PMAJ関西
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「小さな会社」の細やかなプロジェクトマネジメント

國谷 勝己:4月号

プロジェクトマネジメント(以下、PMという)の歴史も第一世代「目標志向体系」、第二世代「プロセス志向体系」、第三世代「使命志向体系」と進化してきていると言われている。
そのPMの適応産業は、建設産業、エンジニアリング産業、IT産業が主な業界であったが現在はその適応範囲も拡がり今では「官・民・学」の業種を問わず、PMの考え方が浸透して来ている。 私はIT産業に属し、「小さな会社」を始めてから18年余りになります。IT産業の中の業種で言えば、コンピュータ・ソフトウェアの業務アプリケーション開発を主とする会社です。 一般的にIT業界では、プロジェクト型で仕事を進めて行く事が多い。 P2Mの「スキームモデル」、「システムモデル」、「サービスモデル」の3つのモデルでプロジェクトサイクルを回す事によってビジネスモデルも変化して来ている。
しかし私どもの会社ではまだまだ「システムモデル」の部分が中心となっているのが現状です。 又、その「システムモデル」の中でも「品質・コスト・納期」のフェーズにスポットが当たります。そうことを言うとPMの第一世代の状態ではないかと思う人がいると思いますが、現状はそれに近いものがあるのは否定できません。しかしPMの原点から考えると「品質・コスト・納期」はP2Mで言うところの目標マネジメントであり大変重要なフェーズでもあります。 このフェーズを確実にクリアする事から全てのPMがスタートするように思います。

「小さな会社」のプロジェクト構成要員は通常2人〜5人ぐらいでプロジェクトチームを組む事が多い。 プロジェクト期間も短く1ヶ月〜3ヶ月以内が7、8割方を占めている。従って必然的に「品質・コスト・納期」が最優先されてしまう。 ここが「システムモデル」から中々抜け出せなくPMの領域を拡げて行けない原因の一つではないかと思う。しかし小規模であってもプロジェクトである以上、プロジェクト計画書を作成し作業工程の進捗管理、品質管理、納期管理、多少のリスク管理を行っている。 ここでの重要な事はプロジェクトの大小は関係なしに、WBS(Work Breakdown Structure)の実施である。このWBSに関しては仕事を進めて行く上での作業の細分化が明確になり、全体的なスコープ、役割分担、進捗管理、納期管理、又、プロジェクト全体を「可視化」できるのが最大のメリットでもあり、大変役に立つ考え方であると思います。この上位から下位に落とし込んで行く事によって作業も簡潔になり、又、全体のリスク管理にも役に立つように思える。これは私の自論ですが、このWBSを制するものはプロジェクトを成功に導くカギになると言っても過言ではないような気がします。 ちなみにプロジェクトがスタートする時はキックオフミーティングを実施するようにしています。これはプロジェクトの場を円滑にする為の儀式みたいなものですが、プロジェクトを成功に導く第一歩になります。(余談ですが、キックオフミーティング後、チームに活力を入れる懇親会などは有効なチームビルディングを形成できる一つのマネジメントであることを付け加えておきます) いずれにしても「小さな会社」のPMは依頼先から要求されているスコープの範囲を確実に成し遂げていくという事が第一優先になってしまいますが、それと同時にPMの知識体系を習得し、さらに事業基盤を「スキームモデル」、「システムモデム」と拡大して行く事が、これからの「小さな会社」の課題でもあります。

最後にPMの考え方は大企業・中小・零細企業の業種・業態に関係なく、どのような視点でプロジェクトを見つめるか、又、プロジェクト成功のロードマップをどのように作成していけるかが、プロジェクト成功のポイントかも知れません。
私はP2Mと出会う事ができ、今までの狭いPM感覚から少しでも脱出できた事を感謝するとともに、今後のPM普及活動において微力ではありますが何か貢献ができれば幸いであると思います。
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