化して世の中に役立つ「価値」を生み出す事を云う。プロジェクト・マネジメントの観点から言い換えれば、夢~源流~上流~中流~下流までの一連の作業によって社会に役立つ「価値」を生み出すことを云う。

 筆者は、創造の「創」を発想と、「造」を発汗と定義している。発汗とは、汗をかくことで、発想したものを価値あるものに「造り」出すまでの一連の行動を云う。本発想法は、発想(創)したものを「夢工学」を活用して価値を生み出す(造)と云うセット方式の「創造工学」と言い換えられる。

創造とは


(2) 創造に関する議論
 創造に関する著書も、論文も、議論も数多くある。更に創造する脳の仕組、最先端の脳科学、創造と芸術、創造と哲学などがある。しかし筆者は、それらの議論をここで紹介し切れないし、とてもまとめ切れない。

 ついては、批判されるのを覚悟し、創造に関する議論を絞り込み、煮詰めて残った「エキス」を「創造の本質」として以下の通り纏めた。これは、学問的研究の結果からまとめたものではなく、実プロジェクトの実務経験の結果と筆者の独断と偏見でまとめたものである。

●創造の本質①=創造は、人間だけの特権ではない。
 創造は、天才の特権ではない。誰にでも与えられた特権である。それは「生きるための知恵」を駆使する特権である。しかも人間だけに与えられた特権ではない。植物にも、動物にも、微生物にも、自然界に存在する全ての生物に与えられて特権である。

 その特権は、生き残りと子孫を残すと云う「生存と繁栄」のための知恵を産み出す創造の特権である。すべての生物は、地球の誕生から現在まで、そして将来必ず崩壊する地球の有限の未来までの特権である。



●創造の本質②=生存と繁栄の仕組み
 地球誕生から現在まで生物は、環境の変化に適応し、生き延びてきた。例えば「肺呼吸の仕組み」を発明した魚は、陸上に進出した。「空飛ぶ仕組み」を発明した生物は「鳥」になり、大空に進出した。巨大隕石の衝突で地球存亡の危機に直面して巨大な恐竜は滅亡したが、それでも生き抜く仕組みを発明した哺乳類は、その後の地球を支配した。そして人類を生み出した。生物の歴史は、「創造の連鎖の歴史」とも言い換えられる。

 特に人間は、生物の「創造の仕組み」と自然の「創造の仕組み(後述)」を学んだ(真似する)。それに新規の考えを加えたり、既存の考えを削除した発想(真似しない)とその発汗を実践して、数々の「夢」のプロジェクトを実現させ、成功してきた。そして遂に人類は宇宙空間にまで進出したのである。次の目標は、火星である。筆者はそれまで生存不可能だが、読者の多くのは、人類火星着陸をTV番組で見るだろう。



つづく

ページトップに戻る