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「グローバルで通用しているビジネスの常識を学ぼう」 (24)
―日本再生へのアプローチ (8) 「アベノミクス」+アルファ―

渡辺 貢成: 3月号

A. 先月はいろいろな議論が出て面白かった。好調なアベノミクスに対し、賛成する声と危惧を述べる勢力がある。ただ、現在までのところアベノミクスは健闘しているといえるのではないか。ただ、心配に対する結果がまだ出ているわけではなく、だからと言って成果が出たわけでもない。ここはしばらく静観するとして、農業問題と観光問題を取り上げたい。
G. 私も皆さん方の議論を聞きながら、勉強しないと追いついていけないと感じ、勉強し始めました。農業問題も読みましたが、2014年1月に本間正義著「農業問題」-TPP後、農政はこう変わる-が出版されています。また、2013年12月30日に榊原英資著『これから7年、先読み!日本経済』が出版されました。この本の出版には経緯(いきさつ)があります。榊原英資著「日本経済『円』の真実」が2012年10月に出版されました。その直後アベノミクスの生みの親である浜田宏一教授著「アメリカは日本経済の復活を知っている」が2013年1月に出版されています。この問題を説明する方が面白いと思いました。説明させてください。
A. それでは農業問題より緊急性がありそうだね。説明をお願いする。
G. まず、
  1 ) 榊原著「日本経済『円』の真実」の説明をします。これはアベノミクス直前に出された本で、その内容はアベノミクスとは反対の発想ですが、説明します。
    日本の現状を「円高」というのは間違った認識。為替介入しても円安にはならない。
大切なことはこれから始まる“世界同時恐慌に備えよ!”
    強い円は日本の国益、国家ファンドで海外の企業を買え
日本は円高によるメリットを活かしていない。
    現状はデフレではない。円高が物価を安定させている。
日本の輸出は、乗用車以外は新興国への製造機械(含む工作機械)、製品のための部品が主で、円高でも競争力があり、高値で取引ができている。円安政策をとると「燃料の値上げ」、「輸入消費財の値上がり」で一度に収支が崩れ、輸入超過となる。それに反し新たな輸出が増えるとは限らない。
    榊原氏は「円安政策はトヨタとか大企業に貢献するものはあるが中小企業の輸出が伸びるとは限らない」と言っていた。 しかし、確実なことは年金生活者にとっては決定的にマイナスであるとしています。

  2 ) 浜田宏一著「アメリカは日本経済の復活を知っている」の説明をします。
    日銀の金融政策は間違っている
外国人学者は「日本は潜在成長率以下で日本経済を運営している。金利を下げているが、金を絞っているので、金回りが悪く、景気対策になっていない」。としている。日銀が日本国債を民間銀行から買えば、民間銀行の流動性がまし、市中へ金がながれる、景気回復に貢献する。日銀は見せかけの景気対策をしているが量的緩和政策がないので景気対策になっていないと指摘した。(論理的なこと、米国学者の説などが詳しく書かれている。)
2012年2月に1%インフレ「ゴール」を設定すると、株価は1,000円高、円は4円安となった実績がある。
リーマンショック以降円はドルに対し、30%高くなった。韓国のウォンは30%安くなった。差し引き60%の差があると、日本商品は韓国に勝てるわけがないといっている。

  3 ) 榊原著「これから7年、先読み!日本経済」 2013.12.30.初版
アベノミクス好調を受けて書いたものである。
    アベノミクスで2014年の日本経済は前年に引き続き2%台の成長を維持できる。
    オリンピックというフロックを活かす
オリンピックという景気対策があるが、これを将来につなげる投資に向けてほしい。人口減で、成長戦略だけではほころびが出る。この7年間の間に「成長社会」から「成熟社会」への転換が必要である。
    これから7年間への提言。
    なぜ「アベノミクス」で「円安」、「株高」となったか。従来と違い、一気に金融緩和を行い、市中に円が増えたことです。同時にFRB(米国中央銀行)が量的緩和を制限し始めたことで、新興国への投資資金が米国に戻りはじめている。
    ただし、これより先のインフレ目標2%はナンセンス、デフレを無理に解消することはない。:ここから榊原氏の持論に戻っています。第3の矢:成長戦略の焦点が定まっていない。ビジョンなしに国土強化というハコもの戦略では人口減少時代に単に運用費の増大となり、これが将来大きな国民負担となる。
    TPP参加で「日本の成長率が上がる」は間違いである。
    農業活性化!待ったなし!農地法改正と株式会社の参入を認めよ!
    教員免許などいらない。大学教授では小・中・高校を教えられない。(熟に優れた先生がいる。)
    1年の半分を休む日本の大学、教師も生徒もたるんでいる
    なぜ、医師会は「混合診療の導入」を認めないのか?
    アベノミクスは現時点で5段評価の「5」である。

A. Gさんありがとう。アベノミクスも少しわかってきた気がする。今までは景気対策として、日銀が金利を下げると、投資家は安い金利で新しい事業をすることを考え、景気が回復すると思っていたが、それが間違いだとわかった。日銀は金利を下げて「景気対策」をした、と宣言しているが、日銀から市中銀行に円札を流さない限り、市中銀行は民間に金を貸すことができない。日銀が市中銀行手持ちの国債を買えば市中銀行に円が増える。この円を銀行に寝かせておけば、銀行は大きな損となるので貸すことを考える。日銀は景気対策と言ってウソを言ったことになる。それにしてもGさんはよく勉強しているね。
G. 実は私の専門はPM(プロジェクトマネジメント)ですが、商社と私たちエンジニアリング企業を除いて日本中が、目先の利益に振り回されています。国内に大きな成長の種がない中で、日本人同士が小さいパイの争奪戦をしています。一方グローバリゼーションのお蔭で新興国は大きなビジネスチャンスを活かしてきました。これに対し、日本の経営者はリスクが大きいことを理由にグローバル進出を避けてきました。結果として、企業は番大切な人的資源、知的資源を平気で減らしています。しかも若手を経費削減の対象として派遣社員化しました。これでは日本の将来が心配です。韓国と比較してみるとよくわかりますが、日本は金もあり、技術もあり、高偏差値エリート官僚という集団がいます。しかし、なぜか経済発展のハブ空港、ハブ港をつくるという発想を持っていませんでした。韓国は世界中に人材を派遣して、各国の要人との人脈をつくっています。若し、新興国や発展途上国の人々が自分たちの経済をグローバ化したいと考えたときに、日本企業と組むか、韓国と組むかといったときに、私なら韓国と組むことを考えます。日本の役所は通関手続きに1週間もかかりますが、シンガポールは数時間です。日本の役人は「官は偉いから頭を下げて国民のためにビジネスの手伝いはしない」と考えています。これでは成長戦略と安倍総理が言っても実現できません。民間もいまだに「稟議制」を採用しています。経験のない新しい問題に直面した「稟議」は先送りとなります。
この状況では日本は良くならないと考え、PMAJが行っているP2Mを刷新してAdvanced P2Mという発想を取り上げてみたいと考えています。P2Mは世界で一番進んでいるPMです。しかし、日本人特にエリートは米国に対する劣等感があり、米国産が素晴らしく、日本産はダメだと思っています。
ところがグローバリゼーションの結果新興国は国際金融資本から資本、技術、人材が提供され、新興国経済が発展しました。この間の15年間を見ますと、新興国が経営のお手本としたのは日本型製造業のノウハウです。松下幸之助の発想です。決して米国ではありません。
日本では「アメリカで出羽の守」という言葉があります。日本の経営者は口を開くと「アメリカでは(出羽)今XXXXをしています」と戦後から一貫してアメリカを先生としてきました。アメリカは製造業から退き、金融で勝負しています。それなら有り余る金を利用することを考えるべきですが、高偏差値エリートは残念ながら正解のない新しい問題に遭遇すると、先送が無難と判断しています。P2Mが行っている“ゼロベース発想”を駆使するすべを知らないからです。日々の業務の中で実践し経験を積まないと“ゼロベース発想”は使えません。これが失われた20年の実態だとおもいます。幸いにして日本のミドル以下はいまだに健全です。彼らに期待してA-P2Mを提供し、日本の経済規模に見合う活動をしてもらいたいと願っています。そのためにP2Mを新しく使いやすいものにしたいという念願を持っています。
A. それは素晴らしい心がけだな。言われてみるとその通りかもしれない。日本人が日本人に学ぶとは、とても素敵な発想だと思う。その意味でこの議論はA-P2Mに貢献しているのだな。
G. その通りです。
A. どうだろうか、来月はA-P2M的発想とは何かわかっているだけでも輪郭を見せてくれないかな。
G. わかりました。日本の直面している問題はグローバル市場での新たな競争力開発です。同時に高齢化社会をどのように迎えるかがまだ固まっていません。グローバリゼーションと高齢化社会への対応という難問への提言ですが、高度成長時代からの発想である「モノづくり=技術日本」というフィロソフィーでは対応できないと考えています。今「モノづくり」時代を「コトづくりイノベーション」と置き換えてその考察も将来の展開の1要因と考えています。しかし、多くの方々のご意見が必要と考えています。先生からもご意見を頂戴したいと考えています。
A. 日本は「物事」を大切にしてきた。考えてみれば「モノ」にこだわりすぎたのかもしれない。サービスはコトに所属するから「コトづくり・イノベーション」は面白いかもしれない。

以上

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