今月のひとこと
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運命は性格のなかにある

オンライン編集長 岩下 幸功 [プロフィール] :6月号

 学生時代に、芥川龍之介の「運命は性格のなかにある」というくだりを目にして、そういうものかな〜?と、深くは理解できませんせしたが、妙に記憶に残っています。30代の頃、小林秀雄の「人は性格にあった事件にしかでくわさない」という言葉に触れたときも、似たような想いを抱きました。そして60代を迎えた今、自分の来し方を振り返ってみるに、自分の人生は正に己の性格通りのものであったと、納得させられています。改めて先人の言葉の奥深さに驚くともに、「人は性格の通りの人生を生きる」ものと認めざるを得ません。

 人の運命はその人の性格(心)によるところが大きいということになりますと、その幸せのヒントは、自分の性格をいかに深く理解しているかに左右されると言えます。これは大変に難しいことのようです。 自分のことはよく分かっているようで、実は自分自身を理解するには、多くの経験と時間を要するようです。私の場合は、人生の一区切りをつけた60代でようやく「なるほど!」と感得するものがあり、初めて自分自身になり得たように思いますが、これでは結果論であり遅過ぎます。
 自分自身になるということは、すべてのものから自由になる(解き放たれる)必要があるようです。しかし我々は生まれながらにして、いろいろな衣を身にまとい、自らを繕う社会的な動物ですから、それらに縛られています。家柄であったり、学歴であったり、社会的な立場であったり、・・・という具合です。そしてこれらの衣が自らの真の姿(性格)を見えなくしているようです。何かの縁で、大きな環境の変化に直面したときに、これらの衣が剥がされることがあります。過去が全否定されるような場合です。失恋や失職や離婚というような変化に遭遇すると、大きな痛みは伴いますが、新たな自分が見えてきたりします。それまで気付かなかった他人の優しさや痛みが分かるようになります。これはそれまでの過去から自由になったことによるものでしょう。自由な身になったときに初めて、自分の運命をゼロベースで捉え直し、創り直し、コントロールできるようになります。困難の後に一皮むけて、見違えるような人材に変身するケースはよく目にするところです。

 人間は運命によって幸せになるのではない、運命に対する態度によって幸せになるのですから、まずは、自分の運命の受けとめ方とそれに対する考え方が大事なのではないでしょうか。ここに性格が大きく関与するようです。不運にして今困難の中にある人も、運命を捉え直し、創り直し、コントロールできる、またとないチャンスにある訳ですから、「艱難、汝を玉にす!」を信じて、大きく脱皮して頂きたいと思います。遅きに失した感はありますが、私も還暦を迎えた今、第二生(章)に向けた新たな運命を、今度は戦略的に創っていこうと思っています。

以上
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