PMプロの知恵コーナー
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海外でのITプロジェクト実践 (3)
「コミュニケーション」

向後 忠明:6月号

 話は契約調印の前に戻りますが、このT国版全銀システムの立ち上げには前号で話しましたようにいろいろ曲折がありました。そして何とかまとめることができ、契約調印の運びとなりT国へと赴くことになりました。
 それまではT国側が日本側に来て会議を開催し、いろいろな契約や技術の話を英語に堪能な人を入れて纏めていくことができました。そして、契約内容の確認も行い、いよいよ調印の運びとなり、中央銀行総裁出席のもとでの調印となったのでT国へ行くことになりました。
 私は、前回も話したように本プロジェクトは当初の6ヶ月間だけのPMとしての役割という約束でしたので、全くT国へ行くとやその国の事情を調べるなどの前知識取得といったことをしないままでいました。

海外プロジェクトの特徴
 そのため、T国出張を言われて始めて上記に示すような、“海外プロジェクトでの特長”を改めて思うことになりました。
 仕事をする上で大事な事は、日本、海外関係なく、お互いに“考えていること”、“思っていること”、“伝えたいこと”を的確にコミュニケーションできることが大事です。
 しかし、海外でのプロジェクト遂行では少し事情が違うところがあります。
 特に文化や慣習における違いが重要であり、初めて海外でプロジェクトや仕事をする人が戸惑うのはこれが理由です。
 コミュニケーションと言うと文書伝達方法、言語だけではありません。ここに示す文化・慣習そして歴史観に精通することまたこれらをベースとした海外ビジネスマンの行動特性を知ることが大事です。


 海外にはじめて出張する人もいたのであらためて上記に示すような“海外におけるビジネスの手引き”の講義を行い、T国へと出かけることになりました。

 さて、T国への道程ですが、その頃の飛行機の便は現在と違い、また地図を見るといわゆる“地の果て”のように遠く、昔、駐在した経験のあるアルジェリアを思い起こしました。
 このプロジェクトは今から約18年前の話ですので出発地の飛行場は羽田であり、ヨーロッパへの空路は今のように直行便もなく、また日本からT国への直行便もありませんでした。
 T国への道程は北周りで行きましたがはアンカラで一度休憩し、ドイツのフランクフルトに朝早く着きます。そこからの乗り継ぎも悪く、4〜5時間待たされ、ルフトハンザに乗り換え、アンカラまでのフライトでした。総時間はフランクフルトでの待ち時間を入れて20時間以上だったと思います。
 その上、 おどかされたのがアンカラはT国の首都と聞いていたのでさぞ素晴らしい飛行場だろうと思いながら飛行機を降りたら、なんとローカル空港そのものでした。また、空港から町にハイヤーを借りて、顧客である中央銀行にむかったのですが、その途中が緑もない土漠であり、土で作った家が散見できるような所でした。
 “本当にこのような国で最新鋭の全国銀行決済システムなんて必要なの!!!”といった疑問を持ってしまいました。
 いよいよ、車は町に近くなってきて、中央銀行のある近辺になると人も多くなり、建物も高くはないが大きな建物も見えてきて“ホッとする瞬間”を感じたことを記憶しています。
 続きは次号をお楽しみに!
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