「おおきな木(絵本)」
(シェル・シルヴァスタイン作・絵、村上春樹訳、あすなろ書房、2010年09月20日発行、第3刷、1,200円+税)
デニマルさん:1月号
ここで紹介する本は、小説、ビジネス書、随筆、漫画、子どもの本、絵本等々ジャンルが多岐に亘っている。話題性が高い本は何でも取り上げているのだが、今回は絵本である。因みに、現時点での絵本のベストセラーを調べると、1位が「おつきさまこんばんは」(林明子著)、「いないいないばあ」(松谷みよ子著)が6位、古典的な名著の「ぐりとぐら」(中川梨枝子著)が12位、次が「不思議な国のアリス」飛び出す絵本(ルイス・キャロ他)、「はらぺこあおむし」(エリック・カール著)と続いている。他に、「100万回生きた猫」(佐野洋子著)も上位にあるが、著者が昨年他界されたので改めて注目を集めている。今回紹介の本は、15位にランクされていた。この本は1964年に出版され、日本で翻訳されたのが1976年である。その翻訳者が物故者となり再出版にあたり、新たな翻訳を村上春樹氏が担当された。訳者は一昨年の「1Q84」や「ノルウェイの森」の映画化等々で話題が尽きない。
大きな木(その1) ―― どんな木かな? ――
童話や絵本では、木や森をテーマにしているものがある。特に、グリム童話に森での話が多い。「ヘンデルとグレーテル」「眠れる森の美女」等であるが、「青い鳥」(メーテルインク著)や、先に紹介の「グリとグラ」も森での出来事が書かれてある。木がテーマのものは、「ジャックと豆の木」(J・ジェイコブス著)、「木を植えた男」(J・ジオノ著)、「葉っぱのフレディ」(L・バスカーニア著)がある。ここでは大きなリンゴの木が主人公である。
大きな木(その2) ―― どんな話かな? ――
この本のストーリは、リンゴの木と少年の物語である。この二人の主人公は、時代と共に成長していくのだが、お互いに深い絆で結ばれているようである。「葉っぱのフレディ」では、葉っぱ同士がお互いに春夏秋冬の自然の営みと葉っぱの役割を教えてくれた。芽が出て新緑となり夏の太陽を受けて大きく成長し、やがて紅葉し落葉となって終わる。人の命と重ねて語っている。ここでもリンゴの木が少年の成長に伴って時々の要望に答えている。
大きな木(その3) ―― The Giving Tree? ――
この本の著者は、アメリカ・シカゴ生れの絵本作家である。だから原文は英語で書かれてある。その題名が「The Giving Tree」で、日本に翻訳されて「大きな木」となった。多少表現の違いがあるが、同じ内容をどう捉えるか読まれた方々の判断にある。更に、訳者は少年としたが原文は「彼女」であると紹介している。大きな木は「親」であり、少年は「子ども」である。この絵本はどちらの立場からでも読め、親子で読める奥深い絵本である。
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