リレー随想
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「環境ビジネスの大規模開発プロジェクトにおけるP2M活用モデル」が完成しました

田中 弘: [プロフィール] :4月号

 PMAJでは、今般、社団法人 日本機械工業連合会(日機連)から受託の平成22年度調査研究案件、「環境ビジネスの大規模開発プロジェクトにおけるP2M活用モデルの調査研究」を完了し、報告書を3月末日に納品しました。報告書は5月頃に日機連のホームページ上で閲覧可能となります。
 この調査研究結果は、PMAJが2008年度から“産業・社会に役立つP2M”のテーマを掲げて、P2Mの産業や公益事業での分かりやすい活用モデルを創ることを開始してから第3年目の主力成果となりました。
 PMAJオンラインジャーナルでは、今月号から、本調査研究の委員会で委員として活躍された方々の調査研究にかけた想いをエッセイとして連載することになり、まずは理事長であり、委員会にもオブザーバーで参加させていただいた私から発信ということになりました。

 本調査研究では、我が国の新経済成長戦略が5大戦略分野として挙げているうちの、“インフラ輸出/システム輸出”および“環境・エネルギー課題解決産業”に着目し、戦略具現化の一環で、構想化・計画・マネジメント体系として役立つような成果を目指しました。2010年度経済産業省産業構造ビジョンの推計では、両分野併せて、2007年から2020年までの伸び率で44兆円規模となります。
 成果である報告書は、① 環境ビジネスの範囲の解明、② 環境ビジネスが必要とするビジネス要素の識別、③ P2Mプログラムマネジメントを利用しての、これらの要素の組み合わせによる環境ビジネスの仕組み創りと運営の方法の解説、④ 環境ビジネスの分野ごとのP2Mプログラムマネジメント・モデルの提言、⑤ ODA機関の環境ビジネスにおける役割の解説、および、⑥ 環境ビジネスへの取組に関する纏め、から成り、297ページの大作です。

 地球規模での環境・エネルギー課題への対応競争で、環境ビジネスに関する先進国・中進国間の競争は熾烈を極めている状況にあります。日本の環境技術は世界最高水準にありますが、今、世界で環境関連産業に求められているニーズは、伝統的な環境保全の技術そのものも依然ありますが、より高いのは、環境関連技術と他の産業技術を複合的に組み合わせた仕組み型のソリューションだと思います。日本は今後両方で競争を行うことになりますが、後者では、優れた要素技術を物理的に組み合わせれば優れた環境ソリューションが出来るということではないでしょう。ある国がかかえる複雑な課題を解決するミッションを描き、そこから、日本が持つあるいは開発が可能である技術、構想力、工業力、金融力、計画力、技術統合力、マネジメント力を持って、特定課題に個別対応するプロジェクトの群をプログラムとして統合していく綜合能力が必要となります。
 環境技術や環境ビジネスに関する解説書や文献は種々ありますが、環境ビジネスの要素を多面的に分析し、ビジネスとしての創造を提言し、これを支援する接近法(アプローチ)を提供していることに本調査研究のユニークな特長があります。

 本成果(報告書)は、環境ビジネスか、P2Mガイドブックのプログラムマネジメントのいずれかにご興味をお持ちの方には特に興味深い内容となっておりますので、是非ご一読下さい。
以上
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