例会部会
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第181回例会レポート

例会部会 渡部 寿春: 2月号

開催日時: 2013年12月20日(金) 19:00~20:30
テーマ: マーケティングによりPMOを変革せよ!
 ~変革のための具体的な活動と事例~
講師: 株式会社 プロジェクトマネジメントオフィス 代表取締役 好川 哲人氏

 今回の講師は、プロダクトマネジメントのコンサルタントとして新規事業開拓や商品開発を支援する傍ら、イノベーティブリーダーを養成する独自のサービスブランド「PM style」を確立し、メールマガジン「プロジェクトマネージャー養成マガジン」や書籍出版、雑誌記事を通じてプロジェクト業界に影響を与え続けている好川氏に講演して頂きました。
 講演では、PMOの役割に関する説明から始まり、直面する課題と変革のための具体的な方法が示され、この変革の活動をPMOマーケティングと命名し「コミュニケーション」‐「教育」‐「サポート」のサイクルで実施する手順が解説されました。

1.     PMOの役割
    事務局型PMO【プロジェクト毎に設置】
    役割: シングルプロジェクトの成果物を決め目標の達成(コスト、スケジュール)を行う。
    説明責任: 計画策定と進捗報告をプロジェクトマネージャーにする。
    標準化型PMO【常設組織又はプロジェクト毎に設置】
    役割: マルチプロジェクトでプロジェクト経費の削減を目的に、マネジメントの標準化、環境構築を行う。
    説明責任: 見積りを行い、PMOと所属ライン長に施策を提案する。
    問題解決型PMO【常設組織又はプログラム毎に設置】
    役割: プログラムレベル(個別プロジェクトの統合)で利益拡大を目的にプロジェクト間の調整を図りプログラムを最適化する。
    説明責任: 会計年度毎に部門の施策をまとめ予算化を図り事業部門長に提案する。
    戦略実行型PMO【常設組織】
    役割: 事業戦略的なポートフォリオマネジメントを目的に戦略を実施するためのルールや体制などの環境を整備する。
    説明責任: 全社のビジョン、ミッション、中・長期戦略計画をCEOに提案する。

2.     PMOの課題
    PMOの役割が、業務の実施→効率化→利益の追求→戦略の実行と言うように変化しており、より複雑な問題の解決が求められるようになっている。

    <一旦定着したが、一方で不要と見なされ廃止となったケースが多い>
これまでにPMOに期待されてきたこと:
    大規模プロジェクトで整合性のあるマネジメント
    プロジェクト異常の早期発見とトラブルの回避
    組織の中で同じ失敗を繰り返さない。
    これまでに期待されたことはある程度達成され必要性が低下したか、若しくは、効果が発揮されないため品質マネジメント部門に変わったところが多い。現在、PMO組織は減っている。

    <問題、課題、機会に注目したPMO変革が必要となっている>
今後、期待されるPMO:
    組織が一体となったプロジェクトマネジメント
    戦略の効率的な実行
    ビジネス的機会を活かすPMOが必要となっているが、これまでのPMOに期待された状態から変革が進まない。

3.     PMOを変革するにはどうするか?
    PMOロードマップの作成
    プロジェクトの実施状況をアセスメント
          ↓
    PMOの定義、コンセプトを新たに作る
          ↓
    マーケティングコミュニケーション(組織内への売込み)通知・教育・支援
          ↓
    詳細計画の策定と実施(人材、ファシリテーション)
          ↓
    PMOの運営と改善

    重要なPMOマーケティングのサイクル【コミュニケーション→支援→教育】
    コミュニケーションでは、プロジェクトマネージャー像を可視化する、キーメッセージを作る、成功物語を語る、方法を計画し実行しモニタリングを行う。
    教育では、ニーズ、目標、対象者を定め、プロトタイピングを作成し、インストラクターを決め評価方法を設定して実施し改善を行う。
    サポートでは、プロジェクトマネージャー像を確認し自立的なコミュニケーションが行えるようマニュアルを整備しモニタリングとフォローを行う。

    PMOマーケティングの例 (S社)
    コミュニケーション
      担当役員からPMOの新しいミッションについての紹介
経営企画室長から経営企画室の体制変更についての紹介
PMOから主要な目標と予想される日程の紹介
月1回進捗報告
PMOと活動に関するタウンミーティング
    教育
      PMOのコンセプト、目標、役割、責任、組織への貢献をプレゼン
社内の成功事例をWebサイトに掲載して読ませる
PMOのユーザーズガイドを準備
経営層の期待をWebや研修で伝える
    支援
      PMOからのコミュニケーションに対する期待をもたせる
PMOの活動やイベントを知らせるニュースレターを配布
プロジェクトマネジメントのトレーニングカレンダーを配布

 講演の要点は、PMOはこれまでの役割を終えて廃止に向かうか、事業価値を生むための成熟に向かうかの過渡期にあり、変革が進まなければ廃止に向かう方向にあるという内容でした。そして、変革を行うための方法がPMOマーケティングでありロードマップに沿った組織改革が必要であると言うものです。講師の著書である「プロジェクトマネジメントの基本」に「なぜ、業務をプロジェクトとして実行するのか」と言う記述がありますが、成熟したPMOは、ビジネスの問題、課題、機会に注目し戦略の効率的な実行が可能なためだと、今回の講演を通じて感じました。

以上


 最後に、今回の講演で使われた資料が、協会ホームページの「PMAJライブラリ(例会・関西例会)」のページにアップロードされていますのでご参照いただければと思います。
 また、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

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