PMプロの知恵コーナー
先号

ダブリンの風(124) 最後に

高根 宏士: 12月号

 これまで14回にわたって「不適格なPM群像」という名の下に、問題になるようなプロジェクトマネジャーの例を挙げてきた。それではどのようなタイプならばPMとして期待できるだろうか。
 ここで注意しなければならないことは「不適格なPM群像」で挙げた例にならないように気をつければ期待されるPMになれるかというと、そうはならないことである。ここで挙げた例はある意味では「悪いこと」であり、「臭み」であり、ある意味では「弱点」、「弱み」である。「悪いこと」は止めなければならない。「臭み」は気にならない程度に臭気を弱めるか、「臭い」を「匂い」に変えなければならない。しかし「弱点」、「弱み」については無理をしてそれを直そうとすることは通常は労多くして益少なしの結果になる。プロジェクトにおいては、PMは自分の「弱点」「弱み」についてはそれを直すことにパワーを掛けることより、自分の弱点を長所として持っているメンバーの力を借りることである。自分は自分の得意なところで貢献することである。そして最終的にはプロジェクトチームとしてのアウトプットを最大にすることに意を用いることが肝要である。
 「不適格なPM群像」のような例をあまりに意識して、その特性を持たないようになったとしても、それだけでは単にマイナス部分がなくなったというだけで、プラス(期待される、魅力)部分が作られるわけではない。単に存在感のない、いわゆる毒にも薬にもならない人格ができるだけである。
 それでは期待されるPMはどのような特性を持たなければならないか。それはプロジェクトに対する主体的な情熱とそれを持続させる執念、そしてそれをプロジェクトチーム、広くは関係ステークホルダーに浸透させていくためのコミュニケーションの力である。「コミュニケーションの力」は単なるスキルでなく、深い人間性に根差したものでなくてはならない。そしてその根底には謙虚な素直さがなければならない。この主題については機会があれば、また展開したいと思う。
 ところで、コラム「ダブリンの風」については2003年4月以来10年余り続けてきました。10年を超えましたので、今回を持ちまして、筆を置くことにいたします。この間皆様には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
 最後にこの十年間、ずぼらな筆者に絶大な支援をしてくださいました渡辺貢成、岩下幸功両編集長に感謝いたします。お二人の支援がなければここまでは続かなかったことと思います。
 もうすぐ2014年が明けます。皆様お一人お一人が良いお年をお迎えくださいますよう祈念しております。

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