関西P2M研究会コーナー
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プロジェクトの「成住壊空(じょうじゅうえくう)」について

関西P2M実践研究会 土肥 正利 [プロフィール] :3月号

1.はじめに
本原稿がオンラインジャーナルに掲載される頃は、確定申告の時期の真っ最中の頃かと思います。
私自身、四年前に狭心症の診断を受け、ステント挿入手術後は、毎年医療費控除(1世帯20万円以上の自己負担分)の手続きをしています。また、寄付金も控除対象となりますが、こちらはわずかですが、毎日50円換算で「国境なき医師団」へ寄付をしております。
私ども、関西P2M実践研究会 第1分科会の中にもカンボジアへ井戸を建設する資金の募金を積極的に支援されている方もいらっしゃいます。
近年は、無縁社会、孤独死などと言われる殺伐とした社会ですが、昨年末から今年初めに掛けて「伊達直人」なる市井の篤志家による児童養護施設へ匿名の寄付を行われました。このようなニュースに触れると、ホットする思いを致しました。
こうした人々の親切心、慈悲の気持ちは仏教の十界の生命論の中では菩薩界の生命に相当します。年末年始にも、「日常生活に溶け込んでいる仏教用語」と題してテレビで紹介されていたことを思いだしました。その番組では紹介されていなかったかもしれませんが、「成住壊空」と言う仏法で説くところの生命観とプロジェクトのライフサイクルとを対比してみようと思います。

2.仏法で説く「成住壊空」
本原稿がオンラインジャーナルに掲載される頃は、確定申告の時期の真っ最中の頃かと思います。
釈尊が3000年前に生命を以下のように説き、「成住壊空」を繰り返すとしています。
「成(じょう)」:「我」と言う存在が、なんらかの具体的な一つの生命に発現され誕生しゆくこと。
「住(じゅう)」:生を受けはつらつと生命を躍動させ活動している様。
「壊(え)」:死を意味します。
「空(くう)」:大乗仏教の真髄。「有ると」言えば有る。「無い」と言えば無い。しかし厳然と実在する存在。仏法では「中道一実」、「我」と説く。次の成(生)に向けた準備期間
これらを「四劫」と言い、色々なものに例えて捕らえることができると思います。
四劫 一日 一年 星(恒星) プロジェクトの
ライフサイクル
朝(目覚め) 春(発芽) 原始星
主系列星(恒星)
赤色巨星(恒星)
恒星の最後
暗黒星雲(分子雲)
構想
昼(活動) 夏(繁茂) 設計・構築
夜(寛ぎ、導眠) 秋(落葉) 終結
深夜(眠り) 冬(冬眠)

3.プロジェクトのライフサイクルと「空」
ここで、プロジェクトのライフサイクルに「空」に相当するものがないかと言うと決してそのようなことは無いと思います。確かに「有期性」を基本属性として持つプロジェクトは一定の目的を達成し完了しますが、P2Mの中ではプログラムを意識した使命達成に向け、次のプロジェクトの準備期間であるといえます。つまり、関係性マネジメントでの関係性の再構築や、資源マネジメントにおける組織全体で行う資源の蓄積がここで言うところの「空」に相当するのではないでしょうか。
具体的には、「関係性マネジメントの再構築」では、プロジェクトの終了(壊)後も企業として事業の継続、存続を図るために、取引における顧客との関係を長期にわたって良好に維持することを行います。これらは、次のプロジェクトを、より効率的に成功に導くための準備期間(空)に相当すると思います。その結果、新たなアライアンスを生み、これまでに手がけていなかった新規分野へ、瑞々しい躍動感を持ったプロジェクトを発足(成)することも可能となります。
資源マネジメントの資源の蓄積、特に情報マネジメントでも触れられているところの「情報資源」の蓄積は、プロジェクト単独でプロジェクトの期間中(住)にのみ行われるわけではありません。プロジェクトの遂行過程で組織にとって新たな価値を生む資源が得られた場合は、これを再資源化し、組織の他のプロジェクトでも活用可能な内部資源として蓄積します。この蓄積はプロジェクトが解散した後(空)も、ライン組織が管理し、ナレッジとして資産化し、次に発足(成)するプロジェクトへの貴重な情報資源となります。
このように見てくるとプロジェクト終了後の「空」の存在は決して無視できません。だからこそ上述したように、P2Mではその間の活動が取り込まれているのだと思います。

4.むすび
少し話しは変わりますが、私が主査を勤めている関西P2M実践研究会の第1分科会の2009年、2010年度のテーマは「リーダの言葉を読み解く ~チームを鼓舞する珠玉の一言~」です。この場合もリーダから掛けられた言葉はプロジェクト期間中のみメンバーに響いて完了(壊)するのではなく、プロジェクト終了後また次もあのリーダとプロジェクトをやってみたいとか、メンバー自身が成長できたと実感し、より高度なプロジェクトへ挑戦する意欲、スキルを養う期間(空)に繋がっていくものと思います。
当の分科会活動そのものは、昨年度の実践研究会の合同合宿以後、なかなかまとめきれずこのまま「壊」で終わるのではと焦っております。何とか、「空」を経由し、7月の大阪フォーラムに向け「成・住」とならんことを願って努力して参ります。
以上
 参考文献:「仏法と宇宙を語る」 潮出版社 池田大作、木口勝義 対話集
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