PMプロの知恵コーナー
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PMSの資格は活用できるのか (No.2)

P2Mの普及と振興に日々頭を悩ましておられる協会と
PMSの有資格者でその活用にご苦労されている会員へ

西川 俊司 [プロフィール]  :12月号

 前回のコラムで、「戦略ゲームはニーズの掘り起こしのために使う」と説明したが、これは具体的にはどう言うことなのか、それを説明するところから今回の話を進めたいと思う。
ところで、皆さんは現在の企業が抱える最大の問題点はどこにあるとお考えでしょうか?小職が思うのは、企業のほとんどの人が「問題の存在には気づいているが、解決しようと思っても、解決の仕方が分からない。また、それだけでなく、解決のために掛かる労力を恐れるあまり、問題から目を背けてしまう」ということだ。しかも、やっかいなことに、この傾向は意外と次代を担う若者世代の人たちに多い。
そこで、こうした若者世代を対象にした研修、たとえば、中小企業なら後継者育成研修、大企業なら幹部職研修、そして大学なら経済学部向けに仮想企業でのインターシップ研修などの導入が求められる。そして、この場合のポイントは「現在の若者にいきなり難しい理論を振りかざしても、なかなか興味を持ってもらえない」ということである。そのため、楽しみながら、それでいて、自然に問題意識や挑戦意欲が触発されるような研修ツールが欲しいというのが、今回の戦略ゲームを制作する動機である。

「ゲームの構成を100%デジタル仕様に」
戦略ゲームが活躍する場が研修であるところから、まず、戦略ゲームの設計コンセプトを下記の4つのキーワードで表現できるようにした。
1.リアル
2.スピーディ
3.ロジカル
4.トレイサブル
これら4つの条件はいずれも研修の流れを維持するキーとなるものであり、逆にこの中のどれが欠けても、受講した者には不満が残ることになってしまう。たとえば、リアル感に乏しい構成では、ゲームが進むにつれて遊び感覚になって来るし、計画のインプットから結果のアウトプットまでに時間が掛かるようだと、そのうちに研修がダレテ来る。また、結果に論理性がないと、研修そのものが馬鹿らしくなって来てしまい、さらに、再現性が伴っていなければ、結果に疑問を持つようになり、研修にならないと言った具合である。
戦略ゲームではその構成を100%デジタル仕様にすることによって、この4つの条件を満たすようにしている。
また、戦略ゲームではこれまでのビジネスゲームのように途中でルーレットを廻したり、ダイスを転がしたりして無理にリスクを発生させたり、局面に変化を付けるようなことはしていない。と言うより、そもそもリスクを天災や偶然発生した災いという意味で捉えること自体がそもそも間違っているからである。戦略ゲームではリスクは全員に対して同じように発生すると前提しており、その発見から対応までのすべてを自己責任のもとで行う構成にしている。つまり、リスクを大火事にするのか、それとも「ボヤ」で留めるのかはすべて「あなた次第」ということになっている。
「見せることで、魅せるゲームに」
設計コンセプトの次に取り組んだことは、「如何にして受講生を研修の中に引き込むか」ということである。これがファミコンゲームならビジュアル系を充実することで誤魔化しも効くのだろうが、研修で使う頭脳100%のゲームではゲームの中味に工夫を入れるしか方法がないということだ。と言って、ルーレットやダイスをこの目的のために使うということは、これも一種の誤魔化しであり、とても認められるものではない。
この課題を解決するために戦略ゲームが採った方法が「見せることで、魅せるゲームに」するということである。 たとえで説明すると、いま世界でも有名なマジシャンが視聴者の目の前でマジックをしている光景を思い浮かべてほしい。そして、あるマジックをした後、何とそのマジシャンはその種明かしをするのである。大半の人が「このマジックの仕掛けは分かった」と思っているだけに、続けてマジシャンが出した同じマジックに対し、すべての人がマジシャンに誘導された答えに向かってしまうことになる。
つまり、種明かし自体が次のマジックのための「種」になっているのである。マジックで種明かしをすることがあまりないことだけに、視聴者がそれに魅せられてしまったということである。
戦略ゲームでもこれに似た工夫を入れている。しかし、単に受講生を魅了するためだけに見せるのではない。実は、その見せる部分のロジックが戦略ゲームの頭脳の中心になっているのである。そこが戦略ゲームの設計のユニークなところなのかも知れない。そして、多分これは特許性を持っているのではないかと考える。
次回のコラムではこれに関してもう少し踏み込んだ内容を披露したいと思う。

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