「北米でみたTPSとプログラムマネジメントの融合」
昨年10月にバンクーバー(カナダ)で開催されたPMIグローバル会議北米大会に参加しました。世界最大のPM大会に今年は2,200名の参加者が集まりました。(参考文献 1) そこで見たTPSを基とするリーンとプログラムマネジメントの融合とアジャイル開発から経営への展開を紹介して共通の考え方について考察します。
1.大学、企業とPMIの連携による拡張
MIT(マサチューセッツ工科大学)のLAI(Lean Advancement Initiative)は、1993年に設立され、TPSの考え方をまとめたリーン(Lean)を企業に適用するコンソーシアムです。MITのLAIがTPSを実践するボーイングやジーメンスと協力し、リーンの考え方(=TPS)とプロジェクトの上位のプログラムのマメジメントとシステムエンジニアリングを体系化して書籍化していました。(参考文献 2)
私は、この研究をベースとした1日セミナーに唯一の日本人として参加しました。最初のワークショップの課題は、プログラムマネジメントにおける大野耐一氏の7つのムダと提示された対策の有効性」でした。大野耐一氏が始めた生産方式が後にTPSに発展していきます。各国の参加者が7つのムダについて英語で議論し、実践的な事例を共有できました。また、対策への原則として、効率化、効果的、同時に、人間尊重を明示していました。
TPSに提示された7つのムダと人間尊重が国境を超えることを体感しました。
2.アジャイルから経営ビジョンまでの連携
アジャイルやPMOに関する複数の講座でアジャイルから経営ビジョンまでを連携させる有効性が提示され、”Big Picture”として体系化する研究が紹介されました。(参考文献 3)
ビジョンを実現する価値を定義し、ビジョンを実現する価値の流れを明確にします。価値の流れの中で必要となる価値部品をプログラムとして定義します。プログラムの中で必要な要件を定義し、要件を実現するためにアジャイル開発で実現していきます。アジャイルで順次実現する価値部品を組み立て複合した価値を提供していきます。
この中で、価値部品の発信と実現サイクルが異なる価値部品を同期させて価値実現をするための仕組みを“かんばん”として表現しています。工場での“かんばん”の仕組みを理解し、ビジョンの価値提供に適応しています。
ビジョンを実現する最上位のポートフォリオレベルでTPSを適用しています。
中間のプログラムレベルでは、前述のとおりTPSの考え方が適用できます。
現場のプロジェクトレベルのアジャイル開発はTPSをベースとしています。
現場のアジャイル開発から経営ビジョンの実現まで一貫した連携の中でTPSを拡張しています。
3.TPS=成功しようとする人の共通の考え方
私は、TPSとPMに関するセミナーを開発し、講師として8年間活動してきました。TPSとPMの本質的には同じであり、実践方法を場面に応じて表現してきました。
今回、北米で、現場レベルの実践から経営レベルのマネジメントまで連携させて体系化していることに強く共感しました。同時に、彼らがTPSをリーンとして徹底的に研究して本質的に理解していることがわかりました。
私は、北米でリーンとして研究や実践が進んでいることを知っていましたが、TPSは日本の文化に依存するため本質的理解は日本人以外には困難だとうと思い込んでいました。しかし、実態は、90年代から継続的に大学や企業が連携して研究と実践をし続けて本質的に理解していました。しかも、TPSは工場での生産方式だけでなく、経営システム、マネジメントシステムである本質を理解していました。さらに、経営者がマネジメントシステムとして企業全体に適用してい続けています。もちろん、全ての北米の企業が実践できている訳ではありません。
TPSは文化に依存する考え方ではなく、成功しようとする人の共通の考え方と仮定しました。
これからも、TPSとPMをグローバル視点で研究し、実践に貢献していきます。
以 上
<参考文献>
<小原 由紀夫プロフィール>
株式会社 富士通アドバンストエンジニアリング
SIサポート本部 シニア・プロフェッショナル
1983年富士通入社、出向、転籍を経て現職。20年間、日本の電機・自動車のグローバル企業の工場システム構築にベンダーのプロジェクトマネジャとして参画した。
2009 PMI Continuing Professional Education Provider of the Year Award を受賞した、米国ケイデンスマネジメント社認定講師としてグローバルPMメソッドを普及し、TPSのセミナーと実践支援をしている。PMP。PMAJ会員。PMI会員。
PMAJ-IT-SIG「TPSに学ぶPM-WG主査。
<主な発表>
PMシンポジウム2006~20012
ソフトウェアテストシンポジウム2010(JaSST2010) ベストスピーカ賞
PROMAC2010 [English]
第5回世界ソフトウェア品質会議 Best of Best[English] (Best of Best のNo.7参照)
「ITプロジェクトのためのなぜなぜ5回(階)」
IT-SIG,内容にご意見ある方、参加申し込みされたい方は こちらまでメールください。歓迎します。
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