「グローバルPMへの窓」第15回
躍進するアジアのPMその3 21世紀のPMチャンピオンに向けて 中国
GPMF会長 田中 弘:1月号
筆者は昨年10月中旬に上海で開催されたIPMA-International Project Management Association の世界大会に出席した。10年ぶりの中国訪問で、中国のあまりの変わりように驚いたが、それにも増して感慨深かったのは、10年前にはほとんど見えなかった中国のプロジェクトマネジメントが、リテラシーと実際の活用において、堂々と定着していることであった。
上海の地下鉄の駅で「項目管理」(中国語でプロジェクトマネジメントの意味)と書かれた雑誌が数種類売られているのには度肝を抜かれた。世界のどこで駅のキオススでPMの本が売られているであろうか。中国のPM立国は建前だけではなさそうである。
筆者は80年代から90年代の初頭にかけて、社業で、所属先企業が中国で受注した大型プロジェクトの遂行で契約条件となっていた顧客のエンジニアへの技術移転の一環でプロジェクトマネジメントの基礎講座を頻繁に開催したが、縦割り組織に慣れた中国のエンジニアにマネジメントそのものを理解してもらうことも難しかったし、PMについては一日議論してもぼんやり認識してもらう程度であった。1996年に筆者の企画で、エンジニアリング振興協会のPM委員会が中国のカウンターパート協会の依頼でPMセミナーを実施した際にもほぼ同様な反応であったと報告されたが、筆者と同じ会社からの講師の一人が、PMI®のPMBOK Guideの話をしたら、大きな関心を示し、PMIへの取次ぎを頼まれたとのことであった。これが、その後の同国での熱心なPMBOKへの取り組みに結びついたのかどうかは定かではない。
同国で本格的にPMの認識が出てきたのは1990年代の後半である。組織的なPMへの取り組みは1992年に西安の西北工科大学により、中国項目管理研究委員会(China Project Management Research Committee 通称PMRC)が設立されて始まった。PMRCは国家が支援する協会ではなかったが、1996年にIPMA(International Project Management Association)に加入が認められてからは、IPMAのPM普及資源を活用して徐々に影響力を強めおり、建設業界も取り込んでいる。
一方、PMIの中国進出は2000年であり、国家外務部傘下の人材開発局と提携を結び、中国人の米国崇拝もあって、「外務部幹部から、PMP®はMBAより上位の資格である」とのお墨付き発言を引き出し、IT業界を中心にこれまで1万人のPMPを輩出するにいたった。
中国でPM振興に拍車がかかったのは、2000年に、中国政府が「近代国家建設のためにPMを重要なマネジメント体系とする」と宣言して、そのための強力な支援策を打ち出してからであった。PM振興策は、国家機関へのPM導入の指導、企業へのPM取り組み奨励、国際PM資格取得の奨励、および大学でのPM教育課程設置が内容である。
国際資格の取得では、たった4年で2万人の認定者を生んでいる。また、大学のPM専攻課程の設置も急激に進み、1993年に北京の精華大学が国家文部部の認定を受けて大学院の工学系にPM専攻を設けたのを皮切りに、わずか3年で96校が工学部にPM修士課程を設けている。2008年には5千人のプロジェクトマネジメント修士が誕生して圧倒的に世界一となる。
国が一丸となってPM力向上に取り組む中国から目が話せない
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