理事長コーナー
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米国メディア王の世界観

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :7月号

 先月のこの欄で「米国の強さをメディアに見る」と題して、The Huffington Post について記載したところ、会員から日経新聞のカラム記事「大機小機」(2013年4月20日)を送付いただいた。お読みになった会員も多いと思うが、大変興味深く読ませていただいたので、要点を記載する。

 世界のメディア王、世界最大級のメディア・コングロマリット(売上高337億ドル、2012年6月)、米ニューズ・コーポレーションのルパート・マードックCEOが、現在の地球規模での国家、民族、宗教などの対立が激化し、経済・所得格差が拡大している現状をみて、「グローバライゼイションの進展が、国家間、国内の階層間格差をこれほど拡大するとは想像外であった。現在は多様化というよりも、民族、宗教、社会階層などの対立が深まり、バラバラで不安定な社会」と感想を述べた。

 さらに、金融危機以降の米国の所得格差に関しては、「所得上位2%が富の70%を所有している、高所得層は子供の教育に巨額の投資を行い、高所得・高学力を再生産している。しかし、中低所得層は公教育の劣化もあって貧困と低学力の再生産に陥り、大問題だ」と指摘する。

 「教育や社会格差の拡大は、興味や要求の異なる多くの人々を生み出す。メディア産業はどのような戦略で応えるのか」の問いに対して、「高所得・高学力層は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の社説よりも高度な分析や解説を要求している。一方、中低所得層は極端に刺激が強い娯楽や激しいスポーツを求めている。こうした要求にも応えるが、子供・若年層の教育番組の充実を図り、低所得・低学力の悪循環を断ち切ることもメディアの責任の一つだ」と真剣に語った。

 2005年にニュヨークタイムズ誌記者、トーマス・フリードマンは、「世界はフラット化する」の中で、地球規模で所得・情報が平準化し社会が安定すると論じたが、8年後の実世界は、深刻な格差拡大に向かっている。先進国と途上国、同じ国の中でも富める者とそうでない者の格差は、それぞれ内部で再生産され、更に拡大してきている。極端な格差拡大は、やがて社会を不安定にする。それだけでなく、マードック氏は、民族や宗教に触れている。例えば、米国に対するテロは、単に貧富の差の拡大の帰結ではなく、世界一富める国が、国境と無関係に移動できる宗教集団との戦いへと変化して来ている。国対国の戦争は、終結を探る仕組みがあるが、この新たな動きには対応する戦略もないように思える。

 一方、P2Mプログラムマネジメントにおける価値の最適化プロセスでは、価値の最大化は、外部環境からの「外乱」に対応した修正を加えることで実現される。言い換えると、適切なリスクマネジメントを行わなければならない。この不安定な社会における最大価値の追求は、平和の維持であると思う。P2Mでは、価値実現に向け、使命、ビジョン、戦略立案の重要性を述べている。更に、その元で戦略とリスクのマネジメントにより計画を策定し、その計画通りに確実に実施していくプログラムマネジャーが必要だが、マードック氏が描くプログラムマネジャーは、どの様なコンピテンシーを持つ人物なのか興味深い。

以 上

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