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家庭菜園の話

三機工業株式会社 ファシリティシステム事業部 山口 理: [プロフィール] :6月号

 私は千葉県北西部に住んでいます。
3年ほど前に亡くなった義父の跡を継ぎ、10坪ほどの家庭菜園を耕しています はじめの頃は何を作ってもうまくいかず、しばらく畑に行かずにいると草ボーボーになっており、ご近所の迷惑になってはと思い一生懸命草むしりをすることの繰り返しでした。
 そのうちにご近所のお年寄りや会社OBの方々が声を掛けてくださるようになり、苗をいただいたり、ちょっとしたコツも教えてもらえるようになりました。いきつけの床屋も畑マニアで散髪の間、畑の話をしたり、帰りには彼の菜園で取れた種などを持たせてくれます。サラリーマンとして自宅と会社の往復の毎日で、地元とのお付き合いがほとんど無い中、菜園を始めてから地元の皆さんとのお付き合いが生まれ、人生に幅ができ生活にもはりが出てきたなと思っておりました。
 このようにして地元とのお付き合いも深まり、苦しくも楽しい農作業をしていたのですが、この大切な地元ライフを大きく一変させたのが昨年3.11の大震災でした。私の住んでいる地区は震度も大きく、瓦屋根の家など軒並み瓦が飛んでしまい、今でもブルーシートに覆われた家を随分見かけます。
震災後はちょうど春の作付け時期で、みんなで畑を耕しながら「今度の地震は大変だったね」などと話をしていたのですが、まさか自分たちの畑にこの地震が形を変えて影響するとは夢にも思っていませんでした。
作付け作業が終わってしばらくして、近辺の農家が収穫した葉物野菜から放射能が検出されたと、頻繁に報道されるようになったのです。我が家の隣の畑のおじさんが収穫したばかりのホウレンソウを「誰も貰い手がいない」と言うので、「我が家は年寄りだけだから」ともらって帰ったりもしました。
私たちは貸し農園ですし放射能の値を測った訳でもないのですが、周りの雰囲気としてこのまま菜園を続けて良いものかどうか迷っている人たちがいるのも事実でした。私もこの後畑をどうしようかと迷いましたが、折角ここまで続けてきたものを放り出すのも悔しく、また我が家は夫婦2人と義母の3人暮らしで若い人がいないこともあり、放射能の影響もそう真剣には考えることもあるまいと継続することにしました。けれども被害は畑だけにとどまらず、山の中も同じ状況で、しいたけなどにも影響が出ていますし、最近になって春のたけのこにも影響が出ています。一体いつまでこの影響は続くのでしょうか?
 原発事故の被害を直接的に受け、避難されている皆様とは比較にはなりませんが、遠く離れて住んでいる私たちの間にもその影響はジワジワ広がってきている感じがします。
 原子力のみならず遺伝子操作技術等今までは想像すらできなかった技術により、エネルギーの供給や作物の生産等の飛躍的な向上が図られている現在、人類・社会にとって本当に役に立つ技術とはどういうものなのでしょう?
私も企業人としてまた一技術者として、これからの私たちが目指すべく方向と重視すべき価値とはどういったものなのか考えさせられる昨今です。
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