投稿コーナー
先号   次号

ITプロジェクトにおける人間関係・マネジメントの一考察

河合 一夫 [プロフィール]
 Email: こちら :3月号

 筆者は、現在某企業の情報システム部門で基幹システム再構築プロジェクトの責任者をしています。プロジェクトのQCDを達成するために品質管理、コスト・コントロール、スケジュール・コントロールの各マネジメントを実施しますが、実際には人間関係をマネジメントすることが重要であると常々考えています。多くのプロジェクトマネージャにとって人間関係をマネジメントすることに最も腐心しているのではないかと想像しています。また、多くの人が人間関係に悩みを持ち日々を過ごしているように思います。そこで本連載では、具体的な事例を考えながらプロジェクトにおける人間関係・マネジメントについて考えてみたいと思います。
 プロジェクトおける人間関係には、リーダとメンバ(上司と部下)、発注側と受注側といった関係があります。そういった関係の定義は、役割と責務によると思います。リーダはリーダーシップの下で各メンバにタスクを取り組ませ、目標に導きます。そこには明確な役割と責務があります。PMBOKでは、人間関係スキルとして以下のスキルが重要だとしています。
リーダーシップ
チーム形成活動
動機付け
コミュニケーション
影響力
意思決定
政治的風土と文化に対する認識
交渉
 しかし、現実の人間関係は、あの人とは反りが合わないとか馬が合わないと言ったり、どうも苦手だと言ったりする不可解な関係の方がプロジェクトの運営に大きな影響を及ぼします。役割と責務の定義だけでは、プロジェクトにおける人間関係を理解することはできません。PMBOKで定義している人間関係スキルは確かに重要であり、知識として知っておかねばならないことだと思います。しかし、現実のプロジェクトでは、これら以外に利害から生ずる人間関係や気性の違いから生ずる人間関係の方がプロジェクトの運営に大きな影響を及ぼします。これはプロ野球の監督やコーチの選手起用とチームの成績を考えると理解できるように思います。ある監督の下では、起用されなかった選手が監督の交代でレギュラーポジションを得て活躍し、それに伴いチームが良い成績をあげることは良く見受けられることです。また、その逆もあります。
 ITプロジェクトでは「個人の生産性やスキルの差」がプロジェクトのQCDに大きな影響を及ぼすことに特徴があります。個人の持つパフォーマンスを引き出す環境を作ることが重要でなり、人間関係をマネジメントすることが非常に大切になります。本連載では、ITプロジェクトにおける具体的な人間関係を考えることで、ITプロジェクトのプロジェクト・マネジメントにおける人間関係・マネジメントを考えたいと思います。次号では、人の気質と人間関係について考えたいと思います。
ページトップに戻る