東日本大震災に寄せて
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「リメンバー・ザ・東日本」

株式会社ピーエム・アラインメント 佐藤 義男 [プロフィール] :4月号

 3月10日、「310被災地視察ツアー」に参加しました。これは震災から2年経った沿岸部を辿るツアーで、主催は「ITで日本を元気に!」の佐々木代表です。参加の動機は、被害の現実と復興状況を見定めること、自分が支援できることを確認することです。
 9時に36人のメンバーが仙台駅集合し、石巻から名取市閖上、福島県南相馬市、飯舘村まで駆け足で回りました。私は初めての参加者であり、このフィールドワークの感想をレポートします。

 10時30分に石巻市門脇小学校着。校舎は津波による火災で半焼していました。グランドで少年野球の練習が行われていましたが、数が少ない気がしました。ここでは、NPO法人「にじいろクレヨン」が石巻市を拠点に、被災した子供たちのために活動を通じて心のケアを続けていました。校舎の隣の墓地では、お参りに来た家族が手を合わせていました。

写真1.石巻市門脇小学校
写真1.石巻市門脇小学校

 11時15分に東松島着、津波が突き抜けた住宅がポツリと残っていました。海に向かって見渡す限りの更地に春の嵐が吹き、土埃が舞っていました。
 12時30分名取市閖上地区着。ここはベットタウンで多くの住宅があった地区ですが、土台だけが残っていました。死者・行方不明者は1031人と聞きました。神社があった小高い場所では、残った人による3回忌が行われていました。復興は何処まで進んでいるのだろう。がれき処理は進んでいるようだが、復興住宅の整備はもどかしい。消えた町は何処に甦るのだろうか?それでも春は来る、東日本にも必ず来る、と信じたい。

写真2.がれき処理された名取市閖上地区
写真2.がれき処理された名取市閖上地区

 15時南相馬市相双地区着。原発事故で避難した子育て世帯を支援しているNPO法人「Bridge for Fukushima in 相馬地区」を訪問し、代表の加藤さんから話を聞きました。当初は支援物資を配布していたが、今はミネラルウオーター配布(週2回)、親子支援(イベント開催、遊び場開放)の活動を行っています。これらは、報道では伝わっていない現状です。
 16時15分南相馬市小高区到着。住民の久米さん(NPO法人浮船の里)から話を聞きました。海岸部に近い事務所予定の建物は原発から15KM地点で、窓ガラス(1.5Mの高さ)には津波の跡がくっきりと残っています。この地区は津波の被害と原発事故の影響により、住民が避難を余儀なくされています。ここは、昨年4月に警戒区域指定解除されました。しかし、久米さんは「水は出るが水道なし。戻りたい人は住民3000人のうち、1000人くらい」と言う。国はインフラ未整備では住めないと言うが、整備には何年もかかるようです。小高区の人は、全国に散り散り、移住しています。そして久米さんは「国は帰宅希望なら助成金出すと言うが、住めないし、辛い」と言う。国は住民帰還のための対応をスピードアップすべきと、思いました。
久米さんは、原発事故で避難した際に2マイクロシーベルト被爆したそうです。これまで私は、原発の超音波による検査システム開発と、検査作業に従事しました。私は7000マイクロシーベルト被爆しています。しかし、私たちは放射線作業者として国と会社で管理されていましたが、住民の久米さんは線量計を持参して自己管理しています。久米さんは「国から安全だと言われて生活し、被爆してやり切れない」と言う。私は原発の安全を確保するために働いたのに何でという思いと、寂しさが一杯でした。

 16時30分原発から10KM地点に到着。検問所では3人の警察官が警備していました。
来る途中で、小高の町はゴーストタウンとなっていました。これまで普通に生活していた人達は、何処にいるのだろうか?

写真3.警戒区域の小高駅付近は誰もいない
写真3.警戒区域の小高駅付近は誰もいない

写真4.ここより10KM警戒区域
写真4.ここより10KM警戒区域

 18時15分飯館村公民館に到着。辺りは真っ暗闇です。ここも住民が村外へ避難しておりゴーストタウンです。外気は零下0.5度ですが、家の明かりが無いので寒さはそれ以上に身に沁みます。参加者は無言のまま、帰路につきました。

 今回のフィールドワークで地元の人に復興状況を聞き、長期的視野にたった復興支援活動の必要を強く感じました。また、政府は地方行政との一致団結による取り組みにより、復興の道筋をつけねばならない、と思いました。
 一方、プロジェクトマネジメントを実践する者として、何らかの支援、協力ができないかと考えました。今後はリニューアル支援や産業の創出など、「災害復興に貢献するプロジェクトマネジメント」視点で関わるつもりです。

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