投稿コーナー
先号   次号

「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
〜知識・人脈と、ボーダーレスに仕事をする力〜

井上 多恵子 [プロフィール] :2月号

 2011年をどう生きるか。この問いに対するヒントを40 FOR THE NEXT 40と題した論文に見出すことができる。この論文は、40年前に Future Shock  を書いて環境変化への対応を呼びかけたアルビン & ハイディ・トフラー夫妻が設立したトフラーアソシエイツが執筆したもので、2050年までの間に世界に起きる変化を40の例を挙げて予測している。政府や私企業や各種組織など、さまざまな顧客が抱える問題を解決する仕事に従事しているトフラーアソシエイツは、人々の生き方、仕事の仕方、余暇の過ごし方、そして組織などに大きな影響を与える技術・ビジネス・政府・経済・組織の形態・価値観と規範における変化を知り、それらに対して準備をしておくことが、将来に対して我々が取りうる最適な対応であるという考えのもと、この論文をネット上で無料公開している。
 読んでみて、「ダイバーシティー」「人財育成」「個人のスキル」という視点から、私が思ったこと。それは、これからますます各人に、「知識・人脈と、ボーダーレスに仕事をする力」が求められるようになるということだ。
 2008年に公開されたインディージョーンズ4の中では、「宝」は金銀ではなく、「知識」だった。これからは、知識が資本の主要な源となり、知識資本の重要性を認識した発展途上国は、教育と知識移転を重視するようになる。アメリカも、国際教育を最重要項目と位置づけ、アメリカ人が他国に旅行しグローバルなコミュニティの一員として自らをみなすよう、促していくと予測している。大国アメリカですら変化していこうとする中、国際社会への依存度が高い日本で内向き志向が高まっているのは気になる。大前研一氏が唱えるように、若者は海外に飛び出すべきだろう。
 「知識」は、「旬」でなければならない。すべての知識には限られた寿命があり、陳腐化してしまった古い知識に基づいてなされた意思決定の質は下がってしまうと警鐘している。やっかいなことに、この知識が陳腐化してしまうサイクルは、変化が加速するにつれますます短くなってしまうらしい。ということは、常に貪欲に最新の知識を得て、自分が持っている知識の棚卸をする必要がある、ということだ。そのためには、日本語で読める知識では不十分だ。私が「モチベーション3.0」の著者であるダニエル・ピンク氏のメールマガジンでこの論文について知ったように、英文読解力が求められる。
 「ボーダーレスに仕事をする力」については、どうか。テクノロジーの変化により、成功する組織は組織内R&Dの能力に限定されずに、国際的な専門家の頭脳を活用し、オープンネットワークの中で開発を行っていくだろうとしている。これは、力があるスペシャリストであれば、国や組織の枠に縛られることなく、力を発揮することができるようになることを意味する。ますます高速に、広範囲になるインターネットの接続やビデオ会議にかかるコストの低減や海外移動の容易さもこの傾向を後押し、「どこで事務的な仕事をするか」ということの重要性は減ってくるだろうと述べている。世界中のどこにいようが、仕事ができる時代の到来である。私自身の仕事にも、この兆しはすでに見えている。会社の仕事では自分の席でPCを用いた会議に昨年末初挑戦したし、11月にこの投稿で記載したストーリーテリングの講座の事前の打ち合わせは、アメリカと日本国内の2か所をスカイプで結んで実施した。また、英文履歴書コンサルタントレジュメプロの仕事では、海外在住の方からも書類作成の依頼を受けている。海外移動の容易さも、昨年羽田空港を使って明け方のフライトでタイに旅行した際に実感した。
 「ボーダーレス」な時代には、組織を越えた人脈の重要性が増す。40 FOR THE NEXT 40には、ソーシャルネットワーキングが今以上に影響力を持つようになり、商品やサービスのあり方を決定していくようになる、としている。TIME誌が「2010年の人」として選んだのは、Facebookの創始者、26歳のマーク・ザッカーバーグである。今やFacebookのユーザーは全人類の12分の1になり、今年は中国への進出も狙っていると言われている。私のイギリスに住んでいる高校生の姪もFacebookのヘビーユーザーである。
 私の年齢から言って、40年先も生存しているかどうかは怪しい。しかし、これから何十年か仕事をしていく間、せっかくなら、まだまだはるか遠い先にある目標、「何かの分野での国際的な専門家」に少しでも近づきたい。「知識とボーダーレスに仕事をする力」は、それなりにある。人脈も無いわけではないが、強化する余地はある。そのためには、Facebookを使いこなせるようになりたいのだが、姪が作ってくれた、「心をつかむアピール力」のファンページのメインテすらできていない。どなたか得意な方がいれば、ぜひ教えていただきたい。2011年は、お互いに得意なことを提供しあって、人脈を構築・強化する年にしませんか?
ページトップに戻る