グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第77回)
ロシアの輝きとウクライナの悲劇

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :3月号

 2月は、例年、北ヨーロッパに行っていたが、今年は久しぶりに海外出張が無い月となった。2月の主たる活動は、石川県の北陸先端科学技術大学院大学での1週間の集中講義であった。東京が豪雪で町田市の丘陵地帯にある自宅の近くでは積雪が40cm位残り、都道を走るバスが、私が町田に住んで35年で初めて運休、というすごさであったが、小松空港も、そこから内陸に入った山の入り口にある大学にも雪がまったくない。昨年は同時期に1mの雪があった。昨年9月には全国が台風で交通マヒした際にも、台風は石川県には来なかった。自然は、石川県の大先輩元首相に遠慮をしたのであろうか。

 2月は私の活動拠点があるロシア連邦とウクライナ国で、まさに輝きと悲劇という正反対のことが同時に起こった。

 ロシアの輝き、とは勿論ソチ冬季オリンピックの大成功である。テロ攻撃の恐れとか準備の遅れとか種々の懸念事項があったが、見事に課題をクリアして閉会した。開会式と閉会式での大変優れた芸術性、美形のロシア男女選手の活躍、ソチのホスピタリティーと素晴らしかった。ロシア人の大変な強みは国民の楽観である。ネガティブなことは考えない。ロシア語でダバイ・ダバイ(Let’s go, let’s go) という頻発される言葉があるが、計画は走りながらやろうよ、という意味である。正確性と完成度の高い計画を重んじる日本人にはなかなか馴染めないコンセプトであろうが、プロジェクトマネジメントでいうところのRolling Waveプラニングと同じであるといえば、なるほどとも思えよう。

 私が国際教授をしているモスクワ国立文理大は、オリンピックのボランティア拠出の最大団体であり、400名の公式ボランティアを送り込んだ。大学にはボランティア機構本部があったので12月の大学訪問時には表敬訪問をしてきた。また選手では、フィギュアスケートのロシア・ペア金メダリストの男子の方が、在校生とのこと。ソチ五輪を通じて現在のロシアの力と真の国民性が世界に伝わったのであれば、大変結構なことだ。

 一方私の最大の海外拠点であるウクライナでは、悲劇的な状況で政変が起こった。首都キエフには昨年11月と12月に合計10日ほど滞在していたが、その際は、10万人規模の抗議活動が行われている市の中心部を避けて活動を行っていた。この原稿を書いている3月25日現在、私のパートナーの情報では、首都キエフは急速に鎮静化が進んでおり、大学はまった正常に機能しているとのこと。ウクライナは正常時でも財政・経済・社会課題が山積であり、今後の国家運営は予断を許せないが、ウクライナ人は超現実主義者であり、党派間の連立で微妙なバランスを取りながらタイトロープを渡っていくことになろう。

 ウクライナでは学の独立が確立しており(御用学者は居ない)、また、プロジェクトマンネジメント学者はチェルノビル原発事故の後処理に始り、ビジネスや公務の透明化などについて中立なビジョンとメソドロジーを以て国に貢献してきている。私もウクライナのプロジェクトマネジメント学者として今後とも国に貢献していく所存である。次は5月に開催されるリージョナル国際大会で講演を行い、いくつかの大学で講義を行うことになっている。  ♥♥♥


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