ヤングコーナー
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優秀な人財とはどのような人か?
~大学・大学院生活を通じて感じること~

東北大学 河野 直樹 [プロフィール] :10月号

 筆者は現在, 大学院博士後期課程に在籍しており, 2014の4月から大手企業の中央研究所に就職する予定である. 9年間の学生生活を終えようとしている筆者が, 今切実に考えていることがある. それは, 「優秀な人財とは, どうゆう人で, どうあるべきか」という疑問である. よくよく考えてみると, 大学生活・大学院生活を通じて, 誰かに教えて頂いたことはないように感じる. 社会人への準備期間である学生生活で, この問いかけについて議論する機会もなかったことは, かなり勿体無い気がするのである.
 このテーマは実は, 就職活動を控える学生にとっては極めて関心が高いものである. 昨年のYOUNG CREW会議において, 就職活動に関する懸念や心配の声が多く出された. 内定が欲しい学生にとって, 優秀な人財だと思われたいという欲求は, 大学生・大学院生の切実な気持ちであると思うのである.
 学生生活を通じて気がついたことは, テストで高い点数を取れる人間が優秀な人財とは限らないということである. 大学受験の影響から, 恐らく多くの学生が「点数が取れる人≒優秀な人財」と思っているだろう. しかし, 研究成果が求められる博士課程で直面したことは, 「知識量」と「無の状態から新しい物を生み出す力」に, 高い相関関係があるわけではないことである. もちろん学習を通じて知識を増やす努力をする事は当然である. しかし, 上記の事に気がつかないと, 頭ではわかっていても, 社会では何も生み出せない人間になってしまう恐れがあるのである.
では, 新しい物(研究成果, 新商品等)を生み出すには何が求められるのか?学生なりに考えた事を下記に示す.
研究・製品立案力
資金を獲得する力
実験等を通じて成果を出す力
成果を発信する力(論文, 特許, プレゼンテーション等)
上記は, 主に個人の能力に着目した力である. 筆者の考えでは, 図1の左のサイクルを単独で実行でき, より多くのアイデアを組織内で事業化できる力を身につける事が重要だと考えている.(できれば学生のうちに)
図 1 研究開発のサイクル これだけ見ると, リーダーシップやコミュニケーション力等が抜けているため, かなり個人主義的に思われる方もいるだろう. しかし筆者は, このサイクルを回すためには, 上記のような個人の能力だけでなく, 仲間と共同する力が極めて重要であると考えている. 例えば, 研究・新製品の立案の段階でも, 革新的な計画を立案するには, ネットワーク力と相互協力が大切であるという指摘がある.[1] さらに,実験を通じて成果を出す過程においても仲間と協力した方が上手くいく場合も多い. 加えて, いざ事業化しようとするのであれば, リーダーシップやマネジメント力, 人間力など多岐の能力が問われることは言うまでもない. 以上の事から, このサイクルを回すのは極めて困難な事であり, 知識量があるだけでは到底新しい物を生み出すことができない事がわかる.
 今回のジャーナルでは, 学生の立場から社会人として生きていくうえで必要な力を考えてみた. 今回紹介したことは, 私の理想像であり, 仕事や環境によってあるべき姿も変わると思う. 若い世代にとって大切な事は, 自分自身のあるべき姿を考え, それに向かって能動的に行動することであると考えている. 次回のYOUNG CREW会議では, 若手世代が, 自己成長させるためにPMをどのように活用できるかをメンバーと一緒に考えていきたいと思う.

[1] 「イノベーションのDNA」(クレイトン・クリステンセン著, 翔泳社)

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