PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (1)

向後 忠明 [プロフィール] :11月号

 2010年10月、暑い夏も終わり久々の秋晴れの朝、気持がよいので近くの公園に散歩に出かけました。平日でもあり、私だけが平日の散歩と思っていましたが「なんと!」私と同じ位の年頃の人達が三々五々に散歩したり、犬と遊んだりしていました。
 以前にはこのような光景をあまり見なかったような気がします。よく言われる「団塊世代の人達の停年」がこのような現象を起こしているものと納得もしました。
 それと同時に、私も同類の仲間が増えたと思い安心もしましたが、一方では『企業戦士』と呼ばれたこの世代の人達が一挙にいなくなったことを考えるとこれからの日本はどうなるのかと心配にもなりました。
 そんなことを考えながら歩いていたらゆっくりできそうな静かな場所にベンチがあったので持ってきたボケ防止目的の本『日本PM協会発行のP2M』を座って読むことにしました。
 しばらく読んでいるうちにウトウトしてしまいましたが、ハット!気が付いたら隣に知らない人が座って私の本を拾って見ている人がいました。
 失礼な人と思いましたが、すぐに目を覚ましたことに気が付き、「すみません、初めて見る本なので拾って少し読みました。」と言って私に謝りながら「なかなか含蓄のあるいい本ですね!」と言って私にその本を手渡し話しかけてきました。
 10分ほど寝てしまったのかもしれません。
 それからこの本の内容についての話になりましたが彼(K氏)もいろいろな分野での仕事をしてきた大手の企業を役員にて定年退職した人ですが、私と多くの点で似ている経歴を持っている人でした。
 30分ほどK氏とベンチで話をしましたが彼は別れ際にこの本に示される使命達成型職業人とは「ゼネラル業務に対応できるプロですなー!」と言ってベンチを離れて行きました。
 「ゼネラルなプロ?」何を意味するのか最初はわかりませんでしたが使命達成型職業人ということから、P2Mの内容のことを言っていることと思い、この本をまじめに読み出しました。
 その後も家に帰り、P2Mに限らずマネジメント関連の本を読み、私なりに自分の経験も含め「このゼネラルなプロ」の意味を調べ、その解釈をしてみました。

  まずは堅苦しい解釈論から入りますが「そんなこと当たり前だよ」と言わず“耳”を否“目”を傾けてください。
 日本の組織体に属する職種には専門職、総合職、管理職等がります。

 総合職は事務職を主体とするが大学卒業の女性を一般職と区別するために作られた職域であり、この解釈論からは除外します。
 もちろん男性も人事、法務、財務、企画等々の組織管理にかかわる業務もありますがこれも総合職としてまとめて考えます。

 ここでの解釈論の対象は、話の発端でK氏も含め技術系の人だったので技術系の専門職を対象として述べることにします。
 「専門職は専門分野に深い知識と経験を有する者」を称し、技術、文系の区別なく専門分野に特化した業務に専念する人達です。
 しかし、昨今は技術および職種分野も多岐にわたり、その上業務に求められる内容も複雑かつ高度になっています。
 専門職の人も管理職になった場合または近い立場になった場合は自分の専門以外のことも知識として習得し業務に生かし、業務に求められるものに柔軟に対応することが必要となってきています。
 例えば技術者であっても総務、人事、労務、財務、契約といった総合職に求められる業務知識も必要となっています。もちろん、「P2M」の主題であるマネジメントに関する知識も必要となります。
 一方、純粋に専門職としてさらに自分の専門を深くし、高度化する業務に適応し、その分野のエキスパートになり、その専門分野の管理職になる人もいるでしょう。

 表題の「ゼネラルなプロ」の対象はK氏の職歴から見て前者を意味し、いかなる業務にも対応できるゼネラルに業務を管理する人すなわち「ゼネラルマネジャ」のことではないかと解釈しました。
 ゼネラルマネジャ?とは何かとウイクペディアを検索すると以下のようでした。

 「日本の大企業で言うところの部長職に当たる。日本の課長職にあたるマネジャが損益責任を負わされないのに対し、ゼネラルマネジャは損益責任を持つことが一般的である。ゼネラルマネジャよりも上級職にあたるディビジョンマネジャーに比べると小規模ではあるが、配下組織の人事権や、会社全体の経営への進言も可能である。 しかし、呼称そのものは決して珍しくなく、ウイクペディアの定義の通りであるが、これに「プロフェショナル」が付いたプロフェショナルなゼネラルマネジャと言うとどういうことになるのだろう!!!

 ここでプロフェショナルの定義を以下に示します。
 大前健一の著書である「ザ・プロフェショナル」から一部引用して解釈すると以下のようになります。

社内のみならず社外においても第一線で通用する専門知識や実務能力を備えている人」
顧客満足を約束事として自ら宣言することのできる人

 ここで言う“顧客”とはこちらをプロとして認め、サービスを受けることを前提に報酬を払うことを約束してくれる相手を言います。 “こちら”と言うのは個人でもありチームでもあり会社でもあります。
 しかし、仮に“こちら”がどんなに素晴らしい技術や実績を持っていても顧客が契約しないと言えば仕事は発生しない。また、契約してもその結果を顧客が満足しなければなりません。よって、プロフェショナルの意味を解釈し直すと①の定義は問題ないが、②は納得できません。自分が勝手に宣言しても契約まではこぎつけますが結果がまずければプロフェショナルとは言えません。よって、②は以下のように修正します。

「仕事に結果責任をもち、顧客満足を達成できる人」

 プロフェショナルと言えば身近なところで医師、弁護士、公認会計士、建築士等々がいますが、必ずしもこの人達全部がプロフェショナルとは言えないケースもあります。
 この人達は優秀な大学を出て、国家試験も通って、専門知識も実務能力もあると証明がなされてはいます。しかし、社内的に優秀と言われペーパーワークも素晴らしいが、実務適性が低かったり、人間性に問題があったり、マネジメント能力に問題あったり等々で顧客との契約または約束事での実務において結果責任を持たず、または顧客満足のできない人も多くいます。このような人達はプロフェショナルとは言えません。
 例えば、医師による医療ミスとそれを隠す体質、地震に耐えることのできないような設計をする建築士、粉飾決算をする公認会計士等々がいます。
 確かに素人ではなかなかわからないような不誠実な行動はプロフェショナルだからこそ隠したり、言い訳したりできるのでしょうが、このような行動は決して結果責任もなく、顧客満足も得られていません。いずれ、時間がたつとバレてしまうことですから!
 よって、プロフェショナルとは専門能力、実務能力そして顧客満足を与えるに必要な責任感(達成志向)、倫理観、誠実性、多様性の尊重等すなわちプロ意識と自己規律を持って事に当たるできる人に与える“呼称”であると思います。
 プロフェショナルはそれぞれの職種おいて上記に示すプロフェショナルの定義に沿った行動をとれば「その道のプロ」ということになります。

 プロフェショナルゼネラルマネジャとは「その道とはゼネラルマネジメントであり、そのプロフェショナル」のことを言うのでしょう!
 では、どのような職種が当てはまるのでしょう!!
 ゼネラルマネジャの定義はすでに述べたようにウイクペディアに示すような内容です。しかし、これではまだ釈然としません。よって、次回は「ゼネラルマネジャ」について述べてみたいと思います。
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