トピックス(活動報告)
次号

「製造業向けP2M活用ガイド」完成にあたり
リレー随想第1回

理事長 田中 弘:4月号

田中理事長  2008年度のPMAJ基幹事業である(社)日本機械工業連合会(日機連)からの委託事業「製造業向け『プロジェクト & プログラムマネジメント標準ガイドブック(P2M)』活用に関する調査研究」が3月末日を以って完成しました。
 成果物である調査研究報告書(約200頁)は日機連に納入され、この報告書は実践ガイド形式となっておりますので、PMAJ会員や関係の方に活用いただけます。また、今年夏を目標に、少し編集を行ったうえで書籍として発行することも計画しております。
 この製造業向けP2M活用ガイドはPMAJとして3つの大きな目的のために企画したものです。つまり、@ P2M自体が“モノづくり日本”のマネジメントをモデルとして作られたものであり、P2Mのふるさとである(広義の)製造業で、より広くP2Mを活用いただくこと(原点再訪)、A P2Mの普及が第2ラウンドにさし掛かり、具体的な活用方法を求めるユーザーや潜在ユーザーの強い声があり、これに、製造業版を以ってまず応え、さらに今年度以降、他の業種版の活用ガイド開発にも繋げていくこと(P2Mの見える化)、そして、B P2M普及で大変大きな可能性を有する製造業市場を正面から捉えること(市場拡大)、です。
 本調査研究にはチャレンジが多々ありました。P2Mは経営学の要素もかなり採り入れていますが、製造業は一般の経営学や経営学の製造業版とも言われるMOTへの取り組みが盛んであること。また、製造業プロジェクトマネジメントの源流でもあるインダストリアルエンジニアリング(経営工学)も採用され、これを応用した世界一の生産管理システムがあること。製造業はグローバル競争も激しく、“現場力”で総括される絶え間のないカイゼン活動が組織能力として定着していることなどです。
 このような状況で製造業P2Mのコンセプトを打ち出し、活用ガイドを開発するのはかなりの難関ではありましたが、北村保成委員長の高い見識と卓越したリーダーシップの下、委員諸賢のP2Mに賭けた深い情熱、現場でのP2M活用経験、そして各製造業業種に対する高い視点と広い視野を以ちまして、手ごたえのある成果を得ることができました。
 今回のガイドの成果で特筆すべきことは、次のような点です。
  • 製造業での事業がプロジェクト化しているなかで、@ 戦略へのアプローチモデル、A プログラム & プロジェクト統合モデル、及びB 実践プロセス評価モデル、を介して事業戦略のプログラムへの落とし込み方から、要素プロジェクトによる戦略の実現、そしてサービスモデルを適用して獲得・蓄積価値の次の事業へのフィードバックまでのトータルサイクルでの具体的なプログラム&プロジェクトマネジメントの姿を描出したこと。
  • 製造業の現下の最大の経営パラダイムである、高付加価値で競争環境において差別化すること(競争戦略性)並びに高速回転でキャッシュを回収すること(Time to Market & Time to Profit)、の2つの軸を同時に回すマネジメントモデルを提示したこと。
  • 製造業のなかでも、業種ごとに若干異なるPMのツボを押さえたこと。
 本調査研究には、私自身もリサーチコンセプトの提案、委員会活動への参加、報告書の執筆と、とっぷりと漬かりました。そこで、実感したことは、製造業企業が、とくに商品開発、システム製品開発、素材・食材開発において極限のプログラム&プロジェクトマネジメントを必要とすることでした。
 請負でプロジェクトを遂行するのも大変ですが、手金を打って商品・システム開発を行う迫力や、素材・食材メーカーが、顧客企業の商品の開発動向までも先読みしながら、自社の次の稼ぎ手を求めて素材・食材開発を行う緊迫感は大変なものがあることを痛切に感じた次第です。今後このような強烈な製造業フロントに入っていきながらP2Mを磨いていくことになります。
 また、世界にはモノづくりに戦略的にアプローチできるPM体系がありませんので、この成果の概要をwww.PMFORUM.com(世界40万人のアクセス)やリサーチPMイベントなどで世界に向けて発信していく所存です。
 次回は 北村保成委員長に担当願います。お楽しみに。
以上
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