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「エンタテイメント論」(39)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :6月号

エンタテイメント論


第1部 エンタテイメント論の概要

15 TV放送とTV放送産業の実態
●本テーマ(15)の終了
 日本の放送法では、TV番組は、報道、娯楽、教養、教育、その他に分類され、視聴率調査では、報道、教育、教養、実用、映画、音楽、ドラマ、アニメ、スポーツ、その他と分類されている。筆者は、この中のいくつかの番組をエンタテイメントの見地から論述し、併せてTV放送産業の実態を紹介した。

 エンタテイメント論として論述すべきテーマは、まだまだ存在する。そのため「TV放送とTV放送産業」は、来月号をもって終わりとしたい。その後、新たな事実や論述の必要が生じた場合は、本テーマを再度取り上げることとして先に進ませて欲しい。

 さて本テーマを終わらせるにあたり、「TV番組」の企画~制作~放送で何が最も重要なコトか? また様々な「TV番組」の中でエンタテイメント性が最も高い「TVドラマ」で何が最も重要なコトか? 以下で紙面の許す限り述べたい。

●TV番組に要求される「真実」
 報道、教育、教養、実用、映画、音楽、ドラマ、アニメ、スポーツなどの様々なTV番組の企画~制作~放送に於いて、すべてに共通する最も重要なコトは何か? 簡単には答えられない。何故ならTV番組は、以下の様々な観点から企画され、制作され、放送されているからである。

 その観点には、例えば「立場」がある。番組の制作者の立場、番組のスポンサー(NHKの場合は加入者)の立場、放送局の立場、放送局を管理する国の立場、そして番組を見る視聴者の立場である。更に「特性」がある。社会性、道徳性、文化性、教育性、娯楽性、経済性、情報性、国際性、時代性などの角度から企画され、制作され、放送されている。これら立場や特性などを縷々説明した上で、共通する最も重要なコトは何かを述べるべきだろう。

 しかし紙面の制約があるので、結論のみ述べる。それは「真実」ではないかと考えている。「本物」、「実態」、「事実」などの言葉で表現もされるものである。しかし何に基づいて「真実」と立証できるか? これまた簡単には答えられない。例えばTV番組の筆頭である「報道」について「真実」を論じてみるとその難しさが分かるだろう。「真実」の反対に存在するのが「非真実」であり、「ウソ」、「偽装」、「欺瞞」などである。視聴者は、報道に「真実」を期待する。その期待を裏切る一つが「偏向報道」である。

●偏向報道
偏向報道とは、ある事に意見が対立する場合、ある立場から肯定又は否定する意図で直接的又は間接的に情報操作を行う報道のことをいう。政治、経済、社会問題、犯罪事件、芸能などのメディア報道、特に影響力が強いテレビ報道で問題となる場合が多いテーマである。

偏向報道は,報道の信頼性を低下させる元凶である。そして世論操作を可能とし、政治や経済や倫理などに悪影響を与える。最悪の場合は、社会を変容させる。太平洋戦争時の「言論統制」と軍のメディア・コントロールによる国民の玉砕覚悟の戦いがその好例である。

現在は、インターネット上で反社会性のある情報、全く根拠なき情報、信憑性なき情報などが氾濫している。その中に偏向報道と近似した情報操作がなされ、鵜呑みにされ、影響された人物がかなり存在する。しかも情報操作された人物や間違った認識を与えられた人物が時に計画的に又は衝動的に反社会的行動を起す。恐ろしい時代に我々は生きている。

●真実追及のための「Pros & Cons」
 それが真実であるコトを、何をもって立証するのか? 真実は、実存するとしても報道でどの様に伝えるのか。TV報道に限らず、新聞報道、ラジオ報道などマスメディア報道でこれが「真実」であるコトを伝えることは難しい。また視聴者側は、最初から視聴者を騙す「ヤラセ報道」は別として、真面目な報道、真剣な主張、現場の実況中継などを全て「真実」であると受け止めて良いのか。

 筆者は、以前から日本のTV番組の報道にある疑問を抱いてきた。意図的でなくても、実質的には「偏向報道」を行っていると考えられるケースが多々あった。あるコトに反対する世論の勢いがある時や感情的に反対説が受け入れ易い時など、日本のTV局は、反対説ばかり報道する。その結果、世論の反対説が益々強化される。しかし物事には必ず「裏」がある。真実が隠されている場合が多い。
出典:賛否両論 Shutter Stock Com
出典:賛否両論 Shutter Stock Com

 「真実」の立証は難しくても、視聴者側が「何を信じて良いか」分からなくても、TV局は、たとえ反対説が世論で強い指示を受けていても、賛成説も報道するという「賛否両論(Pros & Cons)」を同じウエイトで報道すべきである。この「Pros & Cons」は、①真実の証明は簡単に出来ないとしても、真実に少しでも近づくことができる方法であること、②賛否両論の報道によって視聴者に何を信じて良いかの判断基準を与えること、③反対説で困っている人に賛成の反論の機会と余地を与えること、④その逆もあることなどの極めて大きい効用を持つ。

 この報道の「Pros & Cons」の考え方は、報道だけに限らず、教育、教養、実用、映画、音楽、ドラマ、アニメ、スポーツなどのTV番組にも活用すべきである。Aという考え方で、ある番組の企画、制作、放送をした場合、同時か、後にそれとは逆のBという考え方で実行することである。それによってTV番組の企画~制作~放送が活性化され、TV番組の内容が洗練される。そしてTV離れした若者や中高年の視聴者をTVに戻って来させることが出来るのではないか。

●エンタテイメント追及のための「F機能とR機能」
 筆者は、本稿の「16号(062209)」の映画産業の実態で「夢工学式・映画成功論」として「ポートフォリオ戦略」と「F機能とR機能の同時追及」を提言した。前者は17号で詳しく説明したが、後者はまだしていない。次回の40号で詳しく説明したい。説明が遅れたことを許して欲しい。

 エンタテイメント性が最も高い「TVドラマ」の企画~制作~放送に於けるも最も重要なコトは何か?それは、上記の「F機能とR機能の同時・同質追及(正確な表現をするため最近な同質を加えた)」である。しかしこの他にもっと重要なモノがあると多くの専門家は指摘するだろう。しかし彼らが「指摘していないコト」がある。そのコトを筆者は、映画と同様、TVドラマでも提言したのである。

 TVドラマの企画者、制作者、放送者は、視聴者に最高の感激、感銘、興奮、面白さ、明るさ、怖さなどを与えることを最優先に考える。当然のことである。しかしそれで十分に期待する結果が生まれるか? その期待を生むのが「F機能とR機能」である。この機能とは何か?その答えを下記の2つの映画のスチール写真をヒントに考えてみて欲しい。
出典:スターワーズ、Official Site STARWARS Japan Com 出典:椿三十郎 DMM Com
出典:スターワーズ、Official Site
STARWARS Japan Com
出典:椿三十郎
DMM Com
つづく
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