PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(41)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :8月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

 PMの専門分野では極めて珍しい「エンタテイメント論」の連載は、2008年3月24日を第1号として開始され、今月号で41回となりました。これは、当時のPMAJオンライン編集長・渡辺貢成様からのご要請に基づき、PMAJ理事長・田中 弘様並びに事務局長・高橋道夫様のご支援で開始されたものです。改めて御礼申し上げます。

 さて田中 弘様は、本年6月末日、PMAJ理事長をご退任されました。同氏のPMAJの創設とその後の発展にご尽力されたご功績は、幾ら高く評しても、評し切れません。本当に長い間、ご苦労様でした。ありがとうございました。今後は顧問として引き続きPMAJの発展にご尽力なさると伺いました。嬉しい限りでございます。倍旧のご指導とご協力をお願い申し上げます。

 またPMAJ会長には西尾清光様が、PMAJ理事長には光藤昭男様がそれぞれご就任されました。おめでとうございます。PMAJのより一層の発展を先導され、新しいPM活動分野の開拓等にご尽力なさると伺っております。どうか宜しくお願い申し上げます。


1 原点に戻って
●第1部の終結
 筆者は、第1部「エンタテイメント論の概要」として映画、音楽、カラオケ、テーマパーク、遊園地、オリンピック、ゴルフ、TV放送など様々な種類や形態のエンタテイメントを議論し、それを支える業界の実態を紙面の許す範囲で概説してきた。

 上記の他に歌舞伎、寄席、一般演劇、ミュージカル、オペラ、マジック・ショー、ダンスショー、ストリート・パフォーマンス、ゲーム、アニメ、ギャンブル、美術鑑賞、博物観賞、遺跡・歴史探索、国内観光旅行、海外観光旅行など議論すべき各種・各業態のエンタテイメントがまだまだ数多く存在する。

 しかしそれらのテーマを基に議論を進める従来の仕方を思い切って今月号で終了し、必要な都度それを取り上げることにして、第2部「エンタテイメント論の本質」に一気に議論を進めることにした。読者の了解を得たい。

●発想法的展開
 第2部に議論を進めるに際し、2008年の本連載開始時、どの様な「連載の展開方法」であったか、どの様な「連載の内容」を考えていたかを振り返ってみたい。

 「展開方法」としては3つ指摘した。第1は、「エンタテイメント」を厳密に定義し、それに基づいて本論を議論するという所謂「演繹法的展開」、第2は、様々な事象の中から「エンタテイメント」の定義に該当するものを抽出し、それに基づいて本論を議論するという所謂「帰納法的展開」、第3は、この演繹法と帰納法をその都度繰り返す所謂「発想法的展開」である。

 第1の方法は、定義とその展開が明快であるが、大学教授の古典的授業の様でちっとも面白くない。第2の方法は、様々な事象に基づいて具体的に議論するので面白い。しかし議論が散漫になる。以上のことから第3の方法で展開することにした。

●連載の内容
 2008年の連載開始時点で考えていた「エンタテイメント論」の連載内容は以下の通りである。
日本人の趣味、道楽への取り組み
 古典的趣味や道楽、現在的趣味や道楽
日本のエンタテイメントの実態
 エンタテイメント受益者の都市生活者と地方生活者、エンタテイメント・ビジネスの従事者
諸外国のエンタテイメントの実態
 米国を中心のエンタテイメント、アジア諸国が中心のエンタテイメント
エンタテイメントの本質
 エンタテイメントと遊びとの関係、エンタテイメントの本質、その実態、問題など、遊びの本質、日本の遊びの実態、日本人の「遊び」への心理

日本のエンタテイメントの問題
 日本のエンタテイメント受益者の「マズロー法則」の下位構造の欲求、買い物して、飲んで、食べて、しゃっべって、「アレ」して、、、、ばかりの楽しみ。真のエンタテイメントへの追求不足、真の遊びへの追求の欠如
日本人のエンタテイメントへの軽視、軽蔑、蔑視の深層心理
 日本古来の深層心理か? 明治維新後の思想、西洋崇拝
日本のアニメ業界の実態と問題
 Japan is coolの陰にある問題、3Kどころか、もっと酷いアニメ業界、米国資本と日本資本の戦い
日本のエンタテイナーの不足
 真のエンタテイナーの不足の原因、日本の観客のエンタテイメントへの要求レベル(アーティストやエンタテイナーを見抜く目)、日本の映画、TV、演劇、音楽などの分野でのフロントのエンタテイナー、バックヤード人材
エンタテイメントの効用
 エンタテイメントは、あらゆる商品開発、製品開発、事業開発に必要な要素、あらゆる科学、工学、事業に必要な要素
エンタテイメントの法則
 創造開発とエンタテイメント、エンタテイメントのF機能とR機能
エンタテイメントの文化論
 科学、工学、事業 & 文化(エンタテイメント、遊び、芸術の連続性、夢工学の主張する「黄金の三角ピラミッド」
日本の大学のエンタテイメント学科の不在
 日本の大学の「ホスピタリティー学科」の存在、日本の大学の「遊ぶ学科」の不在、日本の大学の「エンタテイメント学科」の不在
日本のアート・ビジネスやエンタテイメント・ビジネスの発展
 日本から世界への発展、世界から日本への発展
これからのエンタテイメントの在り方
 プロの世界、素人の世界

●第2部の開始
 第2部は、第1部と同様、「発想法的展開」を採択し、自由で、楽しく、エンタテイメント的に議論を進めた方が面白いと結論付けた。しかし「連載の内容」は、各種・各業態のエンタテイメントをテーマとする議論でなく、「特定のテーマ」を取り上げて、それをエンタテイメント論の観点から議論する方がより深化した議論になると結論付けた。併せて読者の了承を得たい。

 「特定のテーマ」とは、例えば、その時の「明るい話題」、「暗い話題」、「左脳的思考と右脳的思考」、「遊びと仕事」、「笑いと怒り」、「創造性と非創造性」、「本物の経営者と偽物の経営者」、「科学・工学・事業・芸術」などである。

 ついては、次号の「特定のテーマ」は、「明るい話題」としたい。それは、東日本大震災で沈み込んでいた日本人を元気付けたサッカー「なでしこジャパン」の2011年サッカー女子ワールドカップの優勝 である。それを「エンタテイメント論」の観点から議論する予定である。

 おめでとう、「なでしこジャパン」、ありがとう、「なでしこメンバー」

出典:2011年サッカー女子ワールドカップ・なでしこジャパン優勝 日本サッカー協会HP
出典:2011年サッカー女子ワールドカップ・
なでしこジャパン優勝 日本サッカー協会HP

つづく
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