私が考えるPMBOK®の理解と活用
Ajビジネス・プランニング 山崎 正敏 PMP:12月号
筆者は、経営およびプロジェクトマネジメントのコンサルティングと研修を中心に活動している。「PMBOK®をどのように理解し活用すればよいのか」について、日頃の活動を通じて考えていること(私見)を述べる。
PMBOK®の利用目的は2つある。第一に、PMP®(Project Management Professional)資格を取得するため、第二に、プロジェクトマネジメントの実務に活かすためである。
PMP®資格試験に合格するためには、PMBOK®を隅々まで読んで理解・記憶することが必須だろう。その際、単純に最初からページの順に読むだけでなく、計画プロセス群であれば、その流れに沿って各知識エリアのプロセスを順に読んでいくことも理解に役立つ。
実務にPMBOK®を適用するという場合は、導入するマネジメント・プロセスについて必要な部分をPMBOK®から引用、改変し、組織目的に合うようにマネジメント・ガイドラインを作成すればいい。丸ごと適用することはできないのである。
いずれの目的にせよ、PMBOK®が何を表しているのかを知っておく必要がある。PMBOK®には、「何をすべきか(What to do)」についての記述はあるが、「どのようにするのか(How to do)」についての記述はないということを理解した上で、次の2項目について知っておくと、詳細を理解しやすい。
1. PMBOK®構成の理解
初めてPMBOK®に接しその全体を理解しようとする際には、次のように9つの知識エリアの位置づけを考えればよい。
まず、プロジェクトを開始するには、何をやらなければならないかを考える。スコープが決まらなければ何も始まらない。それが、「スコープ・マネジメント」である。
次にプロジェクトの成功・失敗の判断基準となる指標(目標)として品質、予算、期限があることを理解する。すなわち、「品質マネジメント」「コスト・マネジメント」「タイム・マネジメント」である。これらのマネジメント領域では、計画(予算)を設定し、実績を捕捉し評価するというように、技法に重点が置かれている。
そして、所定の品質、予算、期限を守るために、「人的資源」「コミュニケーション」「リスク」「調達」「変更(統合)」の各マネジメント・プロセスをしっかりとおこなうことが必要であると理解する。実際に、品質、予算あるいは期限が守られなかった原因を分析していくと、人的資源等これらのマネジメント・プロセスに原因があることがわかる。例えば、スケジュールの遅れの原因は、「要員の士気が低かった」「リスクの識別がおろそかであった」など、「品質」「コスト」「タイム」のマネジメントそのものよりも根が深い原因があることが多い。プロジェクトを成功するためには、これらのマネジメント領域に関する問題点、課題を確実にタイムリーに解決していくことが重要である。
このように各マネジメント領域の位置づけを理解して、PMBOK®を読むと、消化不良を起こしにくい。
2. 計画プロセスを重視した活用
組織にプロジェクトマネジメントを導入する場合、マネジメント・ガイドライン(あるいは規程)を制定することが多い。その記述内容は、主に「計画書」をどのように作成するのかということに主眼が置かれている。PMBOK®もガイドラインのひとつであるので、計画フェーズに多く(全44プロセス中21のプロセス)のプロセスが記述されている。したがって、組織にPMを導入する際、計画フェーズのマネジメント・ガイドラインを策定するのにPMBOK®を参考にすることが有効であることが多い。ガイドラインの制定・運用という組織の成熟とそれを正しく使いこなす個人の能力を高めることが肝要となる。
一方、監視コントロールでは、プロジェクトの状況を正しく認識し、タイムリーかつ適切な意思決定が必要となる。適切な監視コントロールは、プロジェクトマネジャー個人(あるいは、マネジメント・チーム)の能力に依存する割合が高いのである。監視コントロールのプロセスをガイドラインとして制定したとしても有効に機能しないことが多いので、ガイドラインに依存することは危険である。交渉力、問題解決力、意思決定力など個人の能力を育成することがより重要となる。このようなことから、PMBOK®では監視コントロールには12のプロセスが定義されているが、「How to do」は書かれていないので、有効に活用するには工夫がいる。
以上
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