命のビザを繋いだ男 小辻節三とユダヤ難民
(山田純大著、NHK出版、2013年4月25日発行、第1刷、281ページ、1,700円+税)
デニマルさん: 7月号
今月紹介の本は、幾つかの偶然が重なって読むことになった。先ず読書好きな友人が、面白い本があるからと寄贈してくれた。だが、忙しさにかまけて目次だけ見てそのまま放置していた。所が、読書サークルでこの本を熱心に紹介された。更に、別な友人が「徹子の部屋」のテレビで紹介された話が面白いと態々DVDの録画を送ってくれた。早速、DVDを見て、皆が熱心に薦めてくれた本にヤット接したのだ。この偶然は、ナチスドイツの迫害からユダヤ難民を救ったストーリに重なる部分がある。第二次世界大戦が終わって60年以上も経つが、未だ戦争の爪痕が世界中に残っている。更に、この本からユダヤ難民と日本の意外な関係が解き明かされている。当時、ユダヤ難民を救った「日本のシンドラー」と称された杉原千畝(1900-1986年、外交官)は、有名である。杉原が発給したビザ(10日間の通過ビザ)は、6,000人と言われている。しかし、ビザを貰ったユダヤ難民のその後は、殆ど知られていない。実は、それを救った日本人を探し出して書いたのが、この本である。
小辻節三とは ―― ユダヤ難民を日本で救った人 ――
この本を読むまで小辻氏のことは、全く知らなかった。色々調べたが、氏のデータが殆どなく、日本のユダヤ人一覧に「アブラハム小辻(1899-1973) - 神学者・ユダヤ教研究者、のち改宗者」とある。他に、「ヘブライ語学者として有名な元青山学院教授の小辻博士も、ナチスに追われて横浜・神戸に上陸した多数のユダヤ人の身をかばい、救助したことで有名」とあるが、この本が一番詳しく書いてある。ユダヤ難民を救った人が、ここにも居た。
松岡洋右の知らざる一面 ―― 小辻節三と松岡洋右の接点 ――
松岡洋右といえば、第二次世界大戦前に日本が国際連盟脱退や日独伊三国同盟の締結等に出てくる外交官として知られている。この本にも紹介されているが、一時期南満州鉄道(満鉄)の総裁をしていた。その頃、ユダヤ難民を満州で救うべく小辻氏と接触があり、顧問を依頼している。その後、神戸でのユダヤ難民救済で官警から厳しく追及されている氏を、外務大臣の立場で密かに救った裏話を紹介している。
山田純大とは ―― 小辻節三を探し出した俳優 ――
著者は、俳優でNHKの連続テレビ小説「あぐり」でデビューし、水戸黄門(格さん役)等テレビ・映画で活躍している。中学時代からアメリカに留学し、大学では国際関係学部を卒業後、俳優になっている。学生時代から杉原千畝のビザを受けたユダヤ難民のその後に関心を持っていた。語学力を生かし、アメリカの知人・友人を訪ねて「小辻節三自伝」を探し出し、この本を書いている。最後に氏が眠るエルサレムまで取材し現況を纏めている。
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