P2M研究会
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P2M研究会の若返りと過去の実績

渡辺 貢成:10月号

1. PMAJ P2M研究会の発足
PMAJは資格制度でPMS資格者を取られた方々が数多くいます。この中から実務経験多く、実力のある方がPMR資格試験に挑戦し、PMR資格を獲得しています。
PMAJはPMR資格者からの要望で、同窓会的なものをつくりました。しかし、PMR資格者は実力の持ち主であるため、直ぐに実務が多忙になり同窓会も継続できなくなりました。そこでPMRの方々にオンラインジャーナルに輪番制でエッセイを書いてもらいました。一回りいたしますと、これも長続きできないことになり、PMR人材活性化のための方策として、P2M研究会を立ち上げ、PMRの方々の実務でお役に立つ研究を進めようという発想で、P2M研究会を立ち上げました。

関西地区、名古屋地区でも研究会を始めておりましたので、全国ベースのP2M研究会の立ち上げを企画しました。それは地方でPMSを取られた方々への協会からのサービスが行き届かなかった面をカバーする目的でした。
平成16年に東京P2M研究会、関西P2M研究会が正式に発足しました。
2年後に中部P2M研究会が発足しました。その後は九州P2M研究会、中国、四国P2M研究会、北海道、東北と研究会の下地つくりを行いました。最後の沖縄は沖縄県がPMS資格者育成に力を入れ、多くの資格者を誕生させました。そこで沖縄では研究会をつくり、沖縄でPMS講座の講師つくりから始めました。

2.研究会地区代表の若返り
2.1 関西P2M研究会
非常に活発な活動をしてきました。メンバーが40名を超えて、実業務にも成果を上げています。関西の方々は東京と違い、大変熱心で、研究会そのものに熱気があります。メンバーが多いため、1テーマに10人以上が議論しながら進められる利点があります。熱意は成果となって現れ、関西で独自にPMシンポを2年に1度実施できる実力をつけるまでに成長しました。
この関西P2M研究会をここまで育てたのが小石原代表です。一昨年代表を海蔵さんに譲られ、後継の海蔵さんは立派な後継者として、現在研究会を盛り上げています。

ここで小石原さんについてのエピソードをご紹介します。関西P2M研究会は発足当時、NHKが「プロジェクトX」を取り上げていました。内容は周囲の反対、無視を乗り越えて成功させたプロジェクトを「プロジェクトX」として人々に感動を与える番組でした。関西P2Mはこの「プロジェクトX」のリーダー像を研究のテーマとして取り上げました。
たまたま、この時期にNHKは「ドーバー海峡トンネル工事」をプロジェクトXとして取り上げました。小石原さんは当時困難に直面していた本工事の進展を図るために、現地工事の責任者としてKHIから派遣されました。小石原さんはそれ以前に南ア連邦で、同社の鉄鋼プラント建設を成功裏に終了させました。ところが運転開始直前のテスト中にミスで出火し、電気配線を焼失してしまいました。この難局を顧客に交渉し、顧客が所有する電線を拝借し、顧客のご協力を得て、短期間で復旧作業を終わらせ、顧客から大きな評価を受けた実績の持ち主です。
ドーバー海峡トンネル建設プロジェクトはフランスでのターンキープロジェクトとして異常な短納期でかつ膨大な欧州調達の遂行がプロジェクト成功のキーを握っていました。そのためフランス人の高級スタッフの支援が是非とも必要と判断し、顧客より派遣されていたフランス人監督をヘッドハントした。彼の献身的な数々の貢献にも助けられ幾多の難題を克服してプロジェクトは大成功を収めました。
この実績から見てP2M研究会のメンバーは小石原さんがプロジェクトXのヒーローとしてNHKに登場すると思っていましたが、選ばれたのは掘削機開発のメンバーでした。
NHKが求めたプロジェクトXはものつくり日本の代表選手に脚光を浴びせたかったのでしょう。インタンジブル(手に触って理解できないもの)には関心がなかったようです。私達は 「プロジェクトX」の実体を知りました。プロジェクトを実行し、苦労して成果を出したことに価値をおいており、プロジェクトマネジメント(PM)をうまく遂行した人を対象としていなかったことです。そこで私達は小石原さんに「プロジェクトマネジメントX賞」を差し上げました。
小石原さんは今度の大震災後、南ア、ドーバーその他海外の関係者から多くのお見舞いのレターが届くほど評価されています。

2.2 東京P2M研究会
  1) ミッション・プロファイリング研究の成果
東京P2M研究会はこれまでミッション・プロファイリングを主に、できるだけ実践事例を提供することを心がけてきました。PMCC時代に小原委員会でミッション・プロファイリングの洞察力モデル、経営を俯瞰するモデルを開発しました。経営を診断する方法は従来から財務的結果から何をするべきかを考えていました。私達は経営とは価値をつくる能力ト定義し、「創られた価値」と「価値を創る源泉」を正しく理解することで、経営評価、課題対策を講じる手法を作ったわけです。8つの視点と、各視点には競争力の強さを表す、サブ視点(コンポーネント)が明示されているので、現状の自社の競争力がわかる工夫が施されています。この手法を活用して新しいBM(ビジネスモデル)を構築することができます。これを実践的に活用したメンバーも出てきました。

最近は社会の変化がさらに速くなり、種々のBMが出現するようになり、昨年にはBMG(ビジネス・モデル・ジェネレーション)という本が出版されました。これを読みますと、BMは9つの視点の組み合わせで創られるという内容の本です。P2Mの8つの視点とBMGの9つの視点を比較してみますと下記に示すようにほとんど一致している」ことがわかりました。
P2M的視点 BMG的視点
0.経営力(含む財務力)―――――――― 収入源
Ⅰ.顧客関係性構築力――――――――――― 顧客関係性
Ⅱ.販売開発力―――――――――――――― チャンネリング
Ⅲ.マーケッティング開発力―――――――――――― 顧客選別
Ⅳ.商品・サービス提供力――――――――――― 価値提供
Ⅴ.研究開発力  
Ⅵ.経営資源蓄積力―――――――――――――
    (含む外部資源)―――――――――――――
主要資源
パートナー
Ⅶ.業務プロセス活性化力―――――――――――― 主要業務
Ⅷ.組織の市場変化対応力―――――――――― コスト構築力

P2Mはグローバルスタンダードとしての広がりが弱いが、BMGの広がりで、これらの手法を利用する人々が増えることを願っています。

  2) メンバーの成果
メンバーは個人的に、自社内でP2Mを採用し、成果を上げる方々が多く出てきました。また、参加者から問題提起が出ると、メンバーによるワークショップを行い、新しい発想を提供してきました。これらの成果を毎年成果報告書として発行し、公表しています。
この研究会の中から、中食(弁当製造など)の新しいBM(ビジネスモデル)、災害防止、復興のためのNPOを立ち上げたメンバー、ビル建設だけだったゼネコンが大手製薬会社の研究所建設の中身まで加味したゼネラルマネジャーの誕生、グローバルインフラへのプロデューサー役への進出と従来にない仕事を始めています。

  3) 代表者の若返り
東京研究会は代表の交代をお願いして準備していましたが、若手が相談して、今独自の運営方式を考えています。彼らは大震災後P2Mを活用して、復興計画を提案してくれました。情報技術を活用することで、無限の可能性が生まれることを示してくれました。
近々運営計画が発表されます。
会員で興味のある方々は東京P2M研究会へ参加していただき、新しい皆さん方の活躍の場を見つけてください。

以上
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