P2M研究会
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信頼を勝ち取る方程式
‐ The trusted advisor ‐

イーストタスク(株) 渡部 寿春: 2月号

コンサルティングと言う職種がある。様々な分野で相談・助言に応じ情報提供することを生業とする仕事である。士業と言われる方々は、この役割を担うことが多い。一方でアウトソーシングと言う職種がある。代理業務である。これは、情報処理関連従事者を含め多くの職種がある。プロジェクトマネジメント(PM)の分野でも多くの方が働いている。建設業のように請負契約で行う場合は、アウトソーシングとは言わない。代理業務は、本来、社内人材で行う業務を、外部の専門家が代って行う業務である。一般的にコンサルティング業務と言う場合には、相談・助言・情報提供を行うアドバイザリーとアウトソーシングが混同されて使われること多いが、アドバイザリーとアウトソーシングでは、必要な能力やスキル、そしてクライアントが期待する内容も違う。アドバイザリーは、問題解決や意思決定の判断を支援することが役割であり、行為するのはクライアントである。PMやSEなどのアウトソーシングは、具体的な成果を出し、クライアントの承認を得る。この違いはあるにしても、共通したスキルが求められる。外部パートナーとして信頼を得ることだ。「信頼を勝ち取る方程式」(細谷 功、東洋経済)から興味を引かれた箇所を抜粋し、この要点を紹介したい。

  【信頼性を生み出す4つの構成要素】
1. 信憑性
  可能な限り真実を語る方法を見出す。
  他の人が嘘と解釈するような言動を避ける。
  単調ではなく抑揚をつけて話す。
  知らないことは、ストレートに知らないと言う。
  自分の経歴を知らせることは重要である。ただし、名刺の名前の後に資格の頭文字や認定資格を並べるといった愚かなことだけはしてはならない。
  良いところを見せようとしても意味がない。
2. 信頼性
  小さな具体的な約束を行い、守る。例)電話をする。月曜日までに草案を作成する。
  会議の前に参考資料を送り実質的な議論に集中できるようにする。
  議題だけでなく、明確な目標をもち、確実に目標が達成できるようにする。
  用語、スタイル、フォーマット、時間に関してクライアントの「フィット感」を踏襲。
  会議の前、クライアントと議題について検討する。
  スケジュールや約束の日程に変更があった場合は、極力早く知らせる。
  方法論、モデル、テクニックは手段としてとらえ、機能すれば使い、そうでなければ切り捨てる。その可否は、クライアントにとっての効果である。
3. 親密さ
  親密さの創造には勇気がいる。
  上級職の方は、誠実さを評価する。しかし、重視されるのは親密さである。
  あまりに急いで一線に近づきすぎていないか、あるいは押しつけがましくなっていないか確認する。
  自分の方から行動する。
4. 低レベルの自己志向性あるいは自分に対する注目
  クライアントの感じる脅威
    利己主義。
    自意識。
    知的に見せたい、物知りであるように見られたいという願望。
    自分の中で気になっている膨大なTo-Doリスト。
    一足飛びに解決したいと言う願望。
    クライアントを助けると言う願望を超えて「勝ちたい」と言う願望。
    正しく見られたいと言う願望。
    クライアントの話を自分たちの利益と関連づける傾向。
    クライアントの自分に対する発言を早く終わらせたいと言う願望。
    会話の空白を自分から埋める。
    賢く、頭の回転が速く、ウィットに富むと言った類に見られたいと言う願望。
    他のクライアントの名前をうっかりしゃべること。
  自己志向性の低さを示す方法
    クライアントに会話の空白を埋めさせる。
    問題の裏にあることをクライアントに尋ねること。
    権利が得られるまで回答を行わないこと。
    問題を定義することに集中し、解決法を推測しないこと。
    クライアントが性急な解決策の提案を勧めても自信をもって断ること。
    話を聞いている間に付加価値を出そうとしないで、「終わってから」そうできる能力があると信じること。
    アイディアに対する賞賛を望まない。

 信頼構築の重要性は、外部パートナーに限ったことではない。組織内部においても共同の仕事をする上で欠かすことは出来ないのだが、外部パートナーにおいては、クライアントが自由に選択可能であるため、ことさら重要度が高い。事業会社で高い能力を発揮することと、外部者としてサービスを提供することには、おのずと違いがある。プロジェクトのサービスモデルで成果を得るのはクライアントだからである。信頼を勝ち取る方程式で語られた、自己志向性の低さを維持することは、意識しないと能力と実績、成果が全てと勘違いしてしまう落とし穴である。サービスを提供する側、受ける側の両面で研鑽することが本当のプロフェッショナルを育てるのではないだろうか。
以上
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