図書紹介
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人生生涯 小僧のこころ
(塩沼亮潤著、致知出版発行、2008年05月02日、第5刷、260ページ、1,600円+税)

デニマルさん:12月号

この本は、今話題になっていない。先日、友人と読書談義をしている時に、紹介されたものだ。読んでみて、ここで紹介しなければと思った本でもある。理由は、普通の人がここまで考え、限界に挑み、それを成し遂げた凄さと偉大さの感動からである。ことのキッカケは、あるテレビ番組を観てからだと著者は書いている。そのテレビは、NHKのドキュメンタリー番組「比叡山、千日回峰行」である。実は、この放映を筆者も見た記憶がある。多分何回目かに再放送されたものであろうが、最初の放映は、1979年1月5日である。この番組は、比叡山延暦寺で昔から行なわれている荒行(千日回峰行)に挑まれている「酒井雄哉僧」(回峰行を満行されて現在、大阿闍梨)の修行をカメラが克明に記録している。著者は、この番組を観て自分もこの修行にチャレンジしようと決意した。それも普通の家庭のまだ高校在学中の頃の話である。その青年が大阿闍梨となられたことを本に纏めている。

ある僧侶の決意   ―― 道を極める ――
著者は、普通のサラリーマン家庭の子供だった。だが父親が家計を無視した生活だったので貧しい子供時代だった。その後、父母が離婚して祖母、母親の3人暮らしとなったが、家ではキチント躾けられたと書いている。その影響で、先のテレビを観て「僧侶になり、千日回峰行をする」と決意した。普通の人がお坊さんになるには、出家して寺での厳しい修行を終えないと僧侶には成れない。それも普通の僧侶でも挑まない荒修行を目指した。

千日回峰行とは  ―― 超人的修行に挑む ――
千日回峰行を決意した理由について「良く分からないが、世のため、人のために働きたいから」とその一旦を披露している。それにしてもこの荒行は、人が出来る限界への挑戦以上にも思える。著者が挑んだ荒行は、奈良県吉野山の金峯山寺蔵王堂から大峯山までの48キロ(高低差1300メートル)を16時間かけて1日で往復する。それを千日間(5/3〜9/2までの100日を9年間)続けるのだ。もし途中で行を止めるなら、死を覚悟する厳しい修行である。

四無行をも満行  ―― 更なる修行を達成 ――
先の千日回峰行では、100日足りない計算である。、厳しい荒行を行なう前の100日間の事前訓練がある。これに合格して残りの9年間で合計千日(総走行距離48,000キロ)となる。著者は、この千日回峰行を達成して、大阿闍梨となられた。その後、更なる荒行である「四無行」(9日間、断食、断水、不眠、不臥)に挑み、これも満行されている。こうした荒行を終えた著者は、『迷い、苦しみの中から「真に生きる」道に歩みはじめた』と結んでいる。

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