「グローバルPMへの窓」 第23回 PMAJグローバルPMシンポジウムに向けて その4− 世界のPM賢人に会おう (2)
GPMF会長 田中 弘:11月号
先月号に続いて今国際シンポジウムに出演戴く世界の賢人の紹介をしたい。
Terry Cook Davies博士
英国PM界広しといえど、Sirの称号を持っているのはこの方のみである。骨董商を営んで世界中を回った後に、PMに興味を持ち、コンサルタントに転じ、何名かの世界の腕扱きの仲間を集めてHuman Systems社を結成し、社長を経て現在会長職にある。社業で蓄積した、顧客企業の現場に入りこんで名コーチ役として集積した事例を解析し、PhDを取得した。
P2Mの発表前からいち早くP2Mを評価して戴いた方で、企業での価値創造やイノベーションなど組織のPM論の第一人者の一人である。
現在は、PMI®のOPM3®の世界トップコンサルタントでもある。PM協会の壁を超えて世界で人気があるトップ3スピーカーの一人。
Rodney Turner教授
筆者がPMで物心がついた、1970年代終盤にすでにPM界で有名であった大物PM教授で、化学会社ICIのプロジェクトエンジニアから教職に転じて、ロンドンのHenley Management College教授、ロッテルダムのErasmus University教授を経て、2005年からはフランスのESC Lille Graduate School of Managementの教授を務めている。その傍ら、IPMAのアカデミックジャーナルであるInternational Project Management Journal の発行人兼編集長、コンサルタント企業 EUROJAXのCEOと3つの顔を有している。
最近の注力分野は、Project-based Organization(PBO)論とPM Governance論である。
PM協会では、英国PM協会(APM)の会長、上部機構のIPMAの会長とチェアマンを務めた。世界PM界の長大物のひとり。ニュージーランド出身であるが、話す英語は英国のエリートの英語でいさから難しい。
Ralf Müller 博士
PM学者としては、Lynn Crawford博士と共にRodney Turner教授の弟子である。IT業界でいち早く最先端PM体系・システムを築いたNCR社で、Teradata部門のPM最高責任者であった。その際に当協会のIPMC2001世界大会で発表を行い、大変高い参加者評価を得た。今大会では成功するITプロジェクトマネジャーのプロフィールという講演を行って戴く。
ドイツ出身であるが、現在はスウェーデンを拠点にして、コンサルタント企業の代表、大学教授を務め、また、フランスの
ESC Lilleでも教授を務め、産業界の最先端プラクティスを整理して学生に伝えることで大変人気がある。PMI関連のリサーチプロジェクトの常連であり、世界のPMIイベントに頻繁に招かれている。親日家である。
Vladimir Voropaev ロシアPM協会会長
世界のPM界では、Adesh JainインドPM協会長、筆者とこのVoropaevロシアPM協会長の3人を義兄弟と称するむきがある。90年代の初めに、3人が米国で出会い、お互いに自国でのPM普及に苦労した仲で、いつも交流をしていることから、そのように思われているのであろう。
実際、この3名と中国PM協会のQianFupei筆頭副会長を加えてJVQT Allianceという個人レベルの協力協定を結んでいる。Voropaev氏はシビルエンジニア出身で、若かりし日には、ソ連の灌漑施設の建設を指導して歩いた。博士号を取得してからは
モスクワ経済・マネジメント大学の教授として、ソ連時代の最後からロシアにかけてPM教育の基礎を築き、92年創設のロシアPM協会の会長に就任し、15年たった今日も会長職にある。氏の長話は有名で、10分の割り当てが60分になることはざらであり、世界の誰もこれを止められない。
Sergey Bushuyev ウクライナPM協会会長
ウクライナはチェルノヴィリ原子力発電所の崩壊事故以来、プロジェクトマネジメントに国を挙げて取り組む姿勢を打ち出し、時の政権により温度差はあるが、民間と政府や公共サービスを挙げてPMと取り組んでいる。また、次世代のPMを担うPMの高等教育にも世界に先駆けて国を挙げて取り組み、現在PM専攻の博士が50名程度、修士は300名程度を生んでいる。
このPMウクライナの推進者が、キエフ経済大学教授であり、ウクライナPM協会長である、Sergey Bushuyev博士である。
Bushuyev博士はソ連時代に宇宙開発プロジェクト、とりわけ、ミサイルの打ち上げプロジェクトのプログラムマネジャーを務めていた。最近はイノベーションのPMの推進に熱心に取り組んでいる。
精悍な顔つきであるが、優しさがあり、器量が大きく、カザフスタンなどロシア語圏のPM協会からも大変信頼されており、また国際PM界でも人望がある。
〔次号に続く〕
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