トピックス(活動報告)
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9月例会報告
「製造業R&Dにおけるプロジェクトポートフォリオマネジメント」

岡田 一重:10月号

 今回は、アルテミスインターナショナルが提供している企業投資におけるビジネス価値の最大化を目的としたエンタープライズガバナンスの実現を目指す為の、研究部門におけるプロジェクトポートフォリオマネジメント手法の紹介であった。
1. 製造業の研究部門の現況
 世界中のCTOやCIOは差別化と成長に最も必要な能力はイノベーションであると認識している。日本は国策として、グローバル新商品の研究開発への投資を実施し、要素技術開発だけに限らないバリューチェーン全体を視野に入れた取組を行い、日本の利益の源を確保しようとしてきている。−今までのR&Dは、阿吽の呼吸ときめ細かさに頼ってきたが、これからは、技術の目利き間の連鎖(オープンイノベーション)と、トップが現場に密着し方針を展開していくトップダウンとクロスファンクショナルな構造が必要となる。
2. 取組施策の全体像
 戦略的方向性、プロジェクト優先順位、実施体制、個人のコンピテンシーモデルを考える。マネジメントは、形式知化、オープン化、予測・適量でなければならず、消化でなく防火を目指した構えに対応する「計画」が特に重要である。
 技術管理部署にPMOを設置し、トップのコミットメントや調整権限、リスクマネジメントの集中管理を行わせる。体制的には、クロスファンクショナルなバランス型マトリックス組織で推進する。
3. 施策の実施プラン
 競争優位、研究開発効率改善に向け、管理階層間や組織間のギャップをなくし、強化すべきマネジメント課題を克服する為に、プロジェクトポートフォリオマネジメントの段階的導入を行い、迅速で公明正大透明な意思決定を実施し、研究者のモチベーションを維持する。
 ステージゲートプロセス、リソース/コストマネジメント、リスクマネジメントなどにより、管理階層別のマネジメント連携を行い、経営層・ミドル管理層・担当層のギャップの可視化と調整を行う。
 プロジェクト管理情報としては、プロジェクトの定義、期待利益、アラート項目、進捗監視を強化する。
 ―ポートフォリオフレームワークは、評価指標を体系化し、ポートフォリオマトリックスを作成する。プロジェクトを客観的に、指標の組合せや重み付け、定量的・定性的な指標でポートフォリオ評価をし、推進と期待度をバランスさせ、ライフサイクル毎に収支を見て、マネジメントしていく。イメージとしては、戦略立案/アイディア創出 → 優先順位付け/採算管理 → スケジュール管理/リソース・工数・コスト管理/リスク管理 → パフォーマンス&投資採算/ポートフォリオ分析といったフローである。
4. 取組価値と導入効果
=導入目的に対し、導入前の課題を列挙し、解決方針を立案し、導入のポイントを整理して実際に取組んで行く。
−−−以下に、3事例紹介。
事例1.緊急に優先順位付け要す、不確実性があり、研究部門がどのように品質保証すべきか?不明。→設計部門・企画部門共にプロジェクトポートフォリオ情報を管理し、トップダウンでの戦略とクロスファンクショナルな執行をワークロードの観点から整流化させる。
事例2.利益状況が不明な開発で、生産準備迄は管理、その先が不透明。
→研究開発の場合、詳細管理は向かない。個人スキル毎のリソース割付等は、キャパシティプラニング程度しか見ない。
事例3.部品メーカーの開発が、組立メーカーの仕様変更に引きずられ混乱している。
→製品開発を組立メーカーと共に企画する。(大部屋主義密着型)
導入効果として、コスト削減効果は、製造業では10%程度と言われている。
計画コストとコスト超過の関係をNASAの資料で見ると、「計画」に金をかけた方が損失が少ない事がわかる。
評価の要素からKPI毎に定量的導入効果を出し、マネージャーの管理工数の削減、意思決定の遅れの認識、グローバルな全体調整、共同開発における費用負担の説明、中止決断の前倒し、早期投資効果分析が可能になった。
講演者の論理的な説明風景
写真1.講演者の論理的な説明光景
聴講者の真剣なまなざし
写真2.聴講者の真剣なまなざし