PMBOK研修部会
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「PM手法の普及に関して」

東洋エンジニアリング(株) 三浦 進 [プロフィール] :11月号

 PMBOK研修部会のPMP®受験対策講座の受講生は、残念なことに減少しているようである。
 これには、資格取得需要が一定レベルに達した、または、景気の問題と業界それぞれの事情があろう。しかし、PMは、IT業界をはじめとしてその他にも広がっていることは確かである。その為にPM資格取得者は増加したが、昔から語られているように、PM資格取得者は、PMの正しい実践手法を理解していることに対して与えられた資格であり、そのままでプロジェクトマネジャーが務まるとのことではない。現状のPM手法の普及を考える上では、企業がPMを実務に如何に導入しようとしたのか、根付いて来たのか、PM手法に対する取組、経営からの企業戦略、TOP Downは?と言った視点と合わせて考える必要がある。一方で、PMAJでは大学等(学)に対するPMの普及にも力をいれており、エンジニアリング協会(ENAA)では産学交流センターを設立し学を中心として国内外でPMの普及に取り組んでいる。このようにPMを学んだ学生達が企業で育ち、成功プロジェクトを多く生み出して行くようになれば、PMも事業運営でより浸透し一般化して行くようになるであろう。
 プロジェクトマネジメント(PM)は、使命・目的を持った有期の活動をプロジェクトと位置付け、適用可能な知識・技法を駆使し、制約条件の中で当該プロジェクトの要求事項を満たすもの。プロジェクトライフサイクルを捉え、Phaseのコンセプトを採用し、プロジェクト組織を組み立て、科学的にマネジメントして行くものである。PMは如何なる業種、事業にも適用可能で有効な手法であるとの考えに立ち、PMの普及を更に考えてみたい。
 PMがどのように組織内で実行されているかは、組織成熟度のレベルを見ることによって判断が可能である。以下はP2Mからの引用であるが見てみよう。自社はどのレベルに在るであろうか。

(引用;P2M P295-297)
 組織成熟度とは組織のプロジェクトマネジメント実施能力向上の過程を、プロセスの観点から段階的に表現したものである。
成熟度の低い組織ではプロジェクトが雑然と進められることが多く、本来急ぐはずの作業が遅れて後でもよいものが先に進んだり、必要な作業が抜け落ちる一方、不要な作業が必然性をもって行われたりする。このような状況ではプロジェクトが失敗する確率は非常に高い。それに比べ、成熟度の高い組織ではプロジェクトはスマートに遂行される。 必要な作業のみが計画的に実施され、プロジェクトの成功率は高い。
プロジェクトマネジメントの成熟度モデルには、ハロルド・カーズナーが提唱するPMMM(Project Management Maturity Model)などさまざまな観点からのものが存在するが、ここでは企業戦略とプロジェクトへの連携を重視した成熟度モデルを示す。(中略)このプロセスモデルにおいては、レベル1~5までの5段階に分けて成熟度を定義する。
レベル1:場当り的
 組織としてプロジェクトの認識が低く、場当たり的なプロジェクトマネジメントが実践されている。多大な労力が問題解決のための活動(いわば消火活動)に費やされ、プロジェクトの多くが失敗している。プロジェクトの成否は個人の能力に依存する。
レベル2:計画的
 問題発生予防の重要性が認識され、計画に力を入れはじめる。プロジェクトの成否は個人よりもチームの能力に依存するようになる。類似のプロジェクトは充分マネジメントできるが、経験のない新規のプロジェクトでは混乱しやすい。
レベル3:科学的
 科学的なマネジメントが行われ、プロジェクト状況はシステムにより可視化される。関係者は可視化されたデータ分析に基づいて行動するようになる。
レベル4:統合的
 複数のプロジェクトが組織の中で整然と実施され、混乱がなくなる。企業の持つマネジメントプロセスにしたがって、組織をまたがってプロジェクトがうまく運営され、プロジェクトと組織の調和が達成される。
レベル5:最適化
 プロジェクトのほとんどが成功し、品質、コスト、納期の全てに関して、業界においてトップクラスの競争力を保有するようになる。企業戦略とプロジェクトが確実に連携され、戦略的プロジェクトが効果的に運営されている。権限委譲も充分におこなわれ、スタッフは明確な目的に向かって高い士気を保ちプロジェクト活動に従事している。
(引用完)  注 ) 各レベルの詳細がP2Mではこの後に解説されている。

 PMを解り易く教えようとするときに、その事例として学園祭実行プロジェクトを取り上げることがある。実行委員会が通常は組織される。実行委員長がプロジェクトマネジャーとなり、企画・広報・運営とチーム作りが行われる。全体のスケジュール管理、予算管理、また、どのような問題が発生するか先を見越したリスクマネジメントも必要となる。PMを知らずともこれらは、上述の組織成熟レベルでレベル2(計画的)にあるのではと考えるが、PMの基礎知識(目標管理:課題・目的、成功の定義は? 資源マネジメント:人集め、担当と役割を明確にする。タイムマネジメント:何時までに何を進めるか? バーチャートのスケジュールを作る。計画、準備、実施とかPhaseを区切りそれぞれのPhaseで確認を行いながら前に進める。等々)を持っていれば更にプロジェクトを効果的に成功へ導くことが可能となるであろう。
 プロジェクトを実施するのは、プロジェクトマネジャーをリーダとしたチームメンバーの個々人であるが、PMに対する組織の文化(プロジェクト組織での企業運営等)を創り出すことと、組織の資産(実行計画書、管理システム等)を持つことによってプロジェクト運営の最適化を図ることが可能となる。これは企業組織の取り組みの問題であり、経営がそれを計画的に実行に移さなければなしえないことであろう。企業の経営者と従業員が、このような土壌と取組に同じ認識を持ち、プロジェクトをより「上手く」遂行することを共通の目標としたときに、PM資格取得者は、核となり得て、パフォーマンスを上げることが出来、波及効果が生じより広くPMが実施されることを可能とするであろう。
 マネジメントには種々の領域がある。PMとはこれらを統合しプロジェクトを成功に導くものである。まだまだ、PMの普及・資格者の増加に努力・貢献しなければならないと考える次第である。

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