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リスクには事業リスクとプロジェクトリスクがあります。事業に関するリスクは当然事業者が支払うものです。プロジェクト受注者の不備によるリスクだけ受注者が支払うことになります。契約とはこれらのことを明確にして仕事を始めることを意味し、契約なしに仕事をすることは非常に危険です。契約の不備は赤字のプロジェクトの要因となります。また、リスクの高い仕事は②実費償還型契約で実施することを交渉しましょう。 |
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実費償還型契約
実費償還型契約はある条件下で、消費される費用のすべてを発注者が負担するという契約です。通常研究開発プロジェクトや新しい先の見えないプロジェクトで採用されています。この場合当然のことながら、リスクも顧客が支払うことになります。 |
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単価契約
単価契約は土木・建築分野ではよく使われている方式で、コンクリート単価/m3など、単位量当たりの単価をきめ、金額は施工した量で決める方式です。
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欧米型契約方式と日本型契約方式の相違と留意点
一般に米国では②の実費償還型契約が多く、日本は定額請負型が多いという特徴があります。これらはその国の商習慣に由来します。
図2は日本型契約方式とその由来。欧米型契約方式とその由来を示したものです。
欧米型契約はキリスト教から来ています。発注者と受注者は神の前で契約し、両者の立場は対等です。理由は「発注者は発注者でしかできない業務があり、その権限と責任を発注者は守る必要があり、同様に受注者は受注者にしかできない業務があり、その権限と責任を果す必要がある」ことを両者が認識しているから、対等を理解しています。
ここで米国社会が実費償還型契約を多く採用されているのは2つの理由があります。第一は研究や新しい事業を展開するケースが多く、定額請負型契約が難しいこと。第二がリスクマネジメントの費用です。未知のものに対するリスクは当然発注者が負うべき性格のものであることを理解しています。もし受注者にリスク込みで請負わせると、受注者は過大なリスク計算し、見積もりに加算するので、定額請負型契約は発注社に不利だと考えています。更に付け加えると、米国はロイヤーが数多くおり、受注者は競争入札に際して安く見積りするが、受注後ロイヤーは顧客の仕様書の不備を徹底的に探し、追加請求するため、定額請負型は危険だと考えています。米国企業のWin/Winの発想は発注者が受注者に対し、追加請求をある程度で勘弁してよという意味合いであるとうジョークを聞きました。
日本型の契約は通常甲・乙の関係になっています。乙は甲に迷惑をかけないことが前提で、細部の仕様を省略し、一般約款として取り扱っています。ここでの大きな約束事は「問題が発生した場合、双方誠意をもって解決する」が基本となっています。しかし問題が発生すると当然甲は「君達の誠意とは何かね」と最初に譲歩をせまります。甲が負けたのでは様にならないからです。簡単にいえば「我々は長い付き合いを望んでいるのだよな」という発想です。
では何故このような契約方式ができたのか考えてみました。明治になり西洋のビジネス方式を学ぶ必要に迫られました。このときカネがあり、力があったのは官でした。国は外人を招聘するか、有能な人材を留学させ、帰国後は官として指導し、多くの国策会社を育ててきました。契約は先生が甲で、生徒は乙でした。甲・乙の関係で乙が潤ってきました。「問題が発生したら双方誠意をもって解決する」という文言は、お前達俺たちの顔をつぶすなよ、お前達の会社を潰すようなことはしないから安心せよ」というものだと理解しました。
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