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「個の力を強化し迅速な意思決定と生産性向上を図る」

ITSDコンサルティング株式会社代表取締役 久保 昭: [プロフィール] :7月号

 弊社は、2006年に創業しましたが、仕事を始めたきっかけは、ITプロジェクト運営に対する危機感です。景気低迷の中、グローバル化も含めた社会環境の変化は、ITプロジェクト運営にも少なからず影響を与えており、プロジェクト運営そのものがより難しさを増してきています。コスト削減方針、短納期、要求されるシステムの複雑さや多様化、最新技術の利用と製品の短命化、組織の壁など多くの制約の中、組織のリスクを避け失敗を防止するためや機密情報漏洩防止のため等、プロセス標準化や情報保護の対策・仕組み等がプロジェクトに導入されています。それでも相変わらず失敗プロジェクトの発生が後を絶たず、情報漏洩等のニュースも聞こえてきます。管理の強化も必要ですが、あるべき論で実態に合わない枠組みで導入されるとまた弊害も大きくなっています。
今ITプロジェクト現場でどのようなことが起きているかというと、実態に合わない標準的な管理方法の導入により、多くの時間とコストの無駄づかいが生じており、またスピードを持った対応が出来ないプロジェクトが多く存在するという事実です。
プロジェクトは、ユニークで不確実性が高く、挑戦的な目標があり、参加しているステークホルダーにとっても高い生産性が求められます。そのため問題が発生しないように標準化されたプロセスや規定に準拠することを求められますが、ユニークさ故に、枠組み通りには行きません。枠から逸脱した場合にどう捌くかのマネジメント・スキルが現場で求められています。最近発生したトンネル内列車炎上事故時の対応などは、マニュアル化の重大な問題を示唆しています。
最近はプロジェクトへの参画形態も変化しており、マネジャー、リーダー、メンバーという大人数での参加ではなく、1人~数名のスペシャリストが様々な業種・業態のプロジェクトへ参加し、異なって組織文化の方と共同でプロジェクトを推進することが多くなっています。またマネジャー自身が多くの問題を抱えその対応に追われ、メンバーの指導・育成の時間も取れない状況も発生しています。このような場合には、OJTも上手く機能しないので、今まで以上にメンバー一人一人の個の力を強化することが必要になっています。
人材育成の視点でも、従来型のマネジャーやリーダーを対象としたマネジメント・スキル習得方法では、現状にフィットしません。制約が多く異文化コミュニケーションが必要なプロジェクトを推進するには、専門技術スキル強化と併せて、ITエンジニアを対象にプロジェクト・マネジメント・スキルの強化を図ることが効果的な方法です。社会現象となっていますが、高校野球の女子マネジャーがドラッカーの「マネジメント」を学ぶ時代です。
ものづくり日本の国際経済力を高めるために、今求められるプロジェクト運営とは、組織の壁を作って保身に走るのでなく、リスクを共有することにより信頼関係を維持し、意思決定を迅速に行なって、プロジェクトをより生産的な活動へと舵を切ることだと考えます。
弊社では、このような視点で、ITエンジニアのプロジェクト実践力の更なる強化とプロフェッショナルな人材の早期育成のため、全力で取り組んで参ります。
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