ダブリンの風(123) 「不適格なPM群像 14」
高根 宏士: 11月号
11 複合型
不適格なPMの例を、これまで13回にわたって書いてきた。最後に複合型について触れる。この型はこれまで述べてきた不適格な特性を二つ以上、極端な例ではこれらすべての特性を充分に持っているPMである。当然PMとしては不適格である。
しかし自分の持っている特性をきちんと認識し、その弱点をカバーするために、プロジェクトメンバーや他のステークホルダーの強みを活用しようとしているPMは必ずしも悪くはない。スポーツなどで体に弱点を持っている人間が、それをカバーしてくれる人に感謝しつつ、協力して何かを達成する場合、それは一つの成功事例となる。プロジェクトにおいてもこれと同じで、自分の弱点をカバーしてくれる人との心からの協力関係を作れればプロジェクトは成功する可能性が高い。
最も悪いPMの例は不適格な特性を充分にも持ちながら、自分がいないとプロジェクトは駄目になると思っているPMである。この場合そのPMに体力とスタミナがある場合は救いようがない。体力やスタミナがなければ、PMは長時間現場にいることはできないので、メンバーは自分の時間を持つことも可能である。しかし体力とスタミナが充分あるPMはいわゆる「セブンイレブン型」になる。すなわち朝7時から夜11時まで現場に居座り、「木を見て森を見ず型」の特性も発揮して、本質的には重要でない枝葉の問題に拘り、「独善的」特性からメンバーをそれらの問題に引き摺りこみ、本来の仕事をさせない。それでいながら、メンバーの意見や提案を取り上げようとせず、自分の考えに固執し、押し付ける。メンバーは体力的には消耗してしまい、精神的には閉そく感と欲求不満になる。それが続くと無力感に陥ってくる。このPMはそのようなメンバーをやる気のない、頼りない奴としてことごとに糾弾する。まるで「いじめ」のようになる。体力とスタミナがあるので、そのいじめは毎日、また長く続くことになる。「スター型」の特性も持っているので対外的には全て自分が頑張っているように宣伝する。外部はそれに騙されやすい。
世の中にこのようなPMは少ないように見えるが、現実には比較的多い。このPMの本質はどんな場合でも「自分は悪くない」という前提ですべてを考えるので、関係者(特にプロジェクトメンバー)を人間として無視してしまうことである。PMが枝葉にこだわっているので、本質的問題を指摘すると、反って指摘した人がおかしいとして対処する。したがってミーティングや対話を重ねれば重ねるほど、チームワークは崩れてくる。
この事態を救う手段はPMの上司(母体部門長)がPMの特性とプロジェクトの状態をきちんと認識し、このPMを更迭することでる。しかしながら現実の場では反対にまともなメンバーの方がはずされることが多い。憂うべきことである。
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