協会理事コーナー
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あるべきPM志向

富士電機(株) 堀江 理夫 [プロフィール] :8月号

 私自身にとって、案件規模の大小は別として、プロジェクトマネージャーなる仕事を初めて拝命したのが11年前であった。それ以前に、海外の建設現場での所長業務やPM代行のような仕事は多少は経験させてもらったし、98年頃にエン振協殿主催のPM講座も受講させていただいていたので、PM業務に初めて携わったときに、それまでの若干の経験、また講座で習ったことがいろいろな局面で役に立ったのを覚えている。
 しかし現在私自身社内での日常業務以外に、他の理事の皆様のように世の中で役に立つような活動や成果を挙げているかというと、社外の講演を数回した以外には殆どなく、ただ会社で日常業務に忙殺されつつ、PM業務も汗だくで継続している。
 ところで、2004-5年にPMRの第1期講座に参加する機会に恵まれ、楽しく受講させていただいた。PMR講座ではプロジェクトよりもプログラムマネジメントに重点を置いた感じの内容であり、私自身プログラムマネジメントはPMSを取得した際に座学で若干かじった程度の瑣末な知識しか持っていなかったが、命題に取り組み討議した内容は非常に新鮮で判り易かったのを覚えている。それ以来、プロジェクトマネジメントとプログラムネジメントを比較して考えるようになったのかなと思う。会社の仕事で言えば、プロジェクトマネージャーは結果・成果が明確なゴールでありそれに向かってしゃにむに邁進する力とその成果志向に基づく確固たる判断基準で活動することが最重要であり、有期限のタスクフォース活動の責任者であるのに対し、プログラムマネージャーはさまざまなターゲットやミッションを満足しつつ継続的に成功していく道筋を見つけなければならない点で、部長職・課長職といった組織の長のイメージに非常に近いと思う。それならばプロジェクトマネージャーとプログラムマネージャーの違いは何かというと、一概には言えないもののあくまで比較論で言えば、前者の方がより気が短い人向き(織田信長タイプ)で、後者はより忍耐力の要る仕事(豊臣秀吉プラス徳川家康タイプ)であろうと思う。
 それでは、そもそもPM(プロジェクトでもプログラムでも良いが)とはどういう知識や知見がなければならないか、といったことはさまざまな文献に出ているので割愛するが、PMがどういう志向であるべきか、といったことについて、私自身の過去の経験から独断と偏見で意見を述べる。私の価値観ではやはり、コミュニケーション・関係性維持力、全体バランス感覚、成功へのこだわり、といった要素(注:自分自身のことは完全に棚に挙げて述べている)、たとえば、「社内外・契約関係先キーパーソン間の関係性は?ケミストリーは?」、「顧客などステークホルダ達や会社幹部のExpectationをうまくマネージしながら遂行しているか」、「(特に海外案件で)さまざまなコミュニケーションの狭間でコンテキストを見誤らない最低限のセンスを持って対応しているか」、「環境や立場に変化が生じるたびにチャンスと捉えられる前向きさ、リセットして思考できる柔軟さを維持して対応できているか」、「どんな種類のissueでも問題であれば必ず自ら首突っ込んで解決しようとするバランス感覚・好奇心を維持しているか」、といった点がPM業にとって非常に重要と思う。こういった指標で自分を省み、叱り、それでもさらに悪戦苦闘しながらPM業を続けている毎日である。

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