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「考える」を考える
第3回 「考える時の発想のキッカケ・切り口」

中谷 正明:8月号

 考えるにはそれなりの前提知識や情報を持ち合わせていないと「下手な考え休むに似たり」という惨めか結果になることを6月号でご紹介しました。7月号では考えるプロセスにそって、集めるネタの大切さと、集めたネタの分析・整理に関してご紹介し、考えた結果を最終的に決定する「意思決定のプロセス」を説明いたしました。今月はこの意思決定のプロセスの最終局面である解決策の検討や実行計画の決定についてもう少し掘り下げて説明を致します。
何故?何故?を3回
 TQCの分野には幾つかの格言がある。「何故?何故?を3回」もその一つである。望ましくない現象・事象(通常、問題)を解決する際に、その不具合を引き起こす元になった原因を追究しないと解決策が甘くなり往々にしてピントはずれとなる。これを防ぎ効果的な解決策を見つけるには、原因究明の何故?を3回は繰り返そうという教訓である。世界のトヨタはなんとこれを5回繰り返すことを原則としたという有名な話がある。始めて聞いたときにさすがはトヨタ!と感心したことを今も鮮明に記憶している。プロジェクトの色んな局面で発生する数々の問題解決に当ってもこの事は十分に心して実施して頂きたい。解決すべきテーマ次第ではチームメンバと一緒になってこれを実施することの効果は極めて大きくなる。
視座・視点を多く
 プロジェクトマネジメント活動に限らず、知的作業に従事する人の成熟度を評価する場合、一つの大きなポイントがこの事で、如何に多くの「視座」で物事を捉えられるか、多くの「視点」で判断できるかがある。図表をご覧下さい。プロジェクトに関する視座には、いわゆるステークホルダーの面々が顔を連ねます。プロジェクトマネジャはそれぞれのステークホルダーの最大関心事が何でるかを日頃から見極める習慣を身につけることが要求されます。自分の立場だけを考えた言動はいかにも「幼いプロジェクトマネジャ」丸出しとなります。プロジェクトの評価ポイントには、進捗度、品質、予算、開発量、一人当たり開発量、ファンクションポイント数、バグ発生率・・・など色々あります。当該プロジェクトにおいて重要な管理指標を事前に見極めておくのも管理レベルを引き上げる重要な作業となります。
視座・視点

4シキ
 経営改革において今後の重要課題を絞り込む、プロジェクトの問題が山積し始めたなど課題や問題解決の対策を検討するときに、発想の切り口として便利な言葉がある。検討過程の中でこのことを思い出し是非とも活用して頂きたいのがこの「4シキ」という言葉である。知識・組織・意識・見識の4つを意味しており多くの問題や課題、時には解決の糸口はこの4つのシキに潜んでいることが多い。
 問題の在り処が「知識」にあると判断される場合は、対策も比較的に考え易く、対策を実施することの効果も比較的早く出る。要員に必要な教育機会を与えるなどはその典型といえる。
「組織」に起因する問題の場合も対策は打ち易く対策が適切な場合は、効果も比較的早くでる。
経営環境の変化にもかかわらず昔のままの組織で頑張っているが問題があちこちに出てきたなどはこのケースが該当する。しかし組織を変えることは組織全体に大きなインパクトを与えるので経営者が新しく変わると同時に組織変更を行ったにもかかわらず、その効果の程が良く見えなくて却って何のための組織変更だったのかなどという悲しい事態も時折発生しています。
 「意識」、「見識」は共に人の考え方やそれに基づく態度につながるもので、問題の原因がここにある場合は対策がかなり面倒となる。意識は組織を構成するメンバー全体、見識は組織のリーダーの考え方で、特に見識が時代はずれ、的外れ、そもそも良くわからないなどという場合は傷が深い。リーダーがその気になっているのにメンバーの意識が低いという場合は、十分に改善可能であり、意識改革の組織的な取り組みにより事態は大いに好転する。現在ISOに絡む品質・環境・情報セキュロイティや個人情報の各種のマネジメントシステムがにぎやかであるが、そのスタートは全て組織の意識改革に関わる施策実施となっている事情がこの間の動きを良く表している。いずれの場合もトップの方針を組織全体に周知徹底することからことは始まる。
トレードオフ
 状況を判断し、考えに考えた末に幾つかの解決案(解決策候補)を洗い出すところまでこぎつけたら、いよいよ最終段階に差し掛かります。チームとして、プロジェクトマネジャとして明日から具体的に取り掛かるべき解決策を候補群の中から最終的に選択・決定し、その解決策を展開する実行計画を作成し関係者に周知徹底すると同時に、解決の役割を分担してもらわねばなりません。この候補群の中から最終案を選択する作業を、関係者の合意を取り付けながら効果的に進める方法を是非ともマスターしておいて下さい。何かを決定する際には何らかの価値観がその根底にあるものです。何故そう決めたのかを第3者を含む関係者が正しく理解することは後々の揉め事や誤解を防ぐ事となります。例えば開発ベンダーを選択決定する際には、幾つかの条件・要素を比較検討する必要があります。財務力、技術力、営業姿勢、要員スキル、過去実績、・・など
があり、且つその時々によってそれぞれの重要度は変化するはずです。その重要度を重み付けしながら候補であるベンダーの比較表を作成し、意思決定に参加するメンバー全員でそれを採点・評価することでスムーズな意思決定が出来ます。当然メンバー間の重み付けも考慮に入れることもあるでしょう。結果は大切な記録として残すことは当然です。RFP後の作業には是非とも 活用して頂きたい。
以上
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