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PMシンポジウム2013を経験して考える大学でのマネジメントの現状

東北大学 大学院工学研究科 機械システムデザイン工学専攻 髙橋 一平 [プロフィール] :1月号

 私がプロジェクトマネジメントを学んだのは,東北大学の高度技術経営塾でした.そして卒塾から6ヶ月ほど経ち,PMから離れかけていたところにPMシンポジウムのお話を頂き,スタッフとして参加させていただきました.初参加でしたがいろいろな刺激があり,非常に有意義な時間を過ごすことができました.PMAJの方々をはじめ,シンポジウムの関係者の方々に心より感謝を申し上げます.
 さて,本稿ではこのPMシンポジウムに参加して学生の立場から感じたことから,大学の中でも特に研究室でのマネジメントの現状について述べたいと思います.一番印象に残っていることは,社会人の方々は非常多く参加されている一方で,「講演者やスタッフに大学関係者が非常に少ない」ということです.今回スタッフとして参加した学生も非常に少ないうえ,PMを学んでいるという学生になるとさらに数は減ります.PMを学んでいる学生も研究として学んでいるのがほとんどで,本学のように学生が研究と両立してPMを学んでいるという大学はごく少数であると感じました.

 では研究室でそもそもマネジメントがあまり浸透していないのはなぜなのでしょうか.筆者は以下の二つが理由として挙げられると考えます.
企業と研究室のマネジメントする対象が異なる
大学の研究室の方針が各々の研究室で異なる
 まず一つ目の理由に関して,マネジメントを行う対象が企業はプロジェクト・プログラムがメインであるのに対し,大学は個人がメインであることが関係していると考えます.大学における研究は,基本的に個人主義であり,自分で問題設定し,問題解決までの道筋を立て,自分をタイムマネジメントしながら研究を遂行するのが一般的です.また利益の追求が求められる企業のように結果に至るまでの過程の効率化よりも,結果に至るまでの過程も幅広い知識の習得や新たな発見のために重要視されます.そのため,研究活動自体に企業で行われているようなPMをそのまま適用するのは難しいと考えられます.
 では研究室にマネジメントが必要ではないのか,と言えば決してそうではありません.教授をはじめとした研究室の先生方には「研究者」であると同時に,学生を指導する「マネジャー」としての立場も求められるためです.ここで二つ目の理由ですが,研究室のマネジメントは研究室の方針を基に行われていることが多いためです.研究室の方針は基本的に教授の方針であるため,研究室ごとに体質が全く異なります.その違いにより,良い研究成果や独自性が生まれているのも事実です.一方で,各研究室が独立し過ぎていて研究室間の交流が非常に少なく閉鎖的な体質も持ち合わせています.筆者はこの閉鎖的な体質に問題があると考えます.筆者が所属する東北PM研究会のメンバーで,所属する研究室の様子を話す機会があったのですが,多くの新しい発見や自分の研究室の長所・短所に気付いたりしました.このような専攻や研究科を超えた交流は各々の研究室の特色・体制を知ると共に,自分の研究室の体制を見直す良い機会にもなると考えます.また,自分の研究室の良い手法やシステムを他の研究室に紹介するなど,関係を密にしていくことで,研究室のシステムはより良いものになりうると考えられます.こういった「外にも積極的に目を向ける」という姿勢が大学および各研究室にこれまで以上に浸透したとき,大学における大学独自のマネジメントの形が見えてくるのではないでしょうか.

 本稿で述べた大学におけるマネジメントに関しては,筆者が所属する東北PM研究会が大学でのR&Dマネジメントに焦点を当てて,PMAJジャーナルに投稿予定です.ぜひこちらもご覧いただければと思います.皆様のご意見・ご感想をお待ちしております.

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