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インド工科大学での講演

(株)ピーエム・アラインメント 佐藤 義男 (PMAJ副理事長): [プロフィール] :3月号

 今、台頭するインド・パワーは中国と並んで今世紀の注目とされています。本稿では、インド工科大学でのPM講演を踏まえ、明日を担う大学生向けPM教育の促進について述べてみたい。
 私は、2005年11月12日より16日まで、インドのニューデリー市で開催された、IPMA(International Project Management Association)2005年世界大会に参加しました。この大会はIPMA創立40周年記念であり、しかも初めてIPMAの本拠ヨーロッパを離れてアジアで開催された記念すべき大会でした。PMAJからも3人(米澤氏、梅村氏、佐藤)が論文を提出して参加することになりました。私はトラック基調講演で、Successful Project Management at IT Services Companies in Japan(情報サービス企業におけるプロジェクトマネジメント成功のアプローチ)を発表しました。内容は、私がこれまでに中小情報サービス企業に実施したPMコンサルティング経験を踏まえ、中小情報サービス企業が抱える課題とITプロジェクトマネジメントを成功に導くポイント、成功事例をまとめたものです。
 その夜の懇親会で、NTPC(インド国営電力会社)のマネジャーから「日本人ですか?」と声が掛りました。話を聞くと、「弟が日本に12年滞在し、今はインド工科大学(IIT)で教えている」という。その場で、携帯電話で彼の弟であるDr. Supratic Gupta(土木工学部 助教授)を紹介され、翌日にインド工科大学を訪問することが決まったのです。インド工科大学は工学と科学技術を専門とする、インドの15の国立高等教育機関の総称です。国家的な重要性を有した研究機関と位置づけられ、そのレベルは国際的にも有名です。
 さて、ホテルを出発する直前にGupta氏から電話があり、Ph.D. Kirankumar Momaya(経営学部 准教授)を紹介され、大学で講演することになりました。経営学部では、日本語とPM教育の講座があると聞きました。インド工科大学の教室では、MBAクラス学生(30名)に対してIPMAで講演した内容のプレゼンを実施(英語で40分間)しました。プレゼン終了後、矢継ぎ早の質問を受けました。「日本でのオフショア開発はなぜ中国が一番多いのか」、「日本とのビジネス機会はあるか」、「PM資格取得のアプローチについて」、などです。この質疑応答に15分を費やしました。学生たちは将来のインド産業を担うエリートであり、日本のITビジネスへの好奇心と期待やPMに対する熱気が感じられました。

 一方、日本の学生気質はどうでしょう。「人気企業に対してあこがれ意識は強いが現実感は希薄」、「極端に内向的で口下手で消極的」、等が目立つのです。これまで、千葉工業大学でPM特別講義、デジタルハリウッド大学でPM講座(15回)を実施しましたが、質問は少ないのです。インドは、7種の民族からなる文化と15の主要言語(英語を含む)があり、大きな格差の中で生きています。そのため、学生の頃から早口の英語で自己主張する術を学んでいるようです。その英語は、発音は良くないですがアメリカ人には通じるのです。
 インド学生の積極性は、就職したグローバル企業でも発揮されています。私が外資系IT企業にいた頃、米国のボストンで開催された「上級PM研修」に参加しました。受講生はカナダ、ブラジル、オーストラリア、香港、日本、米国から20名でした。講義中にいつも質問し、自分の考えを主張するのはインド人でした。アメリカ人やカナダ人の講師が苦労していたのは、「いかにインド人を黙らせるか、いかに日本人に話させるか」でした。

 今、産業界で必要とされるプロジェクト・マネジャー人材には有効なコミュニケーション能力、リーダーシップ/モチベーション、交渉力などのスキルが求められます。しかし、大学でのPM教育は十分とは言えません。日本の大学には、PM教育を含む高度人材育成に対応する施策で、これらのスキルの素地を身に付けることが求められています。これまでPMAJは、東北大学、北陸先端大学、情報セキュリティ大学などでPM教育実施、さらにITベンチマークSIG/WGやPMシンポの運営に学生の参加を促してきました。今後、PMAJは大学でのPM教育には積極的に支援するつもりです。

MBAクラスの学生たち
MBAクラスの学生たち
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