図書紹介
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「置かれた場所で咲きなさい」
(渡辺和子著、幻冬舎、2012年8月10日発行、第17刷、159ページ、952円+税)

デニマルさん: 10月号

今回紹介の本には、多面的な話題性がある。先ず、初刷が今年4月で僅か4ヶ月間に17回も刷り増しされ、ベストセラー並みの売れ筋である。アマゾン・ランキングでは8位(9月20日現在)と発売以来100位以内の人気を今でも持続している。次なる話題は、2・26事件の凶弾に倒れた渡辺錠太郎教育総監が著者の父上である。その事件現場で父親が機関銃掃射されるのを目撃している。当時9歳であり、大きな衝撃を受けたという。その著者の経歴であるが、現在85歳でノートルダム清心学園理事長とある。それだけではない。36歳の若さで岡山県のノートルダム清心女子大学の学長に就任して以来、長年に亘り教壇に立っている。その学校教育への功労が称えられ岡山県文化賞や三木記念賞等数々の賞を受賞されている。また26冊(文庫本も含む)もの多くの著書を出されている。また著者は、マザー・テレサが1984年の来日時に通訳を務め、その時の逸話も紹介している。この本は最新のものだが、優しく諭されているような詩文ばかりで、滋味ある言葉に溢れている。

置かれた場所とは?   ―― 人はどんな境遇でも輝ける ――
この本の題名は、著者が学長に任命された頃に先輩から送られた詩文の一部から引用したという。著者が色々悩んでいる時期だったので心に深く残っていると書いている。原文は、“Bloom where God has planted you”で、神が植えた所で咲きなさいと直訳出来る。そしてこの詩文は、「咲くということは、仕方なく諦めることではなく、笑顔で生き、周囲の人々を幸せにすることです」と続いているという。どんな境遇でも人は輝ける素晴しさがある。

何を咲かせるか?  ―― 人それぞれに希望の花がある ――
著者は、この本に多くの言葉を書き綴っている。どう自分と対峙するか、未来に向かってどう生きるか、老いをどう受け止めるか、愛と死について等々、それぞれ心に響く優しさと温かさを感じる。だから何回もページを括り読み返し、自分の心に問いかけられる。「希望には、叶わないものもあるが、大切なのは、希望を持ち続けること」と、明日に向かって生きる力の原点を説いている。心の支えがあれば、どんなことでも成し遂げる力となる。

どのように咲くか?  ―― 咲けなくても下へ根をのばす ――
冒頭、著者と父上の件を書いた。日本史にも残る大事件に遭遇し、父親を目の前で失った。この衝撃にもかかわらずこの本で、「父と過ごした9年、その短い間に一生涯分の愛情を受けた」と書いている。更に、「大切なことは、人のために進んで何かをすること」と結んでいる。この受け止め方は、どこからくるのであろうか。著者は、神を信じ、人を信ずる心の広さと深さがある。たとえ花が咲かなくても、希望を失わず諦めない心を持ち続けたい。

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