法人会員様コーナー
先号   次号

建設業のプロジェクトマネジメント

株式会社日建設計 辻 栄治: [プロフィール] :1月号

 日建設計は、建築の設計監理、都市計画およびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を行う総合設計事務所です。これまでに手がけさせていただいたプロジェクトは、日建グループ全体で約25,000件、国内はもとより広く海外40数カ国におよび、行政・産業・教育文化・医療福祉・住宅などあらゆる分野にわたっています。
日建設計は、2005年に建築設計事務所として世界最大の規模となり、その後もトップグループに属し、中国、インドネシア、ミャンマー、ベトナム、中東諸国で数多くのプロジェクトに携わり、近年はインド、ロシア・CISにも展開しています。
世界は今、都市化の進展に伴い、自然との調和を目指した低炭素社会の実現、ICTを生かしたスマートシティ化への取り組みや、地域ぐるみの安全・安心の追求など、多くの課題を総合的に解決する必要があります。日建設計は、今こそ「価値ある仕事によって社会に貢献する」という日建グループの理念を強く意識し、1900年の創業以来、110年以上にわたりさまざまな課題を解決してきたこれまでの経験を生かしながら、最大の努力と貢献をしなければならないと考えております。

さて、翻って日本の建設産業の現状を概観しますと、将来にわたって国内建設工事の減少と海外展開の拡大が進むと考えられます。日本の建設産業では日本社会CONTEXTの中で機能する独自のプロジェクト管理が実行されています。国内ではこの独自のプロジェクト管理が十分に役割を果たしているため、建設産業での”プロジェクトマネジメント”の普及が遅れていると考えられます。しかし一歩海外に出るとこれは機能せず日本企業は多くのプロジェクトで失敗を重ねています。
海外プロジェクトでの失敗を減らすために、地域ごとに日本と異なる社会CONTEXTや建設慣習の理解に努めると共に、国際的な契約の理解と適用、科学的プロジェクトマネジメントがプロジェクトの計画段階のみならずプロジェクトの全ての段階に必要だと考えます。また建設プロジェクトではステークホルダーの関与が大きくプロジェクト進行中に対立する利害の調整を図り発生する変化や問題に適切、迅速に対応することが重要になります。そのためプロジェクトマネジャーには科学的プロジェクトマネジメントに加え、コミュニケーション、認識、分析、判断、調整、交渉などの能力を駆使し意欲をもってプロジェクトをまとめ切る高いCOMPETENCYが求められます。

上記の背景を踏まえ建設産業のプロジェクトマネジメント強化のためPMAJに次のことを期待いたします。
1. 海外プロジェクトを事例に建設産業分野でのプロジェクトマネジメントの必要を説明しプロジェクトマネジメントの普及を図る。(国際的な契約の理解をこの活動に含める)
2. 各企業のプロジェクトマネジャーのCOMPETENCY強化の取り組みを研究し、それに基づきCOMPETENCY強化のモデルを整備し、企業が行うCOMPETENCY強化の活動を支援する。
PMAJの社会貢献に感謝し、一層の発展を祈念いたします。

ページトップに戻る